人工授精がなかなかうまくいかない場合、 排卵誘発をしたほうが妊娠率は上がるのでしょうか。 大島クリニックの大島先生にお聞きしました。
【医師監修】大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室 入局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長 として4年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号 を授与される。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院 勤務を経て、1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。最新 のデータとクリニックでの成績に基づき、最も妊娠率の高い排卵誘 発法を提案。人工授精ではクロミフェンなどの内服薬ではなく、妊娠 率の高い注射のみで誘発を行っている。B型・かに座。
コジジさん(医療系勤務・34歳)からの投稿 Q.今朝、生理が来て、2回目の人工授精に失敗してしまいました。 今回は、排卵少し前の人工授精で 期待していた分、ショックも大きいです。 先生からは「6 回やってみてダメなら体外受精を考えよう」と 言われています。「あと何回か人工授精でダメなら、 排卵誘発もしてみよう」とも言われました。 人工授精で排卵誘発をして、妊娠した方はいるのでしょうか。 やっぱり双子を妊娠する確率が高くなるのでしょうか。
人工授精に排卵誘発?
人工授精における排卵誘発について、大島先生はどのように考えていらっしゃいますか。
大島先生 当院では、人工授精を受ける方全員に排卵誘発を行っています。
排卵誘発を行わず、まったくの自然排卵で行ったら、妊娠率はゼロに近いのではないでしょうか。
それは今出ている統計でも明らかなので、早い時期での妊娠を望まれるようなら、排卵誘発は必ずしたほうがいいと思っています。
抵抗を感じる患者さんはいらっしゃいませんか。
大島先生 もちろん当院では、初診でいきなり排卵誘発をして人工授精をする、というかたちはとっていません。
十分カウンセリングや治療についてのご説明をしたうえで、タイミング療法から段階を踏んで治療を進めているので、人工授精にトライされる頃には、皆さん排卵誘発の必要性も理解してくださり、納得して治療に臨まれていますね。
排卵誘発の方法は?
大島クリニックでは、人工授精の際、どのような排卵誘発をされているのですか?
大島先生 HMGなど、注射による排卵刺激を行っています。
月経周期の2日目くらいから注射をスタートし、8日目前後で診察。
11 日目前後で2回くらい注射を打った後、卵胞の大きさを確認するなどさらに診察をし、 14 日目前後、排卵が近くなったら毎日診察をして卵胞径をみて、人工授精の時期を決めます。
方法は注射のみで行っていますが、過剰反応を起こす方はスタンダードな量の半分くらいから、反対に卵胞がまったく増えないような方には2倍の量を使うなど、患者さんの反応をみながら薬の量を調節しています。
多胎になるリスクは?
やはり、排卵誘発をして人工授精をする場合、多胎になる可能性が上がるリスクは避けられないのでしょうか。
大島先生 一般不妊治療において、最初から妊娠率が高い人工授精を行わないのは、タイミング療法で妊娠できる方がいきなり人工授精を行うと多胎妊娠のおそれが高くなるからです。
タイミング療法を経て人工授精をした方が双子を妊娠する確率は、 10 〜 20 %程度。
確率は減りますが、排卵後はコントロールできない人工授精では、どうしても多胎というリスクが伴ってしまうんですね。
排卵誘発をして人工授精を行ってもなかなか妊娠しない場合は……。
大島先生 人工授精では、日本の統計上、6回以降の妊娠率の上昇は認められないと報告されていますので、5〜6回トライしても結果が出なければ、体外受精も視野に入れたほうがよいかと思います。