自然周期による採卵ですが、採卵と胚移植の予定を早く知りたいです【医師監修】

自然周期の採卵で体外受精を行う場合、 採卵日はいつで、受精卵は何日目に移殖したらいい? 藤野先生から心強いアドバイスをいただきました。

【医師監修】藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。 米国留学、同大学医学部 婦人科学教室講師を経て、 1997年にクリニックを開業。 現在、同大学で非常勤講師 も務める。毎朝5時に起床 し、「朝の爽やかな空気の 中で眺める日の出が大好き」 という超健康的な先生は、B 型のおとめ座。最近は「大人 の子ども心をくすぐる」鉄道 模型の魅力にはまっているん だとか。

ドクターアドバイス

最初から胚盤胞にして凍結し、 時期を見て戻す方法があります
とんかつさん(会社員・32歳)からの投稿 Q.自然周期の採卵で、体外受精に初チャレンジします。 排卵日は14~16日目あたりで、採卵は12日目とのこと。 私の感覚ではちょっと早い気もするのですが?? 勤務の都合をつけるのが大変な仕事なので、早めに調整したいけど、 採卵や移殖のタイミングを決めるって難しいですね。

胚移植日の決定要素

※クロミッドを服用しながら、自然周期で採卵されている方の相談です。「排卵日が 14 〜 16 日目あたり」ということですが、そもそも採卵日をいつにするか、医師はどのように決めているのですか?※クロミッド:排卵誘発薬。一般名はクロミフェン。ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を促す合成ホルモン製剤。
藤野先生 採卵の日を決めるのは、血液中のエストロゲンの値、卵胞の大きさ、脳下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)の値、一般的にこの3つがポイントとなります。
ですから、「生理周期が 28 〜 30日で、 14 日目に排卵」とおっしゃっていても、これら3つの条件を満たしていれば、 12 日目に採卵することもあります。
とんかつさんの主治医も、おそらくエストロゲンと卵胞の大きさで判断されたのでしょう。あながち、日数だけで決められません。これらの条件を満たしていれば、問題ないと思います。
日数だけでは決められない、人によっても違うということですか?
藤野先生 ええ。何度も治療を行っていると、その人の排卵の条件、排卵の状態というものがわかってきます。逆に、生理周期が一定でない方は、何日目かではなく、そういう要素を見て決めていかざるを得ない場合がありますからね。
採卵できた場合、今度は受精卵の移植を何日目に行うのかということが問題になってきますね。
藤野先生 従来の体外受精でしたら、2日目に戻すのが一般的でした。もちろんそれはそれで悪くないのですが、当院では3日目の8分割や、4日目の胚盤胞になってから戻すことも多い。
受精卵は早い人で4日目、遅い人で6〜7日目になると胚盤胞となります。むしろ、これからは胚盤胞移植が主流になるでしょう。

胚盤胞移植のメリット

胚盤胞移植の一番のメリットとは何でしょうか?
藤野先生 今、多胎妊娠はものすごく問題になっています。移植胚数のガイドラインや、妊娠合併症などのいろんなリスクを考えると、やはり単一胚移植、子宮に戻す胚は1個にしたほうがいい。それなら、その1個は妊娠する可能性が高い、質のいい受精卵であることが重要です。
盤胞になれるかなれないかは、少なくとも外見的にみて質のいい卵子かどうか判断する基準になります。
さらに、胚盤胞になるまで移植しないことによって、不必要な胚移植を減らすことができるというメリットもあるのです。あえて胚移植をキャンセルすることによって、患者さんの経済的な負担を軽減することができます。
せっかく採卵したのに、胚盤胞になれずに移植しなかったというのは悔しい……そんな人も中にはおられるかもしれません。しかし、私はいい卵子でなければ、いくら早い時期に移植してもよい結果につながりにくいと説明しています。

仕事と、不妊治療のスケジューリング

ジネラーには、とんかつさんのように仕事を続けながら不妊治療をされる方も多くいます。先生から何かアドバイスをお願いします。
藤野先生 当院でも、仕事の都合をつけるのが大変、早めに採卵や移植の日を知りたい、という方が結構いらっしゃいます。いくら胚盤胞移植がいいからといって、「4日目も5日目も6日目も空けておいてください。当日にならないとわかりませんよ」ではみなさん困るでしょう?  
そういうことなら、最初から胚盤胞にして凍結し、時期を見て戻すという方法がいいでしょう。
ここでも1、2個しかない受精卵を凍らせることに抵抗がある……という人がいるかもしれませんが、先の話と同じよう
に、胚盤胞になれない受精卵は早い時期に子宮に戻しても妊娠できないケースが多い。
それなら、最近の凍結技術は進んでいるので、胚盤胞まで育てて移植するのが理にかなっていると私は思います。
また、薬を使って採卵日を調整する方法も緊急避難的に可能です。GnRHアンタゴニストという薬を使えば、 24 時間ほど排卵を遅らせることができますので、採卵日を先に延ばせます。胚凍結や薬など、いずれにしても、主治医とよく話し合った上で、その人にあった一番いい方法を見つけることが大切ですね。
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