採卵はとても痛いと聞いたのですが静脈麻酔なら大丈夫?【医師監修】

採卵する時、本当に痛くないか心配! なかには麻酔の効きがよくない人もいると聞くし……。 宮崎レディースクリニックの宮崎先生に詳しくお聞きしました。

【医師監修】宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代の新生児医療への興味が きっかけとなり、体外受精や不妊治療の世界を志す。同大学産科 婦人科講師を経て、1992年に不妊症、不育症治療専門クリニック、 宮崎レディースクリニック開業。開業当初より泌尿器科の専門医に よる男性不妊外来を開設する。A型・しし座。院長室に面した小 さな屋上庭園に飛来する野鳥を楽しみにしていた先生。クリニック のスタッフも癒やされていたのに、最近来なくなって寂しいそう。

ドクターアドバイス

最近の採卵の針は細いので、 最近の採卵の針は細いので、 麻酔なしでも痛くありません。 麻酔なしでも痛くありません。 不安な人には、様子を見て 不安な人には、様子を見て 局所麻酔や静脈麻酔を使います。
凛さん(パート・年齢秘密)からの投稿 Q.今度、体外受精へ進み、採卵する予定です。 静脈麻酔をするので、3時間ほど病院で休んでから帰れると説明を受けました。 採卵はとても痛いと聞きます。麻酔の効き具合によっては、 痛みは感じないで終われるかもしれないですし、人それぞれ違うのはわかります。 静脈麻酔で採卵した方、どんな感じだったか、痛みの程度、 なんでもいいので情報をください。

採卵時には、麻酔はする?

採卵を無麻酔で行う施設も多いと思いますが、先生のクリニックでは通常、採卵時に麻酔を使いますか?
宮崎先生 その人次第かな。ある程度の数以上の卵子が育っている場合は麻酔をしています。
卵子の数が2〜3個くらいで少なければ麻酔はしません。
採れる卵子の数によって使う針の太さが違うんですよ。
仮に 20個、 30 個もの卵胞が育ってしまったとして、細い針だと1個1個吸い取るのにものすごく時間がかかるで
しょう。
だからたくさんある時は麻酔をかけて、ちょっと太めの針を使います。
それに、数が多くなってくると、細い針を動かして卵子を探しているうちに、超音波の視野から針の先端が外れてしまうんです。
針というのは細くすればするほど柔らかくて先が曲がってしまい、動かすと先端がどこにあるのかわからなくなっちゃう。
だから太い針を使うために麻酔を使う。
そういう理由もありますね。
通常、当院では 20 ゲージの太さの針を使っています。
22 ゲージという細い針もありますが、僕自身はそんなに細い針は必要ないと思っています。
麻酔なしで 20 ゲージの針を使って、今まで痛がった人は1人もいません。
といっても超音波の普通の診察だけでも痛がる方はいらっしゃいますからね……。
人それぞれなのですが。

麻酔も使い分ける?

なるほど。麻酔を使う場合、局所麻酔や静脈麻酔をどう使い分けていますか?
宮崎先生 普通は局所麻酔で行っていますが、針を「刺すことの痛さ」ではなく、中で「動かすことの痛さ」を強く感じる人には静脈麻酔を使います。
局所麻酔の場合は、子宮の側壁などの局所、4〜6ヶ所に麻酔を注射します。
歯医者さんで抜歯する時を思い出してみてください。
最初はチクッと注射針の痛みを感じますが、その後はあまり痛みを感じないでしょう。
それと同じような感覚です。
静脈麻酔は全身麻酔のようなもので、 15 分間ほど完全に眠っている状態になります。
多少、後でむかついたり、覚醒するのに時間がかかるなどの症状はありますが、数秒で眠りに落ちます。
最初は麻酔なしで始めて、患者さんの様子を見ながらどうするか決めるケースも多いですね。
我慢できなくなったら麻酔。
その場合は、前日に絶食しておいてもらって、いつでも麻酔できる準備をしてから採卵を始めます。
採卵時、特に痛みを感じやすい体質や疾病などはありますか?
宮崎先生 物理的に卵子が採りにくい位置にあって、針を動かさなくては採卵できない場合や、卵巣が癒着している方、子宮内膜症の方などは、痛みを感じやすいかもしれません。
先生はセミナーや診察時などに、麻酔や痛みについての説明をされますか?
宮崎先生 そうですね。いろいろなメリット、デメリットがあるから、どの方法が一番とはいえないですよね。
怖がりな人は、本当に1個の採卵でも麻酔をしてほしいという方もいらっしゃいますよ。
「細い針で1個採るだけだから、本当はそれほどでもないんだけど」と思いながら、ご説明してもやっぱり麻酔が必要という方には、ご希望に沿うようにしています。
ただ、点滴や麻酔の針を何回も刺すなら、そのまま採卵してしまえば、そのほうが単純に痛みやリスクも低いと思うんですよね。
特に1〜2個の採卵なら短時間で済みますし。
先生を信頼して怖がりすぎないようにするのも、痛く感じないためのコツでしょうか?
宮崎先生 そうそう。触っただけでも飛び上がる人もいますから。
こちらも「今から消毒しますよ」とか、よく声をかけて安心させてあげるよう心掛けていますね。
これは言葉の麻酔です(笑)。

人によって感じ方も違う

言葉で安心させるわけですね。お酒を飲む人は麻酔が効きにくいとか、途中で麻酔が切れて目が覚めたなんていう噂
もたまに耳にします。
宮崎先生 お酒をたくさん飲む人は麻酔が効きにくいというのは定説。
そういう傾向は少なからずあると思いますね。
途中で麻酔が切れて痛かったというのは、そうないんじゃないかなぁ。
静脈麻酔なら 15 分くらいは効きますから、仮に 30 個採卵すれば 15 分で終わらずに麻酔が切れてくるかもしれないけど、そんなことはめったにないですから。
ちなみに当院では、採卵後や胚移 植後に、患者さん全員にどう感じたか、アンケート調査を行うことにしています。
8割くらいの方は「そんなに痛くなかった」と答えています。
やはり静脈麻酔じゃないとという人は、3ヶ月に1人くらいの割合ですね。
さっきの言葉の麻酔じゃないけれど、「麻酔しましたよ」と聞くと、人はやはり安心できますからね。
見えない、わからないものに対して、人は怖がるのです。
とはいえ、最初にお話ししたように、最近は採卵の針がだんだん細くなってきていることもあり、本当に痛がる患者さんは減ってきているのも事実です。
5〜 10 分くらいで済みますし、医師を信じて、あまり怖がらずに臨んでほしいですね。
※ゲージ(G):注射針の太さを表す単位。数字が大きくなるほど細くなる。22G=0.70mm(外径)、20G=0.90mm。
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