【Q&A】顕微授精で卵が壊れた原因~佐藤幸保先生【医師監修】

amoさん(28歳)

先日PPOS法で採卵を行い、ゴナールエフ150単位、トリガーはブセレリン点鼻薬を使用し19個採卵できました。
顕微授精の10個は卵膜が弱く針を刺した際に壊れてしまい全滅となり、体外受精9個はすべて受精したものの、胚盤胞まで進んだのは1個(4BB)のみで、他は桑実胚で停止またはCのつくグレードで破棄でした。

この結果は卵子の成熟度や質に問題があったのでしょうか。また胚盤胞まで到達できないのは精子の影響も考えられるのでしょうか。特に、顕微授精で卵膜が弱く壊れてしまった原因について知りたいです。

また、トリガーについても疑問があります。HCGを使用すれば成熟度が改善した可能性はありますか。私はAMHが7と高めで19個採卵できているため、もしHCG注射をトリガーに使用したらOHSSが重くなっていたのではとも考えています。

採卵後は2度ピルで生理を起こしましたが、黄体化した遺残卵胞により現在3度目のピルリセット中です。この間に子宮鏡検査を受けたところ発赤とマイクロポリープが見つかり、ビブラマイシンによる治療、さらにラクトフローラの服薬と膣錠などで環境改善を行い、移植に備えているところです。

今後は凍結胚盤胞を移植し、その後は再度採卵でIVFを多めにする予定ですが、刺激法やトリガーの工夫、またこのお休み期間に行っている治療や準備のプロセスについてもご意見をいただければ幸いです。

ハシイ産婦人科の佐藤幸保先生に伺いました。

【医師監修】ハシイ産婦人科 佐藤幸保 先生
京都大学医学部附属病院および高松赤十字病院で体外受精など生殖医療を担当。患者さんそれぞれのニーズに応じて、個別化した不妊診療を提供することをモットーにしている。
資格:産婦人科専門医、生殖医療専門医、周産期専門医・臨床遺伝専門医

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

 

顕微授精で卵膜が壊れた原因について教えてください。

当院でも顕微授精で卵子に針を刺した際に細胞膜が破れて死んでしまう(変性といいます)ことはあります。原因として、卵子の細胞膜が弱くて穿刺に耐えられなかったことが考えられます。細胞膜を強くするためには卵子の質を上げることが必要です。それを達成させる確実な方法はありませんが、当院では漢方薬を試しています。ただamoさんの場合は、通常の体外受精で十分に受精できているため、顕微授精を実施する必要はありません。次回採卵をする必要がある場合は、すべてを通常の体外受精にすればよいでしょう。どうしても顕微授精が必要なら、PIEZO ICSIといって電気パルスを当てて細胞膜を破る方法(変性率が低いとされている)がありますが、すべてのIVFクリニックで行えるわけではありません。

卵子の成熟度や質に問題があった可能性についてご説明ください。

今回の採卵で得られた卵子は、通常の体外受精ですべて受精していますので、卵子の成熟度は問題なかったと考えます。ただ、細胞膜が弱かったことや胚盤胞到達率が低かったことを考えると、卵子の質はあまりよくなかったのでしょう。

胚盤胞まで到達できなかった原因として、精子の影響は考えられますか?

質のよい精子が少なかった可能性はあると思います。

HCGをトリガーに使用すれば成熟度は改善した可能性がありますか?

一般論として、ブセレリン点鼻薬トリガーで卵子の成熟度が不良な場合、HCGトリガーに変更する、あるいは、ダブルトリガー(ブセレリン点鼻薬とHCGとの併用)にする、ことで成熟度の改善が期待できます。ただ、今回の採卵で得られた卵子は、通常の体外受精ですべて受精していますので、その大半が成熟していたと考えられます。

現在の治療や準備プロセスに関するご意見をお聞かせください。

成熟卵子が多数採取できていますので、採卵方法は次回もPPOS法-ブセレリン・トリガーでよいと思います。amoさんの場合は、すべてを通常の体外受精にすることが重要です。マルチビタミン&ミネラルもすでに摂取されていますので、休み期間にやっておくべきことは特にありません。あせらずに、ストレスなく過ごされることが大切でしょう。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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