みさん(35歳)
顕微授精の保険適用上限回数を迎えたので治療終了するつもりだったが、2人目を諦めきれない気持ちがあり、自費で治療を継続するか迷っています。
凍結胚はもうありませんが、凍結精子はまだあり、治療する場合は採卵からスタートになります(今年採卵したときは、15個くらい採卵できたが受精卵になったのは2つだけでした)。
直近の治療周期では、子宮PRP療法を行った上で、プレマリンとルテウム膣剤、バファリンを使用して凍結胚を2個移植しました。
妊娠成立しましたが、5週で出血(茶色の少量から始まり徐々に量が増えた)が始まり、何とか心拍確認したものの8週で流産。血栓対策でバファリンを内服しても流産したので、仮に妊娠できたとしても妊娠継続は難しいと考えるべきでしょうか。
2人目を諦めるつもりで、染色体異常の検査をしなかったのですが、今ある情報を踏まえて今後の妊娠、妊娠継続可能性について意見を聞かせてほしいです。
また、現在165cm、45kgと痩せ型で少し動いただけで痩せていく体質であることも不妊に影響があるでしょうか?(内科的な健康診断も一通り行なったが異常なし)。
直近の治療周期はカロリー摂取量を増やして47kgまで増量して臨みました。
体質の影響についても聞きたいです。
山形大手町ARTクリニック川越医院の川越 淳先生に伺いました。

山形大学医学部医学科卒業。同大学院医学系研究科医学専攻修了。ベイラー医科大学分子細胞生物学分野にて研究。山形大学医学部産婦人科学教室にて助教、講師を経て、川越医院の院長に。大学院時代から一貫して、女性ホルモンの受容体を介した生体に与える影響について研究。アメリカ滞在中は、女性ホルモン受容体の作用を調節する因子の研究を行う。研究成果の1つは、基礎生命研究分野のトップジャーナルに報告。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
いただいた情報をもとにお答えします。実際の検査結果や治療経過の詳細が分からない部分もありますので、一般的な医学的知見を踏まえた説明となることをご了承ください。
1. 妊娠の可能性について
35歳という年齢や、これまでに妊娠・出産された経験があることから、今後も妊娠・出産できる可能性は十分にあると考えます。ただし、妊娠が成立することと、その妊娠が継続して出産に至ることは別の問題です。これまでに流産を繰り返されていることから、その原因について整理したうえで、今後の治療方針を検討することが望ましいと思います。
2. 不育の原因について
流産の原因として最も多いのは、受精卵に偶発的に生じる染色体の数の異常です。また、母体側の要因として、その頻度は少なくなりますが、抗リン脂質抗体症候群、子宮の形態異常、甲状腺機能異常などが挙げられます。
今回、血栓ができやすいと指摘され、バファリンを服用されていたとのことですが、どのような検査異常があったのかが重要です。例えば、抗リン脂質抗体症候群と診断された場合には、低用量アスピリンやヘパリンによる治療が妊娠継続に有効とされています。また、その他の凝固関連検査異常では、その結果に応じて治療方法が検討されます。
過去の不育症検査の結果と、流産時の胎児染色体検査の結果を改めて確認し、治療の必要性について担当医と相談されることをお勧めします。
3. 自費での治療継続について
35歳という年齢や、これまでの妊娠・出産歴を考えると、自費診療で治療を継続することも十分に検討できる選択肢だと思います。ただし、採卵から治療を再開する必要があることや、過去の採卵で15個程度の卵子が得られた一方、受精卵は2個であったことを踏まえると、今後の受精・胚発育の見通しについても確認することが重要です。
また、流産率の低下を目的とするPGT-Aという検査もあります。PGT-Aは胚の染色体数の異常を調べる検査で、染色体数に異常のない胚を選択することで、移植後の流産を減らせる可能性があります。ただし、PGT-Aによって治療開始から最終的に出産できる確率が高くなるとは限らず、特に母体側に流産の原因がある場合、その問題を解決するものではありません。
治療を継続するかどうかは、医学的な見通しに加えて、ご夫婦の精神的・経済的な負担も考慮して判断されることが望ましいと思います。自治体による助成制度についても確認してみてください。
4.痩せ型体質が与える影響について
身長165cm、体重45kgの場合、BMIは約16.5となり、低体重に該当します。低体重は排卵障害や妊娠中の合併症などに関係することが知られていますが、今回の流産の直接的な原因であったかどうかは判断できません。
体重を47kgまで増やされたことはよい取り組みだと思います。BMI18.5となる体重は約50.4kgですので、今後も無理のない範囲で、栄養バランスのよい食事と適度な運動を心がけ、徐々に体重を増やすことが望ましいでしょう。
ただし、体重を増やすことだけで流産を予防できるわけではありません。また、体重が目標に達するまで必ずしも不妊治療を中断する必要はなく、治療と並行して体調を整えていくことも可能です。
5. 染色体検査の必要性について
流産時の胎児絨毛染色体検査は、流産の原因が受精卵の染色体異常によるものだったかを調べるうえで有用です。検査によって染色体異常が確認されれば、偶発的な胎児側の要因が流産に関与した可能性を考えることができます。
検査を受けなかったことで、流産の原因を特定する手がかりは一つ少なくなりますが、それだけで今後の妊娠に向けた評価や治療ができなくなるわけではありません。これまでの検査結果を整理し、今後の治療方針をあらためて確認することが大切です。