るんさん(29歳)
現在29歳、良好胚(5AA.4AA.6AA)を3回移植しても着床しませんでした。
着床不全等の検査や移植方法のご意見を聞きたいです(2個移植、CD138検査やTh1/Th2検査などの検査も気になっています)
浅田レディースクリニックの浅田 義正先生に伺いました。

名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、岡崎、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
着床不全という言葉に惑わされないでほしいと思います。着床不全というのはほとんどありません。PGT-Aをして正倍数性、つまり染色体の数の異常のない受精卵を3回移植すると95%以上、5回移植すると98%以上赤ちゃんが得られるというデータが海外には出ています。多く見積もっても着床不全は2%もないというのが科学的な真実です。
なぜ世の中に着床不全という言葉があるのかというと、よい受精卵を移植したのに妊娠しなかった、だから着床が上手くいっていない、このような認識で着床不全の治療が一生懸命研究されてきたためです。しかしこれは誤りで、胚盤胞を移植したら翌日あるいは翌々日には、ほとんどの胚が着床しています。ただ多くは妊娠判定まで育ちません。着床して妊娠が成立するという昔のテキストに書いてあることは、ヒトには当てはまりません。妊娠判定後に、発育が止まれば流産となるのです。
まずほとんどの胚は着床していると認識してください。昔は子宮が妊娠をコントロールしていると考えていたのですが、現在はそうではありません。子宮外妊娠は子宮内膜がなくても妊娠しますし、子宮内膜の様々な機能が全くなくても妊娠は成立することがその証です。他人の子宮に胚を移植し免疫状態などが大きく違っていても、胚の条件だけで同じように妊娠・出産できるため、代理出産が可能なことは科学的に証明されています。
先進医療で着床不全の検査がありますが、不妊治療が保険適用になりガイドラインを作ったときに、妊娠率を上げるエビデンスがないけれど、いまだに日本では実施している医師が割と多く、ひとまず再検討するため、先進医療に含められたものです。それらの検査は効果が証明されずまもなく消えていくと考えています。CD138やTh1/Th2についても妊娠率を上げるエビデンスはありません。
2個移植は、双子を授かるためではなく、何回か移植しても妊娠できず、1個ずつ移植すると2ヶ月かかるのを、2個一度に移植してどちらかが育てばよいという時間短縮のために行います。デメリットは双子になる確率がややあり、多くの方においては双子になっても問題ありませんが、なかには体力的な問題や、子宮を手術したことがある方など、双子になると困る場合もあります。
卵子、精子になるときには遺伝子が一旦変化します。卵子、精子1個ずつがきょうだいのように少しずつ遺伝子が異なり、受精卵になってもそれぞれの受精卵が1個ずつ全て違います。別の個体であると認識し、どの受精卵も赤ちゃんまで育つはず、と考えるのをやめましょう。なかなか妊娠反応が出ないときは、着床がおかしいのではありません。
20代であっても、体外受精における世界的な平均は、十数個の受精卵でやっと一人の赤ちゃんが生まれます。お二人の遺伝子の組み合わせが悪く20個、30個、40個と受精卵が必要なカップルもいれば、4個、5個でよいカップルもいます。カップルの遺伝子の組み合わせが早く妊娠できるかどうかを左右します。遺伝子は偶然に組み換わるため、赤ちゃんまで育つ受精卵の遺伝子の組み合わせにいつ出会えるかは、偶然の要素で決まります。移植の方法で妊娠率は変わりません。1個1個の受精卵は異なるため、同じ移植をしているのではなく、毎回違う個体になる受精卵を移植することになります。
多くの受精卵は途中までしか成長しないことを念頭に置いてください。染色体の数の異常がない正倍数性の受精卵を移植しても、移植当たりの妊娠率は6割前後です。あとの3~4割程度は遺伝子の組み合わせによって決まります。早く妊娠を望むのであれば、PGT-Aをして、染色体の数的異常の胚を省いて移植すれば、より早く妊娠に至ります。着床不全の検査や不必要な治療をすることなく、可能ならばその費用はより早く妊娠できるPGT-Aに使っていただきたいと私は考えます。