排卵誘発剤って、自然に排卵できない場合に飲むものなのでは?なぜ自然に排卵できるのに、飲まなければならないの?という疑問がジネコに投稿されました。確かに、ちょっと腑に落ちない気がしますよね…。この疑問を晴らすため、ジネコ取材部は京都の醍醐渡辺クリニックを訪れました。
排卵誘発剤は赤ちゃんになれる卵の数を増やすためのもの
取材部 先生、こんな疑問がジネコに寄せられたのですが。
渡辺浩彦先生(以下:先生) 自然に排卵しているのに、排卵誘発剤を飲まなければならないのはなぜ?という疑問ですね。
取材部 はい。先生も自然に排卵されている方に、排卵誘発剤を処方されることはありますか?
先生 ありますよ。
取材部 それは、どうしてですか?例えば、このパンさんの投稿では、病院でクロミッドを処方されたときに、「卵の質を上げるため」と説明されたそうです。クロミッドは、卵の質をよくするために飲むものなのですか?
先生 卵の質が良くなるからとかではなく、僕がクロミッドを処方するときには、「卵の数を増やす」ことが目的だと説明していますね。
取材部 数を増やすのですか?
先生 はい。クロミッドを飲むことによって。2~4個を目標に卵を育てるんです。
先生 実は、排卵された卵の全てが赤ちゃんの慣れる卵ではないのです。
取材部 そうなんですか?
先生 20代前半であっ手も、赤ちゃんになれるため後は2カ月に1個くらいで排卵されるかどうかなんです。年齢が上がるとその確率は下がっていき、30代になれば、3~4カ月に1回くらいの確率になっていきます。
取材部 赤ちゃんになれる卵と、なれない卵の違いは何ですか?
先生 卵の中で染色体がうまく分かれているかどうかです。年齢っともに、「最後のチャンス」が訪れる間隔が長くなっていくことが、妊娠しづらくなるといわれる原因です。
取材部 今のお話とクロミッドを飲んで卵の数を増やすことには、どのような関係があるのですか?
先生 クロミッドを飲んで、通常の1個から2〜4個へ卵の数を増やすことで、それだけ赤ちゃんになれる卵が含まれている確率が高くなると考えられます。
クロミッドは、卵の質をよくする?
取材部 なるほど! 今のご説明で、よくわかりました。投稿では、クロミッドについて、「卵の質が良くなる薬」と説明されているケースもあるようですが。
そのことをわかりやすく伝えるために「卵子の質が良くなる」とおっしゃっているのだと思いますよ。
取材部 もう一つクロミッドに関する気になるうわさについて伺いたいのですが……クロミッドを飲むと、子宮内膜が薄くなって妊娠しづらくなるということはあるのでしょうか?
先生 そのようにおっしゃっている方は、卵胞の成熟期を誤ってとらえているのではないでしょうか。普通、成熟卵胞径は 20 〜 23 mm なのですが、クロミッドを飲むと成熟卵胞径は 25 〜 30 mm を超えると 言われています。ですからその大きさまで成熟するのを待たなければ、まだ内膜だって薄いわけです。
クロミッドと流産について
取材部 そういうことなのですね。あと、このバンさんですが、クロミッドを飲むか飲まないか迷ってジネコに投稿されたとき、「卵子の質が悪かったから流産したのかも」と悩まれたそうです。
先生 流産のほとんどの原因は、先ほど触れた染色体の異常によるものです。決して、母体のせいではないので、自分を責めないで !!
取材部 とはいっても、女性は自分を責めてしまいがちです。
先生 そうですね……。目の前で泣かれると、責任を感じます。そういったお話をよーく聞いてお答えしているうちに、診察時間がつい長くなってしまうんです。
取材部 次に待っている患者さんに怒られませんか?
先生 みなさん、待ってくださっていますが、その点においてはご迷惑をおかけしてしまうこともしばしばです。
取材部 それは、患者さん一人ひとりを大切にされてのことだと、みなさんわかっていると思います。
先生 だといいのですが。僕にとって、一人ひとりの話が勉強になるんです。みなさんは僕の先生です。日々が勉強ですよ。