【医師監修】宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講師、 1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セ ント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオ ニアの一人。開院以来、妊娠数は5000 件を超える。O型・おひつじ座。 医師と看護師、培養室スタッフ、生殖心理カウンセラーの連携によるチー ム医療の大切さを提唱。患者さんそれぞれに応じた検査・診察を行い、 ステップアップ方式の治療を手掛けている。
さやさやさん(33歳)からの投稿 Q.現在クリニックに通い始めたばかりで、ひと通りの検査をしている最中です。 周期14日目に内診した際、右側の卵胞が23.5㎜で、先生から「もうすぐ排 卵でしょう」と伝えられましたが、その時にエストラジオール(E2)値がなん と758pg/mLで、基準値をはるかに超えていました。卵胞ホルモンも黄体形成ホルモンも出ていて問題ないとの診断でしたが、この値は高すぎないでしょ うか。ちなみに私は排卵直前で卵胞が25㎜前後になります。まったくの自然 排卵で、PCOSでもないし、月経異常もありません。あくまで私の予想ですが、 E2 が高すぎて卵子が成熟しすぎているというのは考えすぎでしょうか?
E2の値について
値が758というのは、かなり高い数値なのでしょうか?
宇津宮先生 標準とされている排卵直前の E2 の数値は200前後ですから、その基準で考えると、さやさやさんの数値はかなり高いと思います。
ですが、たくさんある卵子の中から1個だけ選び、その数値がたまたま高かったという場合もありますから、初期治療の段階で、あまり気をもむ必要はないと思いますよ。
さやさやさんは E2 値や卵胞の大きさなどについてかなり勉強されているようですが、少し情報に惑わされているように感じます。
その原因として、現在通われている病院の先生とのコミュニケーションがきちんと取れていないとか、また、不妊治療に対するオリエンテーションが的確になされていないのではないか、ということが考えられますが……。
不妊には複数の原因がある
宇津宮先生なら、どのような治療計画を立てられますか?
宇津宮先生 33 歳という年齢で、月経異常がなく、自然排卵で排卵する。
さらに、卵管造影検査で通水効果を出しておいて、排卵する時に性交し、ヒュナー検査がプラスでちゃんと排卵しているのであれば、妊娠する可能性が非常に高いと私なら判断します。
それでも妊娠しない場合は、必ず何らかの原因があると考えるべきでしょう。
初期治療の検査では問題がないように思えても、違う検査をすれば原因が見つかる場合もあります。
その他、感染症や手術による癒着や、排卵した卵子を卵管口へピックアップする卵管采の機能障害などが見つかる場合もとても多いです。
不妊には必ず、複数の原因があります。
それを知るために、タイミング療法の次は卵管造影検査、次に腹腔鏡検査、人工授精。
そこまでステップを上げてもうまくいかなければ、最終段階として体外受精をします。
いずれの治療も半年を目安にステップアップしていくことが、最善の方法ではないでしょうか。
さやさやさんは年齢的にも、十分妊娠する可能性がありますし、まだ初期治療の段階です。
現時点であまり深刻になりすぎては、治療を続けること自体が苦痛になってしまうかもしれません。
自分が今どの段階なのかを理解し、希望を持って不妊治療と向き合うためにも、セカンドオピニオンを有効に利用してみてはいかがでしょうか。