低刺激法での体外受精でも妊娠できる?【医師監修】

体外受精で質のいい卵子を得るためには、 どんな排卵誘発法をしたらいいの?  低刺激法でも妊娠できるのか、大野先生にお聞きしました。

【医師監修】大野 元 先生  岐阜大学医学部卒業。岐阜大学医学部大学院修了。ブリティッシュ・ コロンビア大学(カナダ)研究員、岐阜大学助手、IVF大阪クリニッ クを経て、1999 年 8月開業。専門は周産期と不妊で体外受精の エキスパート。O 型・おうし座。最近の悩みは、好きなお酒を飲む 時間がなかなか取れないこと。「お産と採卵は待ってくれませんの で、いつでも動ける態勢を整えておかないと」と先生。
きなこさん(主婦・38歳)からの投稿 Q. 6月に ※ンタゴニスト法での、初の体外受精をしました。 採卵の結果は1個のみで、受精はしたものの、 分割が進まず、移植中止となりました。 今回、2 周期あけて低刺激法での体外受精に 臨もうと思っていますが、多数の採卵は期待薄です。 そんな私ですが、低刺激法でも妊娠できますか?
※アンタゴニスト法:ある程度まで卵子が成長したところで、GnRHアンタゴニストという薬剤を注射し、卵巣を刺激する方法。GnRHアンタゴニスト製剤 は黄体形成ホルモンの分泌を抑制する働きを持ち、採卵前に排卵してしまうことを防ぐ。

低刺激周期?刺激周期?

まず最初に、低刺激法の排卵誘発と、そうでない方法では、どちらのほうがよいのでしょうか?
大野先生 これは、医師たちの間でもまだ結論は出ていません。体外受精の目的は質のよい卵子を得ることです。その過程の排卵誘発には、 ※ング法やアンタゴニスト法、 ロミフェンを使った低刺激法など、いろいろなバリエーションがあります。
それぞれに長所・短所がありますので、一概にどれがよいとは言えません。
※ロング法(排卵誘発法):月経前の黄体期からGnRHアナログ 製剤を使用し、月経3日目からHMG製剤を7日間連続して筋肉注射する方法。
それよりも、患者さんの体質や、その時々の状況に応じて方法を決めることが大切ではないでしょうか。そのクリニックの得意な排卵誘発法に従うのも、いいかもしれませんね。

低刺激は、妊娠率が低い??

低刺激法だと採卵数が少なく、それゆえ妊娠率も低くなるのでは?
大野先生 現在は、胚移植は原則1個に制限されているので、体外受精で得られる卵子も1個で十分という考え方もあります。連日の注射とアンタゴニストでも1個、注射しなくても1個ならば、注射しないで得られた卵子のほうが良好なはずです。
ヒトは、もともと妊娠しやすい動物なんです。
1周期に1個できて排卵される卵子は、もともと選別された質のよい卵子なんですね。完全自然周期で採卵できれば、質のよい卵子が得られます。
ただ、排卵は昼夜いつになるかわからないので、患者さん側とクリニック側の負担が大きくなるのも確かです。その点、クロミフェン周期ですと、その負担を軽減できます。クロミフェンは排卵誘発作用に加えて、排卵を少し遅らせる作用があります。
ですから、排卵のタイミングを患者さんやクリニックの都合のいい時間に設定することで、両者の負担を軽減できるというわけです。

どんな人に低刺激周期??

低刺激法は、どのような患者さんに有効なのですか?
大野先生 きなこさんのように注射が効きにくい方や、仕事の都合などで通院の回数を減らしたい方に適しています。低刺激法でもコツをつかめば、従来の方法と同程度の妊娠率が得られます。また、きなこさんの場合は、連日の注射で卵巣も疲れているはずですから、2周期お休みすることは正解だと思いますよ。
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