原因不明でAIHもうまくいかず。体外受精に進むべき?

具体的な原因がないのに妊娠しない。 そんな「原因不明の不妊」はどうしたらいいのでしょうか。 浅田レディースクリニックの浅田先生に相談しました。

浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。 1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研 究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。 2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門 医認定。「不妊治療を通じて、幸せな家庭を作る手助けをする」こと が基本理念。著書に『もう悩まない。赤ちゃんはきっと授かる』(現代 書林) 、 『不妊治療Q&A おしえて先生! ありがとう先生!』(シオン)。

ドクターアドバイス

僕に言わせれば、 基本的検査では不妊の 本質的な原因はわからない。 だからステップアップが 大事なんです。
ねこさん(主婦・31歳)からの投稿 Q.結婚4年、不妊治療3年目。夫婦ともに異常はなく、 人工授精(AIH)に5回撃沈し、今は治療をお休み中です。ネットで見たら、※ ピックアップ障害など、体外受精をして初めて原因がわかる場合もあるとのこと。 原因不明不妊の場合、体外受精なら可能性があるのでしょうか?

原因不明の体外受精??

投稿者のねこさんは、ご主人とともに、特に原因のない不妊症で人工授精も5回目とのこと。
今後、体外受精に進もうかという相談なのですが、アドバイスをお聞かせください。
浅田先生 まずは「原因不明」ということですが、僕に言わせたら不妊治療の基本的な検査では、不妊の本当の原因はわからない。検査でわかるのは、妊娠が可能かどうかの最低条件だけです。
最低条件というと?
浅田先生 例えば、精子があるか、排卵があるか、卵管が詰まっていないか、子宮の状態は? などです。
そういった部分に問題がなければ、とっくに妊娠しているはずで、不妊症の本質的な「原因」というのは、子宮の中で起きている現象の中にある。
それがピックアップ障害であり、※受精障害や ※ 着床障害、卵の質の問題などにあたります。 ※受精障害:卵子も精子も一見異常がないのに受精できない状態 、※着床障害:受精卵が子宮内膜まで行っても着床しない状態 だから、ねこさんの場合は「原因不明」とはまだ言えないと僕は思います。

ヒューナーテストの必要性

ねこさんの投稿へ寄せられたコメントの中にもある、性交後の精子の運動率をみる検査 〝ヒ ュナーテスト〞は受けるべきでしょうか?
浅田先生 ヒュナーテストは、性交後3〜5時間後の子宮頸管粘液をとって検査するものですが、時期をちょっとはずすと精子の動きがぐんと減って死んでいたりして、不正確な結果になります。夫が自ら精液検査に協力してくれない場合以外、私はやりません。
ヒュナーテストより、より正確で信頼できる※ 子不動化抗体を、私は血液検査で調べています。※精子不動化抗体:まれに子宮頸管中に存在し、精子が子宮へ到達することを邪魔する物質。不妊の原因となる。 

原因究明の方法は?

やはり次は体外へ進むべきだと?
浅田先生 そうですね。相談内容にもある通り、ピックアップ障害など不妊症の本質的な原因は、体外受精をしてみないとわからない。
不妊症の治療というのは、ある治療をして、それに対して結果=妊娠するかどうかで判断するもので、他の疾病の治療とは根本的に違います。いわゆるイミング療法から始まって排卵誘発、人工授精、それでダメなら体外受精、顕微授精へと進む「ステップアップ治療」なんです。
それは患者さんにとって、最低限の治療によって最短で妊娠するための効率のいい方法で、その人の年齢や卵巣の予備能力などを加味してダラダラやるべきものでもない。
人工授精で妊娠できる人は、5回ほど行えば9割くらいは妊娠しているもの。それがダメで体外受精に進んだ途端、1回で妊娠したという人は6割くらいいます。それだけピックアップ障害というのは不妊の原因として多いのではと思いますね。

自然周期の体外受精

自然周期の体外受精というのもあると聞きますが?
浅田先生 それは非常に効率が悪いと思います。つまり、通常の体外受精のように1回でたくさんの卵を採るのではなく、その人の自然の排卵期に合わせて採卵するから、1回の採卵数も少ない。卵の数が少なければ良い卵の数も少ないわけですから、妊娠率も低くなります。
結果が出なければ、毎回通院する時間も、お金もかかりますよね。それに女性の卵子は、歳をとるごとに減り、質も落ちていきます。どんどん下り坂に入っていくのに、あえて時間を無駄に過ごす方法をとるのは、非常にもったいない話です。

年齢とステップアップの関係

なるほど。歳をとればとるほど、ステップアップも早めにしていく必要があるわけですね。最後に、初めての体外受精に際しての注意点は?
浅田先生 注意点というか、体外受精というのは人の体外で人工的に受精卵を作り、培養させてから子宮に戻して妊娠させる方法ですから、結局大事なのは医者や※養士の技術。※(胚)培養士:顕微授精や人工授精において、配偶子や受精卵・精子を専門に扱う医療技術者。
例えば、うちには培養士が 11 人いますが、確実な結果を出す技術を持つために3年は勉強してから、実際の現場に立っています。体外受精を行うクリニックや病院はたくさんありますが、その技術、培養室のあり方などをよく吟味してください。
施設によって技術や値段も違います。 うちでも行っていますが、治療前 の説明会へ出たり、治療に納得できなければ医師を変えていくことも大事だと思いますよ。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。