家族のカタチ(1)

不妊治療を通して大切なことに気がついた、夫婦がつくる家族のカタチ

「望んでいるのは妊娠することではなく、家族をつくること」

家族ってなんだろう?どんなカタチがあるのだろう?それは、縁あって結ばれ、つながっていく人それぞれ。家族の数だけ、みんな違う独自のカタチがあります。

「赤ちゃんを授かりたい」という願いを持ちつづけ、積極的に不妊治療に挑戦しつづけた、"まぐ♪"と"いも"。

数々のつらい経験、悔しい思いを通して、「望んでいるのは妊娠することではなく、家族をつくること」と確認した二人は、その先でかけがえのない存在・ぷー太にめぐり会います。

友達からいつしか恋人に…

「“いも虫”? 変なハンドルネーム!パソコンが趣味で、ウイルスも作れるって…? きっと相当なオタッキーだよね」

“まぐ♪”が未来の夫となる“いも”と初めて出会ったのは、当時頻繁に訪れていたインターネットのコミュニティサイト。仲間に誘われてそのサイトにひょっこり現れるようになった彼の第一印象は、決していいものではなかった。

そんな二人が実際に顔を合わせたのは、まぐ♪が31歳、いもが22歳の頃に開かれたオフ会。「いもは絶対、ニキビ面で小デブのオタク」と想像していたが、実物は、ちょっと照れ屋で、笑顔が優しそうな好青年だった。

その頃、まぐ♪にはつき合っている男性がいて、気のいいいもは、まぐ♪の相談役に。彼氏へのグチも、面倒くさがることなく一生懸命聞いてくれた。まぐ♪は、そんないもに徐々に惹かれていき、彼氏と別れ、二人はいつしか友達から恋人としてつき合うようになっていく…。

遠距離恋愛1年、その後、半年間の同棲生活を経て、二人は2002年に結婚。33歳と24歳、9歳という年齢差にもかかわらず、幸せな結婚生活がスタートした。

検査の結果は「異常なし」

「痩せすぎじゃない?」
その頃のまぐ♪は、友達や先輩にそう言われるほどの細身の体型で、体重は38㎏。
「生理はちゃんとあるけど、こんなに?せていたら妊娠に影響があるかも……」

33歳という少し遅めの結婚。すぐにでも子どもが欲しかったまぐ♪は、検査を受けることを決心。

「どこにも異常はありません、子どもの産める体ですよ、と言われれば安心だし…」

最初はそんな軽い気持ちで、不妊外来のある近くの病院を訪れた。

基礎体温はちゃんと二相に分かれているし、生理も毎月ある。プロラクチンというホルモンの値が少し高かったけれど、それも薬で何とかなる程度のことで、検査の結果は「異常なし」。一日でも早く子どもを授かりたかったまぐ♪は、さっそく医師の指導のもとでタイミング療法を始めた。

ところが、半年経っても妊娠する気配はない……。タイミングをとりながら子宮卵管造影検査もしたけれど、これも異常なし。では男性側の問題かと、いもの精液検査もした。精子の数が多いときと少ないときとバラつきはあるものの、決定的なマイナス要因とはいえなかった。

不妊治療を始めてから、まぐ♪はウェブ『ジネコ』の掲示板をはじめ、インターネットのさまざまな掲示板を訪れ、自分と同じ不妊症に悩む人たちと積極的に交流を持ち、不妊治療や女性の体に関する多くの情報を収集するようになった。

「卵の質って、35歳くらいからガクッと落ちるんですよね」
「この検査の結果は、ちょっとおかしいんじゃないですか?」
「他の人はこんな治療をしているみたいですけど、私はしなくていいんですか?」
診察のたびにまぐ♪は医師を質問攻めにして、焦る気持ちをぶつけた。

「人工授精をしてください」

「もうステップアップしてください」

人工授精をしたいと提案したのも、まぐ♪本人からだった。

「卵管も通っていたし、チョコレート嚢腫もない。生理も排卵もある。人工授精をすれば、きっと妊娠できるよね」

そんな自信と希望を抱いていたまぐ♪、そしていもも、ステップアップすることに対してはまったくといっていいほど抵抗を感じなかった。だが、1回、2回と人工授精を続けるうちに、その希望がみるみる薄れ、「なぜ?」という気持ちに変わっていく……。

そして、3回目も妊娠することなく、終了。結局、赤ちゃんではなく、ますます“疑問”を生む結果となってしまった。落ち込むまぐ♪を見て、医師はこんな提案をする。

「もし受精障害などが原因だった場合、この先、何回人工授精をしても難しいかもしれない。検査も兼ねて、体外受精をする方法もありですよ。ステップアップしたとしてもまた戻れるのだから、1回試してみてもいいんじゃないかな」

まぐ♪は即答した。

「はい。お願いします」

体外受精に関して知識があり、すでに心の準備ができていたまぐ♪に迷いはなかった。妊娠できない原因があるなら早くわかったほうがいいし、無駄なことを続けても時間とお金がもったいない。

「まぐ♪の年齢のことも考えて、子どもを授かるチャンスが“今”だというのなら、やれるだけのことをやろう」

いももそう言って、ステップアップに賛成してくれた。結婚後も仕事を続けようと思っていたけれど、もう仕事はせず、治療に専念しよう――。気持ちも生活も体外受精に向けて準備を整え、いよいよ治療がスタートする。

これで子どもができる!

「エコーではあんなに卵胞が見えていたのに…」

実際採卵したら、4個だけ。他の卵は全部空胞だった。そのうち受精したのは3個だったが、胚の分割速度も遅い。普通は2日目に4分割するはずなのに2分割にしかならないし、グレードもよくない。

「それでも、体外受精なんだから大丈夫!」

2個をおなかに戻し、祈るように2週間後を待った。結果は陰性――。

「これで子どもができる!今、体外受精したら産まれるのは○月頃で、友達の子どもと同級生かなぁ」

なんてウキウキと期待していた日々も、たくさんのお金も痛い注射も、一瞬で吹き飛んだ瞬間だった。このときのまぐ♪のショックは、今までタイミング療法や人工授精でダメだったときの比ではなかった。期待も希望も夢も、すべてゼロに……。

「私は妊娠できないんだ」

抑えても抑えても、まぐ♪の目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。

(つづく)

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