患者さんの疑問、相談について クリニックではどう対応していますか?
本誌『ジネコ』読者にも「使ってみたい」という声が多い自己注射。 最近は、導入しているクリニックも多いようです。 実際の現場ではどのように使用されているのか、その状況を 木場公園クリニック院長の吉田先生がお話ししてくださいました。
自己注射を積極的に取り入れている ドクターに聞いた!
看護師が丁寧に指導 疑問・緊急時は電話でも対応
木場公園クリニックでは、いつから自己注射を導入されていますか?
吉田先生 当院では、ペン型の自己注射器が日本で認可されてすぐに導入しました。
アメリカをはじめ、諸外国ではかなり以前から使われているのを知っていて、当院では心待ちにしていましたから、“やっと日本でも使えるようになった”という思いでした。
自己注射は、患者さんの負担を軽くしてあげることができます。
まず、通院回数が減るので時間的に余裕ができますし、その分の交通費も必要なくなる。
“注射”といってもペン型で扱いやすく、薬剤も少量で針も細く短いです。そのうえ皮下注射なので、痛みも少ないんですよ
前回、本誌『ジネコ』で自己注射の記事を読んだ読者から「担当医が自己注射をすすめてくれないので、やりたいと言い出せない」という声が多く寄せられました。
こちらのクリニックでも、そういった声は聞かれますか?
また、どのような方に自己注射をすすめられているのでしょうか。
吉田先生 当院では、だいたい患者さんのほうから“自己注射でお願いします”と言われるケースが多いですね。
2~3週間と長期間かけないと卵胞が育たない方や、働いている方には、こちらから“自己注射なら通院回数が減りますよ”とおすすめしています。
編集部で行った、自己注射を導入している全国のクリニックへのアンケートでは、実際に患者さんに指導しているのは看護師さんが圧倒的に多いようです。
個別に丁寧に指導したり、緊急時のために看護師直通電話を伝えたり、使い方のセミナーをしているというクリニックもありました。
吉田先生 当院でも、看護師が患者さんに個別に指導しています。
ペン型の自己注射器は扱いやすく、使用方法も簡単なので、実際の指導にかかる時間は 15 分程度ですみます。
その後の使用中は、疑問点がある方は来院された際に質問していただいたり、お電話いただいたりしています。
万が一、トラブルがあったときのために、採卵のときと同じように、夜間の緊急用電話番号もお知らせしています、今のところは特にトラブルはありませんね。
また、自己注射を使用する方に必ずお渡しする、解説のDVDもよくできていますので、自分で自宅で復習することもできますよ
患者さんだけでなく クリニックにもメリットが
診察などで忙しい先生に、自己注射を使用したいことをなかなか言い出せずに、躊躇してしまっているという患者さんもいるようですが。
吉田先生 患者さん側から、“こういう治療法を試してみたい”と申し出ることは、大いにあっていいと思います。
ペン型の自己注射は、患者さんにはもちろん、クリニック側にもメリットが多いので、もっと積極的に取り入れるべきだと思いますね。
通院される患者さんがあきらかに減りますから、それまで注射をしていた時間を診療にさくことができますし、ほか
のことに力を注ぐことができますから。
自己注射を導入していないクリニックの場合は、慣れていないことを導入する余裕がなかなかないのかもしれませんね。
しかし、当院にも“どういうふうにしてる?”と視察に来られるクリニックもありますから、すでに導入しているクリニックなどから情報を得れば、解決する場合が多いと思います。
また、ペン型の自己注射を使用したいという患者さんがたくさんいる場合は、集団講習会などを開くといいと思います。
当院では個別指導ですが、韓国では、集団講習会を開かれているとも伺っています。
先輩患者さんが率先して体験談を語ってくれたり、“こうするといいよ”とアドバイスをくれるらしく、いいアイデアだと思いました。
万が一の場合のサポート態勢も整えなければなりませんが、製薬会社側もコールセンターなどを開設してくれているのでおおいに助かります。
夜 10 時頃まで対応してくれます
今後は、自己注射が主流になってくると思いますか?
吉田先生 保険適用ですし、すでに流れは自己注射でしょう。
患者さん側にも、クリニック側にもメリットが多いですし、欧米ではもうすっかり定着していますから。
卵巣過剰刺激症候群といった副作用もあるので、まめに診るところは診なければいけませんが、患者さんも、クリニックも賢く利用していただきたいですね