ドクターと患者さんで、「自己注射」について語ろう!【医師監修】

本誌『ジネコ』でもおなじみの小田原靖先生と、人気ブロガーのhibikiさん。実は、hibikiさんはファティリティクリニック東京に通院していて、 クリニックのすすめで自己注射を利用しているようです。 大の注射嫌いの hibiki さんが、自己注射に挑戦したその理由とは?

【医師監修】小田原 靖 先生 答える人 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オー ストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム 医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズ キ病院科長を経て、1996年恵比寿に開院。AB型・みずが め座。取材当日は、患者さんたちのすべての診療を終えた夜。 お忙しいなか、対談に多くの時間をさいていただきました。

治療には前向きでも 注射には後ろ向き?

hibikiさんが、小田原先生のクリニックに通われるようになったきっかけは?
hibiki  不妊専門のクリニックをネットで 探し、家や、職場からも通いやすい場所であったこと、何より口コミでの評判のよいことでこちらのクリニックに決めました。
先生方、看護師さんをはじめとしたスタッフの皆さんが親身になってくださるので、とても信頼しています。
小田原 hibikiさんはどのように治療したいか、しっかりと自分の意見をもっていますし、健康管理もきちんとされている前向きな患者さん。
医師だけに頼らず、ご自分でも努力されているので、担当医として、なんとかその努力に報いたいですね。
hibiki  食生活や運動など、健康のベース がしっかりしていないと、せっかくの治療も、十分に効果を発揮してくれないような気がするので、頑張っています。
できることは、なるべくやってみようと。
小田原 そんなhibikiさんでも、自己注射には〝後ろ向き〞でしたね(笑)。

注射は難しいもの、と 誤解していませんか?

hibiki 注射が大の苦手なので、「自分で注射なんて絶対ムリ!」と思いました(笑)。
クリニックでしていただく排卵誘発剤の注射は筋肉注射で、痛みに弱い私などはしばらくうずくまってしまうほど痛い!
今日は右肩、明日は左肩、次はおしり、と昨日の痛みが残っているうちに連日打つので、それを自分自身でやるなんて、とんでもない! と。今思えば誤解なのですが。
小田原先生のクリニックでは、どんな方に「自己注射」をすすめていますか。
小田原 まずは、すべての患者さんに「こういう便利なものがありますよ」ということで自己注射をご紹介しています。
場所柄もあるのか、当院には働きながら治療される患者さんが多く、連日の通院がお仕事の妨げになり、その結果として治療が苦痛になるケースも少なくありませんので。
それでも、現在利用される方は7割強程度で、残り3割の方は従来どおりに、クリニックで注射を受けています。
hibiki  私もいったんは自己注射を諦めま した。
勤め先に診療所があるので、注射はそちらにお願いすることにしました。
仕事中に短時間で受けられるので、便利ではあったのですが、会社が休みの土・日は利用できないこともあり、一念発起をして自己注射に挑戦してみました。

患者さんにもクリニックにも メリットになる選択

初自己注射の感想はどうでしたか?
hibiki  拍子抜けするほど、簡単でした! ペン型の注射器は見た目に恐怖感がなく、薬剤もダイヤルを回すだけで適量がセットできるので安心しました。
注射針は細くて短く、何より皮下注射なので痛みがほとんどないことに感激しました。注射嫌いの方にこそ、自己注射はおすすめです(笑)!
小田原 自己注射で使用する薬剤は、濃縮タイプなので、少ない量で済むのも痛みの軽減につながっているのでしょう。
注射器もインスリン注射と同じペン型なので、子どもから高齢者まで、安全に使えるようにできていますから大丈夫。
自己注射をご利用の患者さんには、 24 時間サポートする緊急用の連絡先もお知らせしているので、小さな疑問でもいつでも連絡してください。
hibiki  看護師さんが、1時間ほどかけて 丁寧にレクチャーしてくださったのも、安心できた理由の一つです。
「指導後、合格したらお渡しします」といわれていたので、試験勉強のように、真剣に指導を受けたのがよかったのかもしれません。
でも、後から伺ったら、「今まで、不合格者は一人もいません」って(笑)。
小田原 クリニックのほうでも、医師の手間がそれほど増えるわけではありませんし、実際には看護師が患者さんにレクチャーするので、患者さんも気軽にわからないことなどを聞くことができます。
患者さんとクリニックの両方にメリットのある選択肢なのではと思いますね。

自分のための治療 注射ぐらいは自分で!

自己注射のメリット、デメリットは?
hibiki  私にとってはメリットばかりですね。まずは、痛みが少ないという点です。
それに、仕事をなるべく休みたくないので、通院をしなくて済むのは助かります。
私は病院が近くなので、交通費を負担に感じたことはありませんが、小田原先生のクリニックは人気が高く、遠方から通われている患者さんも多いので、そういった方にもメリットは大きいと思います。
また、注射している私を見て、夫が「大 変なんだなぁ」と理解してくれるようにもなりましたね。
小田原 海外ではご夫婦でレクチャーを受けて、ご主人が奥さまに注射してさし上げるパターンが多いようですよ。
hibiki  なんだか愛が深まりそうですね。でも、ウチは駄目です、私以上に怖がりなので(笑)。
出勤前に、あわただしく冷蔵庫から取り出して、プチッと注射しています。保存方法も、冷蔵庫に入れておけばいいだけですし、持ち歩く場合は、専用の保冷バッグがあるので安心です。
小田原 自己注射によって、「積極的に自分から治療に関わっている」と自覚が高まる患者さんは、確かに多いですね。
まだ導入されていないクリニックもあると思いますが、患者側から「自己注射を試してみたい」というのは失礼でしょうか?
小田原 遠慮しないで、どしどし意見をぶつけてください。
ただ、LHが低い方など、自己注射に適さないケースもあるので、担当医とよく相談されるといいでしょう。
hibiki  以前、別の種類の注射のため、夜10 時に伺ったら、小田原先生ご自身がしてくださって、「遅くまで大変だなぁ」と。
「お医者さんに甘えず、自分でできる注射は自分ですべきかも」と感じました。
今ではこれも自己注射しています。
万一、先生に過労で倒れられたら、困るのは私たち患者でもあるわけですし。
小田原 お気づかい、ありがとう。でも、鍛えていますからご心配なく(笑) 。
hibiki 自己注射について、体外受精を始 める人は興味があるようで、ブログにのせると反響が多くて驚きます。
自己注射について理解が深まれば、試してみたいという人も多くなるような気がします。
小田原 当院でも定期的に「患者会」などを催しています。まず、実物を手にしてみれば、安心されるかもしれませんね。
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