【医師監修】京野 廣一 先生 福島県立医科大学卒業後、東北大 学医学部産科婦人科学教室入局。 体外受精の第一人者、鈴木雅洲教授 に学ぶ。1995年、レディースクリニッ ク京野(大崎市)開院。2007年、 京野アートクリニック(仙台市)開院。 B型 ・おひつじ座。同クリニックでは、 なかなか結果が出ない場合には卵巣 刺激法や培養液を変えたり、サプリ メントや遠赤外線療法などを柔軟に 取り入れ、多方向から不妊の壁に挑 んでいる。
ゆきなりさん(34歳)からの投稿 Q.6回目の移植(凍結胚移植5回、新鮮胚移植1回) が終わったところです。主人のほうは特に問題がな く、私のほうは毎回受精卵の状態も子宮内膜の状 態もいいといわれているのに着床しません。なぜ、 着床できないのでしょうか? 今後のことをどうし ようか悩んでいます。
受精卵の質で、着床しない?
着床しない原因には、どのようなことが考えられるのでしょうか。
京野先生 正常に着床できないのは受精卵側と子宮内膜側、どちらかに何かしらの問題があると思われますが、僕は8割くらいは受精卵側の因子で決まると考えています。
胚盤胞で移植されているということですから、そのグレードにもよると思いますが、もし受精卵側に問題があるようなら、受精卵の質をよくするための方法があるかと思います。
ゆきなりさんは多嚢胞ぎみで、高プロラクチン血症といわれているそうですが、それも影響していますか。
京野先生 そうですね。
多嚢胞ぎみということであれば、メトホルミンなどの血糖降下剤を使うことによって卵の質を上げる。
また当院では、多嚢胞性卵巣症候群の方にはレトロゾールという排卵誘発剤を使うとよい結果が出るという例もあります。
そのような方法で、ある程度、受精卵の質を上げることができるのではないかと思います。
着床させる方法
ほかに着床を正常にさせる方法はありますか?
京野先生 一般的に着床率を上げる方法だと、内膜掻爬 はというものがあります。
前の周期に子宮内膜に少し傷をつけておくと、妊娠しやすくなるといわれているんですね。
傷により炎症反応が起きると、そこから着床を手助けするような物質が分泌されてくるという考え方です。
薬だとプレドニゾロン(副腎皮質ホルモン)を排卵日から5日間投与したり、以前、子宮内膜症の治療に使っていたダナゾールを体外受精前に3ヶ月間くらい服用するという方法があります。
また、活性酸素が着床を妨げているのではないかという考え方から、それを抑えるビタミンCやビタミンEを投与することもありますね。
多くの選択肢がある
いろいろな方法があるんですね。
京野先生 なぜ着床不全が起こるのか、どうすれば防げるのか、まだはっきりとは解明されていません。
ですからいろいろな方法を試して、その方に合うものを見つけていくということですね。
また、卵巣刺激法や培養液もこれまでずっと同じということでしたら、少し変えてみるのもいいかもしれません。
当院では常時3種類の培養液を用意して、結果によっては種類を変えることもあります。
このように受精卵や子宮の環境を リフレッシュしてみることも大切だと思います。
もう一度主治医の先生の考えを聞いて、今後の治療方針を立てられてみてはいかがでしょうか。
※メトホルミン:2型糖尿病の治療薬で、血糖を下げる働きをする。
※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):慢性的に男性 ホルモンが過剰な状態にあり、排卵がうまくできない原因不明の疾患。卵巣内にたくさんの小嚢胞がある。排卵障害、不育などがみられる。
※レトロゾー ル:通常、閉経後の乳がん治療に用いられる薬剤。