受精卵のグレードが いいと言われているのに 妊娠できません【医師監修】

 

【医師監修】渡辺 浩彦 先生 滋賀医科大学卒業後、京都大学医学部附属病院産婦人科、大津赤十字 病院、済生会茨木病院などを経て、1971年から不妊治療を行っている 父の病院を継承。不妊治療から分娩まで手がけ、365日24時間の診 療体制をとる。O型・おとめ座。暇をみつけてはコツコツと続けている西 国三十三所巡礼の旅は、いよいよあと3ヶ所を残すのみ。最近は景色を 楽しみながら、なるべく自分の足で歩いているのだそう。
ayuさん(31歳)からの投稿 Q.受精卵はどれもグレードがいいようですが、先日3回目の体外受精がダメで、体力的にも金銭的にも疲れ果て、今は休養中です。  ※ 高プロラクチン血症と診断されましたが、薬を飲めば治ります。 正社員で働いているため、残業や休日出勤で疲れがひどいですが、 治療費のために仕事をやめることができません。原因がわからな いまま移植を続けるべきか、思いきって他府県の着床障害を診察 している病院に行くべきか……。アドバイスをお願いします。

胚盤胞なのに着床しない…

胚盤胞まで育つのに着床障害、というケースは多いのでしょうか?
渡辺先生 見た目がよくても、赤ちゃんになれない胚盤胞は存在します。
というよりも、グレードがいいというのはあくまで目安。
たとえ見た目にきれいな胚盤胞であっても、妊娠するのは 50 〜 60 %なんです。
さらに、そのなかで妊娠を継続できるのは8割くらい。
赤ちゃんにまで育つことはいかに困難かがわかります。

着床を目指して

グレードがいい=着床しやすいということではないのですね?
渡辺先生 そういうことです。ただ、移植しても着床しなかった場合、当院では同じ方法で3回、4回と治療を行うのではなく、排卵誘発法を変えてみることを考えます。
もし、よい胚盤胞が育っていたとしても、別の方法を試すこともあります。
ayuさんは 31 歳とお若いので、※ナゾールの服用を試してみるといいかもしれませんね。
当院でも長年治療に使ってきて実績のある方法で、体外受精反復不成功の方でも効き目があると感じています。
着床を改善するのみならず、受精卵の質をよくする働きもあります。
まれに肝臓に負担がかかったり、筋肉痛や関節痛などの副作用が起こることがありますが、血液検査でチェックしながら 10 〜 12 週間ほど服用し、その後に体外受精を行います。

治療とストレス

ayuさんは高プロラクチン血症と診断されていますが。
渡辺先生 薬でプロラクチンの値が下がるのであれば大丈夫。
あらかじめ薬で数値を下げておいて、体外受精の治療に入るのが理想です。
ダナゾールとの併用も問題ありません。
着床しない原因がわからずに治療を続けるのは、自覚的にストレスもたまりがちです。
渡辺先生 仕事については、とらえ方による部分も大きい。
たとえばキツい仕事でも楽しければいいわけですが、「こんなにつらい治療を続けながら」「治療費のために」と思いながらと働くと、余計に仕事が嫌になってしまう。
ストレスによってプロラクチンの値が上がることもわかっていますので、卵巣の予備能力が高い方なら、少し治療をお休みしてみるのも一つの方法かもしれませんね。
※高プロラクチン血症:妊娠中や産褥・授乳期以外に、乳腺刺激ホルモンであるプロラクチンの分泌が増えて排卵が起こりにくくなる状態。 
※ダナゾール:子宮内膜症治療薬。エストロゲン合成を阻害して、子宮内膜症組織を萎縮させたり、細胞増殖を抑制したりする。
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