まずは効果的な治療方法や妊娠率などの情報を提供。ご夫婦の意思を最優先して一緒に決めていきます【医師監修】

【医師監修】神谷 博文 先生 札幌医科大学卒業。同大学 産婦人科学講座、第一病理 学講座に入局後、斗南病院 にて産婦人科科長を10 年間 務める。1998年、神谷レ ディースクリニックを開業。麻 酔科標榜医、細胞診指導医。 忙しい合間を旅行や観劇、ゴ ルフへ出掛けるのが趣味。最 近は仙台へ牛タンを食べに出 掛けたそう。

妊娠しやすくしてタイミング

患者さんは、何年も不妊に悩んだうえで来院される方が多いと思いますが、治療はタイミング法からスタートするのでしょうか。

神谷先生 そうですね。

一般的な夫婦生活があって2〜3年で妊娠しない場合は、精子の状態や排卵などに、なんらかの原因があるはずです。

クリニックで指導するタイミング法と、ご家庭でされてきたタイミング法には、それほど違いはないのです。

そこで、不妊治療はタイミング法でスタートするケースが多いですが、黄体機能を高めたり、排卵誘発剤を使ったりして、より妊娠しやすい環境をつくります。

患者の考えを尊重

ステップアップに対する基準や考え方について教えてください。

神谷先生 当院ではまず、婦人科系の既往症、妊娠経験、不妊年数、これまでの不妊治療について問診をし、ホルモンバランス、基礎体温、子宮頸がん、子宮体がんなどの検査を行います。

検査結果をもとに一般的な治療法を提案したうえで、患者さんの治療への希望を確認しています。

一般的には、まずはタイミング法を2〜3周期行って妊娠に至らない場合、35 歳以下なら人工授精を4〜5回、 36 歳以上なら2〜3回行います。

ただし、タイミング法の次にどうステップアップするかは、患者さんの考えを尊重しますね。

患者さんの年齢での人工授精体外受精の妊娠率などの情報を提供し、アドバイスしますが、治療法を決定するのはご夫婦です。

年齢とステップアップ

年齢が高い場合は、早く体外受精に進んだほうがいいのでしょうか。

神谷先生 体外受精の妊娠率は、当院のデータでは、 20 代なら1回目の成功率は 60 %ですが、 30 歳以上 35 歳以下なら 40 %、 36 歳以上 40 歳以下では 30 %弱と、年齢とともに下がります。

ですから、体外受精の意思があるなら、少しでも早いほうが効果は高いと言えます。

でも、不妊の原因は一人ひとり違いますし、体外受精はコストが大きい。

ステップアップについては夫婦の意思と体の状態、経済的な問題などを広く考えて、時期を計る必要があります。

妊娠しなければ人工授精をやめて、体外受精に進むというばかりがステップアップではありません。

人工授精を2〜3回行った後に、体外受精を1回試してみるという方法もあるわけです。

妊娠率が高いのは人工授精よりも体外受精ですが、それぞれの気持ちと状況によって治療法を選ぶことが大切。

患者さん夫婦が自分たちの意思を大切にして決められるよう、当院では効果的な治療法の提案だけでなく、不妊治療に関する知識や最新情報の提供もしています。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。