【医師監修】吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産 婦人科学教室入局、不妊・体外受精チー ム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、 竹田総合病院産婦人科部長、東北公 済病院医長を経て、吉田レディースクリ ニック開設。3年前より産科・婦人科と 施設を分け、不妊治療専門の生殖医療 IVFセンターを設立。同クリニックでは 年に1回、不妊トーク&コンサートを開 催し、ジャガー横田さん夫妻などが講演。 今年は11月27日に催される予定だが、 患者さんに喜んでもらえるよう、今から 先生を中心に企画を進行中。
momoさん(33歳)からの投稿 Q.自然妊娠で流産後、2年経っても妊娠しないため、不妊治療を 開始しました。タイミング療法、人工授精にトライしても結果 が出ないため、 ※ チョコレート嚢胞と子宮後壁のポリープを治療。 その後、体外受精に挑戦し、胚盤胞で移植しましたが、着床は するものの胚が育ちませんでした。何か原因はあるのでしょう か。不育症の検査も考えています。
着床不全の原因は?
momoさんのように、着床はしても胚が育たないというケースは珍しいことなのでしょうか。
吉田先生 妊娠反応は陽性と出たのに、その後、胎のうが見えてこないというのは、それほどまれなケースではないと思います。
なぜこのようなことが起きてしまうのですか。
吉田先生 着床不全は、受精卵とそれを受け入れる側の子宮内膜との相互作用で決まってしまうので、両方の影響を考えながら調べなければいけません。残念ながら、今の医学では100%原因を究明することは難しいと考えられています。
着床障害と子宮内腔の異常
momoさんは右卵巣のチョコレート嚢腫をアルコール固定し、子宮後壁にできたポリープ2個を手術で摘出されたということですが、それも影響していますか?
吉田先生 着床障害の場合は、子宮内腔の異常が原因となることがあります。
子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮奇形などのほか、子宮の内膜がうまく育たず、非常に薄いために着床しづらくなる場合もあります。
流産などの手術の際、子宮内膜が傷つき、それが原因となって子宮内壁が癒着してしまう「アッシャーマン症候群」の方は、子宮内膜が正常に成長できないために着床が困難になることも。
ただ、momoさんは適切に治療を受け、着床はされたということですから、それが直接の原因という可能性は低いと思います。
不育症とは?
では、不育症なのでしょうか。
吉田先生 3回以上流産が続くような場合は、不育症が疑われます。
momoさんは4年前に一度流産されましたが、今回は胎のうは見えてこないという状態ですから、流産の範ちゅうには入らないと思います。
ですから、今の段階では不育症の心配はされなくてもよいかと思います。
momoさんは凍結してある卵がまだ4個あるとのこと。今後も移植を続けていけばいいのでしょうか。
吉田先生 次に移植されて、もしまた同じような結果になったということであれば、念のため不育症の検査や、再度、子宮の環境をチェックされてみてはいかがでしょうか。
今回は移植した胚に育っていく力がなかった、ということも考えられますから、あまり心配されることはないと思いますよ。
受精卵も胚盤胞まで育っているということですから、望みはまだまだあると思います。
※チョコレート嚢腫:チョコレート嚢胞(のうほう)ともいう。卵巣にできた子宮内膜症の炎症部位から出血した血液が中にたまり、嚢状になったもの。