初めての人工授精、黄体化未破裂卵胞で排卵しませんでした

黄体化未破裂卵胞(LUF)など、排卵に問題があった場合、 どのように改善したり、正常な排卵を促せばいいのでしょうか。 臼井医院不妊治療センターの臼井先生に伺いました。

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外 受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995 年よ り現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。5 年前より不妊専 門の治療センターに。臼井先生の治療の基本方針は、患者さん の希望を最大限に取り入れること。排卵誘発法を組み合わせたり、 受精卵を凍結するなど、治療の工夫で「できるだけ体にとって少な い負担で、妊娠してほしい」という理念を持っている。

ドクターアドバイス

注射での排卵促進が合わなかったら点鼻薬など、 次回は違うやり方を試すことも必要です。
ちっちさん(主婦・33歳)からの投稿 Q.今周期、半年ぶりの診察で初めて人工授精をしました。 しかし、数日後の排卵済みチェックでは排卵が確認できず (人工授精前日には排卵促進の注射もしています)、今日再度 診ていただくと、やはり排卵しておらず、卵胞は46㎜にも達していました。 今回は黄体化未破裂卵胞(LUF)とのことで、妊娠はないとのこと。 排卵がうまくいくようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

黄体化未破裂卵胞とは

まず、黄体化未破裂卵胞LUFとは、どのような状態のことなのでしょうか。
臼井先生 通常、卵子が卵巣の中で育ち、十分に成熟すると黄体形成ホルモン(LH)の刺激で卵子を包んでいる卵胞が破裂して、中から卵子が飛び出します。
これが排卵なのですが、まれになんらかの原因で卵胞が破裂せず、排卵ができないことがあります。
卵胞は排卵をしなくても、黄体化することによって黄体ホルモンが分泌され、高温期が続く―― 。これがLUFというものです。
なぜ起こるのか、その詳しい原因はまだはっきりと解明されていません。
1回であれば、健康な女性でも起こりうることだと思います。

排卵しなかった卵胞は何処へ?

ちっちさんの場合、未破裂卵胞が46 ㎜にも達していたということですが、排卵されなかったこの卵胞はどうなってしまうのですか?
臼井先生 未破裂の卵胞はほとんどの場合、生理になったときに消えている方が多いようですね。
生理が来ても残っているようでしたら、プラ ノバールⓇなどを服用してリセットすることもあります。
また、何个月も残って、それが新しい卵胞の成長を妨げるようであれば、腹腔鏡手術で取り除く場合も。
しかし、そのような処置をせず、多少残っていたとしても、次の卵胞ができてくればちゃんと排卵すると思いますよ。
次の周期にホルモンの値を調べて、エストロゲンが出ているようなら、その周期はリセットするようにしたほうがいいですが、エストロゲンがまったく出ていなくて、未破裂卵胞がただの嚢腫のような状態になっていれば、ちゃんと排卵するのではないでしょうか。
そうなれば、また人工授精にトライすることは可能だと思いますよ。

排卵障害の改善は?

LUFが起きる原因はまだはっきりわかっていないということですが、ちっちさんの場合、排卵がうまくいかないことをどのように改善していったらよいでしょうか。
臼井先生 ちっちさんは、人工授精の前日に排卵促進の注射をされたということですが、これはおそらくHCGという薬だと思います。
HCGを使ってもうまく排卵しない場合、すべての方ではありませんが、LUFを起こすことがあります。
もしかしたらちっちさんは、HCGによる排卵促進が合わなかったのかもしれませんね。
僕だったら、次はHCGの注射ではなく、点鼻薬を使う方法をとってみると思います。
その場合、卵胞ができたらエストロゲンの値とLHをチェックして、まだLHが上がっていなければ、スプレキュアⓇなどの点鼻薬を使ってLHサージを起こし、排卵……という流れになりますね。
一度トラブルが起きたり、思うような結果が出なければ、今度は違う方法にしてみる。
きちんと経過をみながら、その方に合ったやり方をすれば、ちゃんと排卵される方が多いですよ。

注射?点鼻薬??

ちっちさんは初回の人工授精で注射による排卵促進をされましたが、こちらのクリニックではどのような方法をとられているのですか?
臼井先生 当院の場合、最初に注射という選択はしません。
まずは点鼻薬から始めます。HCGの注射を打った後でもうまく排卵されない方は、やはり、ちっちさんのように卵
が大きくなってしまったり、いつまでも残ってしまう方がいるんです。
点鼻薬の場合は自然のLHサージなので、経験上、排卵の異常が起こりにくい気がします。
点鼻薬でも正常な排卵が起こらなかった場合は、なぜそうなったかを分析し、場合によっては次回には注射も一つの選択肢として考えていくことになるかと思います。

刺激の少ない誘発法から

「体に対してなるべく優しい方法から始める」というのは、こちらのクリニックの方針なんですね。
臼井先生 そうですね。当院では、タイミング療法や人工授精の場合だけでなく、体外受精における排卵誘発も、体に負担をかけないようになるべく刺激が少ない方法からしていくようにしています。
はじめはクロミフェンを使った低刺激法。
その方法でうまくいかない方は、次はアンタゴニスト法にトライしてみる。ロング法は前の周期からと長くなりますし、卵巣過剰刺激症候群などの副作用を起こす危険性があるので、当院ではあまり行っていません。

たくさん採卵=高い妊娠率?

ある程度刺激をしたほうが、卵子が多く採れて妊娠率が上がるのでは……?
臼井先生 よい卵が1つ採れれば受精卵を凍結して、子宮内膜をベストな状態にして戻す。
そのようにすれば、最終的な妊娠率はあまり変わらないと思います。
強く刺激をしたからいいというわけではなく、その方に合った方法を見つけることが大切だと思いますね。
ただし、同じことを何回も繰り返していても改善しませんから、一度うまくいかなかったら次は違う方法を試す、という柔軟性も必要だと思います。
ちっちさんにも改善の余地は十分あります。
担当医の先生も次の手を考えられていると思うので、2回目も前向きにトライしていただきたいですね。
※黄体形成ホルモン(LH):卵胞刺激ホルモンとともに卵子の発育や排卵、黄体の形成を促す。 
※HCG製剤:発育した卵胞を排卵させたり、黄体機能を維持・活性化させる、胎盤性性腺刺激ホルモン製剤。排卵誘発に用いられる。
※LHサージ:黄体形成ホルモンが一過性に大量に放出される現象。これが排卵を引き起こす。成熟した卵胞から分泌される大量のエストロゲンの正 のフィードバック作用によりLHサージが起こる。

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