【医師監修】渡辺浩彦先生 滋賀医科大学卒業後、京都大学 医学部附属病院産婦人科、大津 赤十字病院、済生会茨木病院な どを経て、1971年に父親の意思 を引き継いだクリニックを地元で 開院。不妊治療から分娩まで手 がけ、365日24時間の診療体 制をとる。O型、おとめ座。
栗の木さん(31歳 主婦) AIH直前に排卵誘発剤を使えば、 妊娠率が上がると聞きました。 先生には必要ないと言われてますが、 どう伝えたらいいでしょう。 できることは何でも試しておきたくて。
排卵誘発剤の使用シーン
自然排卵がある場合も、※ タイミング療法と平行して、排卵誘発剤を使うケースは多いのですか?
※タイミング(療)法:不妊治療の一つ。基礎体温や尿中または血中のエストロゲンや黄体化ホルモンを測定して、排卵 日の予測を行い、その排卵日前後に性交渉を行う。
つまり、AIH直前のHCGはあまり効果的とは言えません。
それよりも、むしろクロミッドやHMGといった、卵を作るための排卵誘発剤を使ったほうがいいと思いますね。
栗の木さんのように、周期的に排卵がある方なら、自然の排卵でしばらく様子を見てもいいんじゃないかな。
排卵誘発剤の種類
妊娠率を上げる排卵誘発剤には、他にどんなものがありますか?
渡辺先生 注射による誘発剤に抵抗があるヒトは、HCGの代わりに※GnRHaを使ってみるのもいいでしょう。
※GnRHa:GnRHアナログ。GnRHの作用を修飾させるようにした、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ化合物。
鼻にスプレーする点鼻薬で、脳下垂体に働きかけ、HCGよりもよりナチュラルな働きをしますし、自宅でAIHの時間に合わせてすることもできます。
HCGは1本注射を打つと半減期が長く、効いたままの状態が1週間ほど続きます。
これが刺激となって、卵巣が腫 は れるなどの副作用につながる場合もあります。
当院では、前半クロミッド、後半HMGで卵を育て、GnRHaでより自然に排卵させる方法をとることがよくあります。
HCGは使っても使わなくてもよいのですが、まだ卵が未成熟な時期に注射を打ってしまうと、黄体化非破裂卵胞になってその周期は妊娠が望めなくなります。使うタイミングが難しいのです。
より有効に誘発する為に
薬の組み合わせや、薬を使うタイミングが大切なんですね。
渡辺先生 そう、非常に難しい。ドクターの経験に左右される部分が多いのではないでしょうか。
うちのクリニックでは、クロミッド、HMG、自然のLHサージもしくはGnRHaの組み合わせで、よりナチュラルな状態で排卵までもっていく場合が多いですね。
排卵誘発剤で過剰に卵巣に働きかけるよりも、むしろ、人工授精を行うタイミングを徹底的に合わせていくことが大切だと考えています。