不妊の原因が見つからない……。体外受精に進むべき?

ホルモン値も卵管も精子も正常……。 それでも妊娠できない人は 体外受精に進むべきなのでしょうか。

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体 外受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995年 より現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。5年前より不妊 専門の治療センターに。臼井先生の治療の基本方針は、患者さ んの希望を最大限に取り入れること。医院のHPではDr.Aとし てブログのほか、24時間受付の直通メール、オフ会などで患者 さんと密にコミュニケーションをとっている。AB型、いて座。

ドクターアドバイス

原因不明の不妊は全体の約3割。 “私だけ”と不安にならず、 前向きに治療に臨んでください。
天使の羽さん(主婦・34歳)からの投稿 Q.低温期の採血では異常なし。しいて言えばプロラクチン値が69で少し 高いだけ。糖尿や甲状腺、排卵後の黄体ホルモン値も正常、子宮内膜症も卵管異常もなく、 ※ ュナーテストも良好……となると、 卵が問題!? 1年間不妊治療を続けていますが、 私のような場合は体外受精のほうが成功率が高いのでしょうか? 
※ヒュナーテスト:性交後、子宮頸管粘液を採取して、精子や頸管粘液の状態を調べる検査。

高プロラクチン血症?

ホルモン値なども検査して問題がないということですが、投稿にコメントしたサンデーさん指摘のプロラクチンの値はどう思われますか?
臼井先生  69 というのはかなり高めの数値ですね。プロラクチンの数値が妊娠時や出産以外に高くなってしまうと、月経の異常や排卵障害を起こしやすくなります。一般的な正常値は 10 〜 35ng /㎖くらいまでの間なんですが、私の医院では 20 までを正常範囲内と考えてます。プロラクチンの負荷試験で潜在性の ※プロラクチン血症を見つけたら、数値を下げる薬を処方するようにしています。

※高プロラクチン血症:妊娠中や産褥・授乳期以外に、乳腺刺激ホルモンであるプロラクチンの分泌が増えて排卵が起こりにくくなる状態。 

それでは、天使の羽さんが妊娠できない原因は高プロラクチン血症によるものが大きいということですか。
臼井先生 プロラクチンの数値が高い=妊娠できない、というわけではないと思います。その他の原因としては、ピックアップ障害や子宮卵管造影検査ではわからないような卵管の異常などが考えられますね。

ステップアップのタイミングは?

このような方の場合、臼井先生でしたらどのような治療方針を立てられますか?
臼井先生 私は一つの治療を3〜5周期続けたら、ステップアップの時期と考えています。同じことを長く続けていてもあまり確率が上がりませんから。 ※ イミング法でしたら、排卵誘発剤による治療もしながら3〜4周期。それで結果が出なければ、腹腔鏡の検査をして卵管の状態をみていく。癒着などがあった場合、それをはがした後、妊娠率が上がることがあります。 ※タイミング(療)法:不妊治療の一つ。基礎体温、尿中または血中のエストロゲンや黄体化ホルモンを測定して、排卵日 を予測し、その排卵日前後に性交渉を行う。 
その後、再びタイミング法にトライして、それでも妊娠しなかった場合は……。
臼井先生 天使の羽さんはヒュナーテストは良好ということですから、こういう方の場合は人工授精をやっても成功率はあまり上がらないと思います。もちろんご夫婦でよく相談されたうえで、体外受精へのステップアップを考えられてもいいのではないでしょうか。

年齢・AMHを加味して…

天使の羽さんは 34 歳ですが、年齢的に見てもステップアップを視野に入れたほうがいいですね。
臼井先生 そうですね。データ的には 37 歳が妊娠率の曲がり角といわれています。 37 歳頃になると発育卵胞が減少し、発育卵胞から分泌される抗ミュラー管ホルモン(AMH)も減少してくるんですね。基準値より下回ってしまうと妊娠率が下がってくるので、私の医院ではその数値も一つの目安にしています。
天使の羽さんもそろそろ急がなくてはならない年齢。AMHなど各種ホルモンを計測する卵巣機能の予備能検査を受けられて、今後の治療計画の目安にされてもいいのではないかと思います。

卵子の質を保つ方法?

天使の羽さんは「卵の質が悪いのかも」ということも心配されているようですが……。
臼井先生 卵の質については、体外受精をすることでわかることが多いですね。採卵後、受精してきちんと分割していれば問題ないということです。たくさん卵が採れるのに受精しなかったり、分割の状態がよくなかったら、質が悪いということになります。
卵の質を上げるために効果的なことはありますか?
臼井先生 タバコはやめる、栄養バランスのとれた食生活、規則正しい生活リズム、ストレスの軽減など、体も心も健やかに保つことは基本です。ほかに私の医院では医療用サプリメントも取り入れています。酸化ストレスを軽減するといわれているメラトニンや胚盤胞への到達率が高くなると考えられているプラセンタエキスなどを処方しています。
サプリも柔軟に治療に活用されているんですね。
臼井先生 まだはっきりとしたエビデンスはありませんが、よいと言われるものはきちんと調べて積極的に取り入れています。やれることはすべてやって、一人でも多くの患者さんに妊娠していただきたいと思っていますから。不妊の原因が不明という方は全体の 30 〜 40 %と、意外に多いんです。あきらめずに、専門の医師と相談しながらよい結果を出していただきたいですね。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。