【医師監修】臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保 春海教授の体外受精グループにて研究・診察に従 事。医局長を経て、1995 年より現在の東京・亀 有にて産婦人科医院を開業。5 年前より不妊専門 の治療センターに。春に開幕するプロ野球観戦時 に心おきなくビールを楽しむために、昨年末から ダイエットを開始。ご飯やパンなど炭水化物を抜 く方法で、2 週間で体重が3kg 落ちたそう。
ややころ。さん(35歳)からの投稿 Q.人工授精で治療中です。今周期、9日目に卵胞のチェックに行ったら16.8㎜ の卵胞でした。先生は「明日か明後日には排卵しそうだね」と言って、人工授 精を翌日に予定。結局、今回は主人の都合でできませんでしたが、自分でチェッ クをしてみたところ、14日目にLHサージの反応が最も強く出ていました。先 生の言われた排卵日とは多少ずれているように思いますが、自然の排卵日を待 つよりも卵胞の大きさを重視しているのでしょうか? ちなみに卵胞のチェッ クは超音波診断のみ、人工授精前日には排卵を促す注射をしています。
排卵予測の立て方
ややころ。さんの担当医の先生は16 ・8㎜の卵胞の大きさで、翌日に排卵するという予測を立てられたようですが、臼井先生はこの予測をどう思われますか?
臼井先生 やはり少し早いような気がしますね。
その大きさだと排卵はまだ3日くらい先だと思われます。
ややころ。さんは何回か人工授精をされているようですが、いつも 17㎜くらいで排卵してしまうのであれば、先生は今回もそれにならって予測を立てられたのだと思います。
でも、それでは卵胞が小さすぎて妊娠は難しくなってしまいますから、毎回その大きさで排卵するなら、何か手段をとられているはずでしょう。
先生だったら、このような場合、どう対処されますか。
臼井先生 卵胞の大きさが 17 ㎜以下ということであれば、翌日に人工授精を設定せず、そこで採血をし、ホルモンの値を確認したうえでLHサージを起こすようにすると思います。
血液検査でホルモン値確認
ややころ。さんの病院では、卵胞チェックは超音波診断のみ、ということですが……。
臼井先生 当院では超音波による診断だけではなく、ホルモンの状態も確認するために血液検査も実施しています。
そのほうが確実ですから。
卵子1個あたり、エストロゲン(卵胞ホルモン)が200 Pg / mL 以上 の数値であれば、きちんと成熟していると考えられます。
血液検査をしてホルモン値を確認することはとても重要なのですね。
臼井先生 そうですね。卵子の成熟をきちんと確認したうえで排卵させることができます。
妊娠率にも大きな影響があると思いますよ。
次回トライされる際、先生に「血液検査もやっていただけますか?」とリクエストしてみてはいかがでしょう。
もし、血液検査を行っていない施設でしたら、実施している施設に転院することを考えられてもいいかもしれません。
そのくらい重要な検査だと思います。
やり方にバリエーション
今後の治療について、どのように方針を立てていったらいいですか。
臼井先生 何回か人工授精をされて結果が出ていないということは、何か問題があるということですよね。
排卵が早いようならクロミフェンを服用して少し遅らせてみる、注射ではなく点鼻薬で排卵を促してみる……など、毎回同じ方法ではなく、違う方法でチャレンジしてみることも必要だと思います。
※LHサージ:黄体形成ホルモンが一過性に大量に放出される現象。これが排卵を引き起こす。成熟した卵胞から分泌される大量のエストロゲンの正のフィードバック作用によりLHサージが起こる。