【医師監修】波多野 久昭 先生 日本医科大学卒業。ハンブルク大 学産婦人科学教室留学後、日本医 科大学付属病院産婦人科学教室講 師、飯田市立病院産科科長を経て、 2005年ノア・ウィメンズクリニック を開院。A型・やぎ座。細胞の中の 紡錘体まで簡単に見ることができる 顕微鏡の導入を予定。最新機器を 完備して、さらに正確で迅速な不妊 治療を目指す。
ラムちゃんさん(30 歳)からの投稿 Q.人工授精5回目が失敗し、6回目に挑戦することになりました。 左側の卵管が閉塞しているので、先生から「片方が詰まっていた ら、もう片方に問題があるはず。腹腔鏡手術をしてみませんか?」 と言われました。なぜ先生は今の段階で体外受精ではなく、腹 腔鏡をすすめたのでしょうか。体外受精より腹腔鏡手術後のほ うが妊娠しやすいのですか?
卵巣の片側が閉塞している
ラムちゃんさんは左側の卵管が閉塞しているということですが、今の状態のままでは妊娠することは難しいのでしょうか。
波多野先生 やはり片側だけの排卵となると、チャンスは少ないと思います。
卵管炎など炎症による閉塞の場合は、担当医の先生がおっしゃっているように、もう片方の卵管もあまりよくない状態になっていることが多いんです。
そうなると、さらに妊娠のチャンスは減ってしまいます。
ステップアップ?腹腔鏡?
人工授精に5回トライされていますが、そろそろステップアップを考える時期なのでは……。
波多野先生 年齢がまだ若く、卵管に異常がない方でしたら、ご本人の希望にもよりますが、まだ人工授精を続けてもよいかと思います。
ただし、ラムちゃんさんのように卵管に問題があるという方は、やはり体外受精か腹腔鏡手術というステップを提示することになると思いますね。
担当医の先生は体外受精より腹腔鏡手術を先にすすめられていますが、ラムちゃんさんの場合、腹腔鏡のほうが妊娠への近道なのですか?
波多野先生 どちらがベストとは言えませんが、腹腔鏡手術の場合、状態によっては有効な治療法となります。
特に子宮内膜症がある方の場合は効果的で、うまく治療ができればかなり妊娠率が上がる方もいらっしゃいます。私の経験だと4割くらいの方が術後に妊娠されましたね。
反対に、腹腔鏡手術を受けても治療できない方もいます。
癒着がひどくて剥離できない、剥離しても ※ 卵管采の形がうまく維持できないという場合は体外受精という選択になるかと思います。
治療のメリット・デメリットを考える
ラムちゃんさんは先生の治療方針に疑問を抱き、「早く体外受精に」と気持ちが焦っているようですが。
波多野先生 お気持ちはわかりますが、まだ年齢的には余裕があるので「焦らないで」とアドバイスしてさしあげたいですね。
どちらの治療にもメリットとリスクがあります。
腹腔鏡は保険が適用されますが、やはり手術なので傷跡が残ったり、薬の副作用なども考えられます。
一方、体外受精は経済的な負担が大きくなりますし……。
そのようなことを先生としっかりお話しされていないのではないでしょうか。
説明を十分に聞いて納得してから治療に進むことが大切です。
ラムちゃんさんにはその時間がまだ十分あると思いますよ。