体外受精に切り替えたものの、うまく進まない。 医師からの説明も少なく、どうすれば? という質問を 蔵本ウイメンズクリニックの蔵本先生に伺いました。
【医師監修】蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山 口大学大学院終了。山口県 立中央病院産婦人科副部 長、済生会下関総合病院産 婦人科部長を経て、1990 年オーストラリア・PIVETメ ディカルセンターへ留学。帰 国後、蔵本ウイメンズクリニッ ク開院。O型、おうし座。 趣味は、ミュージカルやアク ション映画鑑賞。
ドクターアドバイス
しっかりと理解してから 体外受精に進むことが大切。 不安や疑問は早めに解決しましょう
はなさん(会社員・35歳)からの投稿 初めての体外受精で治療も思うように進まず、つまずくことばかりで 先が不安です。そもそも、体外受精を決心したとき、 どのような方法で進めていくかの説明は「ロング法で!」とだけ。 私から質問している感じで不満です。 お金も時間もかかることなので、細かく説明がほしいのですが……。
ロング法について
そもそも「ロング法」とはどういうものなのでしょうか?
蔵本先生 体外受精を行う場合、できるだけよい卵子を複数採るために、排卵誘発剤などで卵巣を刺激します。ロング法とは、卵巣を刺激する方法の一つ。このほかにショート法、アンタゴニスト法などがあります。どの方法をとるかは、年齢や体質、ホルモンの状態によっても違いますが、ロング法は世界で一番スタンダードな方法で、 37 歳までの人にこの方法は効果が高いといわれています。
体外受精予定の月経の前周期の高温相中期から点鼻スプレーをすることで排卵を促すホルモンである ※ LH分泌を抑え、排卵誘発剤の注射を用いながら、採卵(卵子を採取する手術)のタイミングを調整します。※LH:黄体形成ホルモン。
卵胞が適切に育った時点(卵胞径 17〜 18 ㎜)で、 ※ HCG製剤の投与に切り替えて排卵を起こします。多くの成熟卵を採取できるのがロング法の利点です。 ※HCG製剤:発育した卵胞を排卵させたり、黄体機能を維持・活性化させる、胎盤性性腺刺激ホルモン製剤。
ロング法がうまくいかない…
はなさんの場合、思うように治療が進まないようですが、どのような問題が考えられますか?
蔵本先生 いただいている情報だけでは、なんとも言えませんが、はなさんの場合、点鼻薬を始めても高温期にならず、※ノアルテンを服用後、予定日になっても生理が来ず卵巣が少し腫 はれている、ということですね。 ※ノアルテン:黄体ホルモンを補う薬。黄体ホルモンと卵胞ホルモンを配合した中用量ピル。主に月経周期の変更に用いる。
排卵しないときにスプレキュアな どの点鼻薬の使用を始めると卵胞が育つことがあり、卵胞が中途半端に育って、黄体ホルモンを投与してもなかなか生理が来ないことがあります。1回休まれたほうが良いでしょう。月経不順の方には、そのような症状が起こることがあり、ロング法はあまりおすすめしません。
月経不順な方には体外受精の前周期初期にピルを短期間服用して、残り3錠くらいになってから点鼻スプレーによってロング法を行う方法もありますし、アンタゴニスト法も良いでしょう。
また卵巣の状態は、自律神経やホルモンにも影響されるので、初めての体外受精で緊張されていたということもあるのかもしれませんね。
シッカリと理解してから治療
体外受精の説明をあまり受けていらっしゃらないのも、はなさんの緊張の原因ではないでしょうか?
蔵本先生 体外受精はステップも複雑ですし、精神的にも肉体的にもとても負担が多くなります。もちろんお金のことも。事前にしっかりと理解した上で、進めていく必要があると思います。
当院では、医師からの説明はもちろんですが、IVFコーディネーターという役割のスタッフがいて、納得いくまでじっくりと時間をかけて説明をしています。ご夫婦とも理解してから次のステップに進んでもらうようにしています。それでも、一度で理解することはなかなか難しいですよね。わからないことは、細かく聞くのが一番。
蔵本先生は、どういったことを説明されているのですか?
蔵本先生 まず、なぜ体外受精に進むのか、をしっかりと説明します。体外受精のメリットは、大きく2つあります。
一つは、受精したのかどうかがはっきりわかるということ。人工授精では受精の確認まではできません。受精が確認できるのは大きなメリットです。
もう一つは、卵の質がわかるので、複数の卵を採ることによって、一番可能性の高い受精卵を選ぶことができるということ。
そのため、人工授精に比べて、妊娠の確率は、4〜5倍になります。体外受精は、精神的・肉体的な負担は増えますが、その分メリットも大きいのです。
体外受精について、患者さんからよくある質問は?
蔵本先生 治療法、費用などについてはもちろん、薬の副作用、多胎妊娠のこと、助成金のこと、妊娠しなかった場合のことや、何回ぐらいトライするのがいいのかなど。よく質問されることは、あらかじめ伝えておくようにしています。
今の医師に不満がある場合にセカンドオピニオンを受けることについては、どう思われますか?
蔵本先生 不安や不満はできるだけ抱えないほうがいいので、セカンドオピニオンを受けられるのはいいと思いますよ。ほかの病院でもいいし、院内に何人か先生がいらっしゃるなら、別の先生に聞いてみる方法もある。
先生との相性もありますし。医師は1人ではないので、思い切ってほかに相談するのも一つの手ではないでしょうか。