寧々さん(38歳)
現在38歳です。
これまで顕微授精を繰り返していますが、昨年秋頃から連続して採卵しても、桑実胚や早期胚盤胞で成長が止まることが続きました。
今年4月にようやく5日目胚盤胞が1個できましたが、状態不良のため破棄となりました。
その周期はクロミッド+レコベル96単位を使用し、PICSI・IMSI・卵子活性化も行っています。
昨年はグレード4の6日目胚盤胞を移植しましたが陰性でした。
その後、G1の分割胚を移植して妊娠しましたが、9週頃で流産しました。
今後について、
・自分の卵子であとどのくらい挑戦するのが現実的か
・胚盤胞になりにくい原因として、何を調べたり見直したりするべきか
・主人も50歳ですが、DFI(精子DNA断片化)検査を受ける意義はあるか
・転院も視野に入れていますが、転院する場合はどのようなクリニックを選ぶべきか
について相談したいです。
これまでの治療歴を踏まえ、今の私の場合に優先して見直すべき点や、次にどのように進めるのがよいか、ご意見をいただきたいです。
よろしくお願いいたします。
東京ARTクリニックの小川 誠司先生に伺いました。

2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月に准教授に就任。2026年2月から東京ARTクリニックの院長に就任。藤田医科大学客員准教授。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
1.自分の卵子で、あとどのくらい挑戦するのが現実的か
AMHは同年代の平均と比較して低いものの、現在38歳と比較的お若く、過去には初期胚移植による妊娠歴(流産)もあることから、現時点でご自身の卵子による妊娠を諦める必要はないと考えます。
将来、後悔のない選択をしていただくためにも、引き続きご自身の卵子で治療に挑戦されることをお勧めします。
ただし、治療を漫然と続けるのではなく、例えば「40歳までを一つの目安とする」など、あらかじめご夫婦で治療の期限や目標について話し合い、一定の区切りを設けておくことも大切です。
そのうえで、治療経過や採卵結果を定期的に評価しながら、今後の方針を検討されるとよいと思います。
2.胚盤胞になりにくい原因として、何を調べたり見直したりするべきか
胚盤胞まで発育しにくい原因としては、卵子側と精子側の両方の因子が考えられます。
卵子側については、これまでの採卵結果を詳しく検討し、排卵誘発方法や使用薬剤、投与量などを見直すことが重要です。刺激方法を変更することで、採卵結果や胚の発育状況が改善する可能性もあります。
一方、精子側についても、通常の精液検査だけでは評価できない問題が存在する可能性があります。精子DNA断片化指数(DFI)の検査や、精索静脈瘤の有無などについても確認されるとよいと思います。
また、受精方法や培養経過についても振り返り、胚の発育がどの段階で停止しているのかを確認することが大切です。
3.ご主人も50歳ですが、DFI(精子DNA断片化)検査を受ける意義はあるか
一般的な精液検査の結果が正常であっても、精子DNAの断片化や酸化ストレスが高い場合があります。
特に、ご主人が50歳であることや、これまで胚盤胞への発育が思わしくなかった経過を考慮すると、DFI検査を追加で実施することは、検討する価値があると思います。
DFI検査で異常が認められた場合には、精索静脈瘤の有無を含め、男性不妊の専門的な評価を受けることをお勧めします。
ただし、DFI検査のみで胚盤胞への発育不良の原因を特定できるわけではなく、検査結果によって治療成績が必ず改善するものでもありません。
4.今後の治療方針について、優先して見直すべき点
まずは、これまでの採卵周期における排卵誘発方法や使用薬剤を見直すこと、そしてご主人の精子について追加評価を行うことが重要だと考えます。
また、過去に初期胚移植で妊娠されていることから、必ずしも胚盤胞移植にこだわる必要はなく、初期胚2個移植も有力な選択肢の一つだと思います。
初期胚移植を行う場合、例えば培養3日目で6細胞以上に発育していることに加え、タイムラプスによる観察で異常分割が認められないことなど、胚の発育状況を総合的に評価することを重視しています。こうした情報を参考に、移植する胚を選択し、治療方針を検討することが大切です。
5.転院する場合は、どのようなクリニックを選ぶべきか
転院をご検討される場合には、これまでと同じ治療を繰り返すのではなく、過去の治療経過や検査結果を十分に検討したうえで、新たな治療方針を提案してくれるクリニックを選ばれることが大切だと思います。
特に、排卵誘発方法の見直しや男性不妊の評価、初期胚移植を含めた柔軟な治療方針について相談できる施設が望ましいと考えます。
そして何よりも、治療方針について十分な説明があり、寧々さんご夫婦が納得したうえで治療を進められることが重要です。
不妊治療は、医師やクリニックによって治療方針や考え方が異なることも少なくありません。疑問や不安について遠慮なく相談でき、ご夫婦の希望を尊重しながら、一緒に治療方針を考えてくれるクリニックを選ばれることをお勧めします。