こまめな情報提供を心がけています【医師監修】

【医師監修】俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。 総合病院勤務医時代より不 妊治療に携わり、2004 年愛 知県の竹内病院トヨタ不妊セ ンター所長に就任。2007年、 出身地の静岡に俵史子 IVF クリニックを開業。 ペットのイ ベントで 2 匹の愛犬の“飛行 犬”写真を撮ってもらって以 来、写真に目覚め、一眼レフ カメラを購入。ただ今、撮影 技術を習得中だそう。

ドクターアドバイス

一つの知識に固まらず、頭も心も まっさらな状態で治療に臨んでほしいですね

ストレスは、感じたときに出す

こちらのクリニックでは、患者さんのメンタルな部分をどのようにケアされているのでしょうか。

俵先生 診察中に患者さんの抱える悩みをすべて解決できればいいのですが、どうしても時間がとれなかったり、医師には相談できないこともあると思います。

ですから、それをフォローするサポート態勢はしっかりつくるようにしています。

診察時のお話だけでは、考えていることすべてを相談しきれない患者さんもいらっしゃるでしょうね。

俵先生 そうですね。私は毎回必ず、患者さんが診察室を出られる時に、どんな表情をされているか見るようにしています。

その時に「この方はまだ気になっていることがありそうだな」と感じたら、看護師に「声を掛けてあげてね」と伝えます。

こういう時、「また次の診察の機会に」というタイミングでは遅いと思うんです。

ですから、疑問があればその場で解決できるようにフォローをします。

そうしないと、たとえば次の診察が1週間後の場合、患者さんは1週間ずっとストレスを抱えたままになってしまいますから。

予約制でじっくりお話を聞くカウンセリングも重要ですが、それだけではなく、このような日々の細やかなケアも必要だと思っています。

情報提供の重要性

不妊治療ではつらい告知をしなければならないこともあると思いますが、先生はどのように患者さんにお伝えしていますか。

俵先生 不妊治療を頑張って続けてこられた方にとって、「どこで治療を終わりにするか」というのは、一番悩まれることではないでしょうか。

今まで何も言われず、突然「もう無理ですよ」と伝えられたら、ショックを受けるのは当然だと思います。

漫然と治療を続けるのではなく、最初にある程度、目標を回数として設定し、その回数が近くなったところで「そろそろ次のことを考える時期かもしれません」とお伝えしたほうが心の準備もできるのではないかと思います。

当院の場合は、初診時のオリエンテーションで現実的なデータやリスクをお伝えすることから始まり、治療のタイミングごとに何回も情報提供をしていくことで、患者さんが納得し、後悔のない治療を受けていただけるように努力しています。

治療をやめる場合はもちろんですが、なかなか思うように結果が出ずに治療をお休みしなければならないことも、患者さんにとってはつらい選択だと思うのですが……。

俵先生 ずっと治療を続けてこられた方にとって、お休みするのは確かにつらいことだと思いますが、そこで一息つくことで、いろいろな体の状況やストレスから離れられる可能性もあります。

お休みする必要がある方には、「決して無駄なことではなく、絶対プラスの面がある」と前向きな言葉でお伝えするようにしています。

患者と医者の信頼感

俵先生は女性の医師ですが、女性の患者さんに精神的なケアをする場合、同性であるメリットを感じることはありますか?

俵先生 同じ女性として、患者さんの気持ちにより近く寄り添えるのではないかと思っています。

たとえばよい結果が出なかった場合、不満や怒りを話される方もいらっしゃいます。

本来でしたら医師も全力を尽くしているので、責められるばかりだとつらい場合もあるかもしれません。

でも、そこでその患者さんの立場に立ってみると、イライラする気持ちになるのも理解ができます。

ですから私は、常に患者さんと同じ視線で、いつも「私が彼女の立場だったら……」という姿勢で臨むようにしています。

そのように丁寧な対応の積み重ねで、患者さんとの間に信頼関係が生まれてくるのですね。

俵先生 「この先生で大丈夫かな」という気持ちで治療に臨んでいる時は、外からいろいろな情報も耳に入ってきて、何を信じていいのか混乱してしまうと思います。

しかし不妊治療には、医師との信頼関係が欠かせません。

ですから、気持ちを伝えて、それを受け止めて、というキャッチボールをコツコツ積み重ねていくことで徐々に障害が減り、間にある壁が薄くなっていくのではないでしょうか。

そうすることで、治療もいい方向に進むことが多いようですね。

貴女だけの治療方針を

では逆に、医師側から患者さんに「こんな気持ちで治療に臨んでほしい」ということはありますか?

俵先生 そうですね。初診で来られて「この治療法がいいので、私にはこれをしてほしい」と、具体的な治療法を依頼される方がいらっしゃいます。

もちろん、ある程度治療に対するご希望を伝えていただくのはいいことだと思いますが、その方にとってベストな治療法が何かというのは、多くの患者さんをみて経験を積んできた私たちのほうが的確に判断ができるのではないかと思います。

今、不妊治療に関してもさまざまな情報があふれているので、誰かの成功例を聞いて試してみたくなるお気持ちはわかります。

ただ、皆さんは一人ひとり、体の状態も反応も違います。

ですから、一つの知識に固まらず、新しいことを受け入れようという気持ちでスタートされたほうが、最終的によい結果に結びつくのではないかと思います。

初めて治療に訪れる時は緊張し、身構えてしまうと思いますが、できれば頭も心も固くならずに、まっさらな状態で来ていただければいいですね。

 

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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