海外在住ですが現地ではタイミング療法ばかり治療を変えるべき?【医師監修】

【医師監修】秋山 芳晃 先生  東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属 病院、国立大蔵病院に勤務後、父親が営んでいた産 科医院を継ぎ、不妊専門病院として新たに開業。O型・ やぎ座。カウンセリングルームを1室増設し、待ち時 間が短くなったと、患者さんに好評。不妊と関係のな い話題でくつろぐ患者さんもいるとか。秋山レディースクリニック
misosiruaさん(28歳)からの投稿 Q.海外在住で子づくりを始めて2年、不妊治療を始めて1年 です。この国では無料の公共医療が中心、私も公立の大学 病院に通っているのですが、「夫の精子は動きが鈍いが自然 妊娠は可能、あなたの排卵は問題ない」と言われ、クロミフェ ンを1日2錠とエストラジオール腟クリームを処方。タイミ ング療法だけなので、不安です。でも、私設の不妊専門の 医院では人工授精でも10万円かかるのです。体外受精か 非配偶者間人工授精を考えたほうがいいでしょうか?

世界と日本は基準が違う?

海外での不妊治療の方法は、日本とかなり違うのでしょうか?
秋山先生 最近は治療を標準化しようという傾向があり、日本でも各学会からガイドラインという治療指針が示されていますし、WHOでも世界中を視野に入れた基準が示されています。
そこで、ご主人の精子の検査結果をWHOの基準に照らすと、精子濃度の基準は正常ですが、高速運動精子と正常形態率は少し低い結果です。
それでも奥様の年齢や不妊期間を考慮すれば、まずはタイミング療法を試みていい所見、ということになるでしょう。

ステップアップのタイミング

この方は、「タイミング療法だけでは不安」とおっしゃっていますが。
秋山先生 通常、6周期ほど試みても妊娠に至らなければ、人工授精をお考えになったほうがいいと思います。
この方の場合は、途中お休みを入れて5周期を経験されているとのことなので、あと1、2回試みてうまくいかなければ、体外受精に進むというのが一般的でしょう。
しかし、少なくとも現時点で非配偶者間人工授精をお考えになるような精子所見ではないと考えます。

女性側の原因は?

奥様のほうも、ご自分に黄体機能不全があるのでは、と考えています。
秋山先生 たしかに、黄体期の黄体ホルモンが低めです。
検査のタイミングにより正確な結果が出ていない可能性もありますので、何度か調べてみる必要があるかもしれません。
投薬は適切でしょうか?
秋山先生 クロミフェン療法は、排卵障害がある患者さんに使用した場合、 25 %程度の妊娠が期待できます。
排卵している患者さんにとっても、排卵数が増え、黄体ホルモンの分泌がよくなり、妊娠を高める効果は期待できます。
しかし、長期間にわたる使用で、頸管粘液が減少して精子が子宮の中に入りにくくなったり、子宮内膜が薄くなったりする弊害があります。
エストラジオール腟クリームを使用しているのはそのような副作用に対応するためだと思いますが、私は使用経験がないので、その効果のほどはわかりません。
いずれにせよ、このまま漫然とクロミフェンの使用を続けていくことには賛成しかねます。

帰国のタイミングも考慮

では、どういう治療に変更していくべきでしょうか?
秋山先生 お住まいの国では人工授精が高額だということですので、帰国のめどが立っているのであれば、期限付きでもう少しタイミング療法を試みて、帰国後に人工授精を行うという選択肢もあるのではないかと思います。
あるいは、今の国で思い切って最初から体外受精を試みるという選択肢もあるでしょう。
※クロミフェン療法:抗エストロゲン作用を持つ経口排卵誘発薬のクロミフェンを用いて、排卵誘発するもの。
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