多嚢胞性卵巣の場合体外受精と腹腔鏡手術、どちらに進むべき?

嚢胞性卵巣症候群の手術ってどのようなもの? 効果は? 腹腔鏡手術を得意とされている、 湘南IVFクリニックの田中先生に伺いました。

田中 雄大 先生  慶應義塾大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医。大和 市立病院産婦人科勤務、内視鏡手術の専門病院を目指した矢 崎病院婦人科での勤務などを経て、2009年、矢崎病院に不 妊治療専門の湘南IVFクリニックを開設。聖マリアンナ医科 大学非常勤講師。B型・かに座。内視鏡手術と体外受精を、 車の両輪のような相補的な関係であると考え、この2つがうま く噛み合った理想の不妊治療の実現を目指している。サイト内 の「スタッフのブログ」は、ほとんどを田中先生ご自身が担当。 心をなごませてくれるユーモアとウイットに富んだ文章にはファ ンも多そう。

ドクターアドバイス

早く結果を得たい場合は 体外受精のほうがダイレクトですが、 どちらのほうがよいかは 年齢や症状によって違ってきます。
ぽんさん(会社員・30歳)からの投稿 Q.不妊治療を始めて2年。人工授精を何度か試み、今月は ※ ロミフェンを 3 錠 5日間服用。それでも排卵しませんでした。 「体外受精を考えたい」と担当医に相談したところ、 「多嚢胞性卵巣症候群だから、手術療法はどうか?」とすすめられました。 詳しく聞かなかったのですが、〝腹腔鏡手術〞というもののようです。 調べてみると賛否両論。体外受精と腹腔鏡手術、どちらを選択すべきでしょうか? 

多嚢胞性卵巣症候群への対処法

多嚢胞性卵巣症候群が原因の不妊では、クロミフェンの次の治療手段としては、手術が一般的なのでしょうか?
田中先生 2008年、ESHRE(ヨーロッパ生殖医学学会)とASRM(アメリカ生殖医学学会)が共同でPCOSの治療指針を作成しました。
それによると、第1段階はクロミフェンによる排卵誘発、第2段階は注射による排卵誘発、もしくは腹腔鏡下ドリリング手術、第3段階として体外受精となっています。すべての方にこの指針が当てはまるわけではありませんが、標準治療としては一般的だと思います。

ドリリングとは??

腹腔鏡下ドリリング手術、とはどんなものなのでしょうか?
田中先生 この治療法は、おなかに3〜4ヶ所、5〜 10 ㎜ほどの穴を開け、スコープで腹腔内を観察しながら、電気メスやレーザーメスなどで卵巣に多数の穴をうがつという方法で、手術にかかる時間は約 30 〜 60 分ほど。
PCOSは、卵巣の外側が硬くなっているために排卵しない状態が続く症状ですから、小さな穴を開けることで排卵を促すのです。
この方法により、8割程度の方は、術後2〜8週間のうちには自然排卵します。当院の実績データだけでいえば、過去3年間の 46 例の施行のうちの 42例、 91 %で自然排卵が回復するという高い結果を得られています。
一度の手術で、効果はどれほどの期間持続しますか?  手術のメリット、デメリットも教えてください。
田中先生 効果は一生続くものではなく、また少しずつ排卵しにくくなります。
手術を受けてから自然排卵する期間は、約1〜 11 ヶ月と個人差がとても大きく、平均すると6ヶ月間程度でしょうか。
せっかく手術が成功しても、わずか1回しか自然排卵しないケースもあります。
さらに、2〜3日の入院期間・全 身麻酔が必要なこと、目立つほどではありませんが手術痕が残ること、こういったことが、患者さんが手術をためらうデメリット要因となるのではないかと思います。
しかし、術後は以前よりもずっと排卵しやすい状態になっているので、再びクロミフェンやゴナドトロピンなどの排卵誘発剤を投与する場合にも、少量で済むことが多いのです。
薬剤が少量で済むということは、副作用も少なくなるということです。
また、手術中に腹腔鏡でおなかの中が観察できるため、卵管の形状や癒着の有無など、他の不妊原因がないか、目で確かめられるのも大きなメリットといえるでしょう。保険適用の手術なので、費用面でも負担が少なくて済みます。

ドリリングが適さないタイプは?

腹腔鏡下ドリリング手術に適さない方というのはいますか?
田中先生 肥満の方、下垂体ホルモンである ※  H濃度の高い方などは、手術しても改善されないケースが多いように思います。
LH:黄体形成ホルモン。
手術はどの病院でも受けられるのですか?
田中先生 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医の資格が必要ですので、PCOSの方は病院選びの目安にされるとよいでしょう。体外受精、腹腔鏡手術のどちらにも精通している医師であれば、中立的な立場でぽんさんに適した治療法をすすめてくれるはずです。

体外受精へのステップアップは?

一気に体外受精に進んだほうが、早く結果が得られるのでは?
田中先生 早く結果を得たいというのであれば、手術より体外受精のほうがダイレクトですが、どちらが優れているかを断定的に言うことはできないと思います。
ただ、ぽんさんの場合はまだ年齢が 30 歳とお若いので、段階としては、なるべく自然に近い形で妊娠できる可能性の高い手術をまず試し、それでも妊娠しなかったら体外受精に進む、という選択肢もあるということです。
体外受精の場合でも、手術後のほうが反応もよくなることが多いように思います。
体外受精では、 巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠などの危険性をどうしても伴います。特に、PCOSの方はOHSSになりやいとされているので、そういったことも含めて、よく検討されるとよいでしょう。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。