医師から指定されたタイミングの日。大切な日だとわかっているからこそ、それがパートナーの心理的な負担になってしまうことも。デリケートな夫婦の時間について、田村秀子先生にアドバイスをいただきました。
現在タイミング療法に挑戦中で、医師から指定された日にちを夫に伝えています。普段はとても仲が良く、夫婦の時間も定期的に設けているのですが、最近は大切な日に限って、行為の直前で夫の元気がなくなってしまい、最後まで進めないことが増えてきました。もともと少し繊細なところがある人なのですが、先日ボソッと「大事なときにできなかったらどうしよう」と不安を口にしているのを聞いてしまい、とても気になっています。日にちの指定が大きな心理的負担になり、余計に自信をなくさせているのではないかと心配です。上手な日にちの伝え方を工夫すべきか、それとも夫のプライドを守るために、あえて伝えないほうがいいのでしょうか。

京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991 年、自ら不妊治療をして双子を出産したことを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995 年に不妊治療部門の現クリニックを開設。
義務的な指定日ではなくお互いのゆとりを最優先に
医師からの指定日を伝えることで、ご主人がプレッシャーを感じて進めなくなっているのですね。子どもが欲しい気持ちは同じなのに身構えてしまう。実はこのような悩みをもつご夫婦は多いです。これは特別なことではなく、男性の非常に繊細な心理が関係しているのです。
タイミング療法は限られた時間を狙うため、緊張感が生まれがち。特に男性は、五感を使っ
て気持ちを高めていく生き物のようです。「はい、どうぞ」と受け身の姿勢で突きつけられたり、スケジュールだけで割り切ろうとすると、心に大きな負担がかかってしまいます。
排卵日が近づくにつれて、女性側が焦りから無意識に硬い空気をつくってしまうことも原因です。「絶対に逃せない」と殺気立つ妻から怖くなって逃げ出し、わざと帰宅を遅らせる男性もいるほど。ご主人の不安は、おまゆさんをがっかりさせたくない優しさの裏返しでもあります。日にちを義務として伝えるのではなく、まずはその繊細な気持ちを受け止め、お互いのゆとりを最優先に考えましょう。

女優になったつもりで心地よい誘いの台本を演じてみて
では、大切な日に向けて、具体的にどのように接していけばよいのでしょうか。夫婦の営みにおいて、パートナーがリラックスできる環境を作ることは共通の役割です。プレッシャーを感じやすい時期だからこそ、女性側の優しいエスコートや事前の「お膳立て」が大きな意味をもちます。
あえて正確な日付を伝えない、あるいは少し幅をもたせて伝える方法は有効です。「今週は少しゆっくり過ごしたいな」といった柔らかい表現に変えたり、自然な流れをつくったりすることで、心理的なハードルを劇的に下げることができます。
指定日だけを特別なイベントにせず、日常の延長線上で心地よいムードを演出してみましょう。お気に入りのお酒や食事を楽しんだり、仕事の疲れを労う言葉をかけ合ったりして、ご主人がリラックスできる状態をつくること。女性側が主導権を握るくらいの気持ちで、女優になったつもりで「心地よい台本」を書いて演じてみる。そんな心の余裕が、二人の絆をさらに深めてくれますよ。
二人に最も適したアプローチを選び直しても
最近は「注入法(シリンジ法)」のような市販アイテムを一時的な選択肢とするご夫婦も増えています。それも有効な方法のひとつですが、便利な道具に頼りすぎず、本来のあたたかさや大切な意思疎通を忘れずに、上手に取り入れるようにするといいと思います。
また、不妊治療ではよく「ステップアップ」という言葉が使われますが、私はこの表現があまり好きではありません。人工授精へ進むことは階段を上るようなものではなく、お二人の状況に合せて「より近道で、より負担の少ない新しい治療法を選び直す」ということだからです。もし、工夫を重ねてもプレッシャーが続くなら、一人で抱え込まずに一度専門医に相談してみてください。
デリケートなお悩みには仕事の疲労など身体的な原因が隠れていることも多く、専門的なケアによってスムーズに解決に向かうケースも多々あります。タイミング療法に疲れきってしまう前に、医師のアドバイスを受けながら、お二人に最も適したアプローチを新しく選び直してみる。医療の力を味方につけて、一番心地よい道のりで歩んでいきましょうね。
秀子の格言
焦る気持ちは横に置いて。繊細な男性の心に寄り添うあたたかいゆとりが大切です