【医師監修】高橋 克彦 先生 慶應義塾大学医学部卒業。インターン時代に立ち会ったお産に感激し、産 婦人科医を目指す。1990年に日本初の体外受精専門外来クリニック、高 橋産婦人科を開業。後に広島HARTクリニックと改名。2000年、東京H ARTクリニック開設。「日本初」の実績を次々と打ち立て、日本の不妊治 療界をリードする。AB型・やぎ座。マツダスタジアムに年間指定席を持つ ほど、熱烈な広島東洋カープ・ファン。地元開催の3連戦は忙しくてもでき るだけ都合をつけてスタジアムで観戦するとか。
まちゃさん(38歳)からの投稿 Q.人工授精を7回行った後、腹腔鏡手術で卵管閉塞、子宮内膜症とわかり、体外受精に切り替えました。初回に採卵した10 個のうち3個の卵が受精し、胚移植を2回実施。今回、凍結 受精卵を使いきり、次はまた採卵からですが、同じ病院で同じ 方法で行うことに不安を感じています。今は個人病院での実施 ですが、専門病院への転院のタイミングなどありますか?
目指すべき受精率は?
人工授精7回の後、体外受精へ。しかし思うような結果が出ずに、転院も視野に入れてのご相談です。
高橋先生 採卵数が 10 個というのは、年齢からすると平均的です。
問題は3個しか受精しなかったことでしょうね。
当院では体外受精の受精率は 60 %を目標にして行っているので、3個は平均より低い確率。
私なら次回は顕微授精を考えたほうがいいとご提案すると思いますね。
顕微授精の適応
年齢も踏まえてですか?
高橋先生 年齢というより、問題は受精率そのものです。
でも、これは体外受精をやってみて初めてわかることですから。
卵子と精子のどちらに原因があるのか、一概には言えない面がありますが、2回行ってよい結果が得られなかった場合は、やはり顕微授精でしょうね。
凍結胚も、初期胚と胚盤胞の両方で試してみたほうがいい。
胚移植でうまくいかない理由としては、胚の質の問題が疑われると思いますが、1回目、2回目とどういう胚移植をしたのかということが知りたいですね。
すわなち、自然の排卵周期で採卵した場合の移植と、ホルモン補充療法で採卵した場合の移植と、両方を試みたのかどうかです。
体外受精で得られる情報
同じ方法で何度も体外受精をすることに、疑問を感じていらっしゃるようです。やはり転院したほうがいいでしょうか。
高橋先生 7回の人工授精の後、腹腔鏡手術も実施。
そして、体外受精でこういう結果が出た以上は、専門病院をおすすめしますね。
それも体外受精や顕微授精の成績など、クリニックの実績を、毎年きちんと公表しているところがいいでしょう。
まったく同じ方法で3回目を考えているというのは、おすすめできません。
一度、体外受精をすれば、卵管以外の卵子と精子の問題など、不妊の原因について相当の情報がわかります。
2回もやれば十分だと私は思います。
本来の顕微授精とは、男性側に不妊の要因がある場合の治療法というイメージがあります。
高橋先生 本来はそうです。ところが、意外と卵子の質が原因で受精しないことが多いのです。
特に典型的なのが、年齢の高い女性の卵子の場合、透明体が厚くなっているとか、硬くなっていることが多い。
そうすると、受精しないことが多いんですね。
あるいは、ガードがきかなくなって、精子が2個以上入ってしまう多精子受精など。そういう場合に、1個の精子を確実に入れられる顕微授精が有効です。
数少ない卵から効率のいい受精を行うための顕微授精。
このケースが今、非常に増えています。