妊娠しやすくしてタイミング
患者さんは、何年も不妊に悩んだうえで来院される方が多いと思いますが、治療はタイミング法からスタートするのでしょうか。
神谷先生 そうですね。
一般的な夫婦生活があって2〜3年で妊娠しない場合は、精子の状態や排卵などに、なんらかの原因があるはずです。
クリニックで指導するタイミング法と、ご家庭でされてきたタイミング法には、それほど違いはないのです。
そこで、不妊治療はタイミング法でスタートするケースが多いですが、黄体機能を高めたり、排卵誘発剤を使ったりして、より妊娠しやすい環境をつくります。
患者の考えを尊重
ステップアップに対する基準や考え方について教えてください。
神谷先生 当院ではまず、婦人科系の既往症、妊娠経験、不妊年数、これまでの不妊治療について問診をし、ホルモンバランス、基礎体温、子宮頸がん、子宮体がんなどの検査を行います。
検査結果をもとに一般的な治療法を提案したうえで、患者さんの治療への希望を確認しています。
一般的には、まずはタイミング法を2〜3周期行って妊娠に至らない場合、35 歳以下なら人工授精を4〜5回、 36 歳以上なら2〜3回行います。
ただし、タイミング法の次にどうステップアップするかは、患者さんの考えを尊重しますね。
患者さんの年齢での人工授精、体外受精の妊娠率などの情報を提供し、アドバイスしますが、治療法を決定するのはご夫婦です。
年齢とステップアップ
年齢が高い場合は、早く体外受精に進んだほうがいいのでしょうか。
神谷先生 体外受精の妊娠率は、当院のデータでは、 20 代なら1回目の成功率は 60 %ですが、 30 歳以上 35 歳以下なら 40 %、 36 歳以上 40 歳以下では 30 %弱と、年齢とともに下がります。
ですから、体外受精の意思があるなら、少しでも早いほうが効果は高いと言えます。
でも、不妊の原因は一人ひとり違いますし、体外受精はコストが大きい。
ステップアップについては夫婦の意思と体の状態、経済的な問題などを広く考えて、時期を計る必要があります。
妊娠しなければ人工授精をやめて、体外受精に進むというばかりがステップアップではありません。
人工授精を2〜3回行った後に、体外受精を1回試してみるという方法もあるわけです。
妊娠率が高いのは人工授精よりも体外受精ですが、それぞれの気持ちと状況によって治療法を選ぶことが大切。
患者さん夫婦が自分たちの意思を大切にして決められるよう、当院では効果的な治療法の提案だけでなく、不妊治療に関する知識や最新情報の提供もしています。