【Q&A】胚盤胞にならない。今後の治療法~田中温先生【医師監修】

お文具さんさん(39歳)

転院前は、胚盤胞にならないことはなかったが、今は採卵しても卵が胚盤胞になりにくいです。
病院では「普通の人より胚盤胞になるのが少ない。今後の妊娠も難しい」と言われました。
また「どこの施設でもやっていることは変わらない。転院したければ、してもよい」と言われ、匙を投げられている発言でした。

ステムセパレーターや、タイムラプスなどできることは全部しています。
転院することで胚盤胞の達成率が上がるということはありますか?
胚盤胞にならないのは、私の年齢だと言われていますが、年齢だと言われれば、どこへ行っても同じ結果なのでしょうか?
転院してからの方が上手くいっておらず、転院して1年結果が出ていない状況ですが、不妊治療を諦めるしかないのでしょうか?
院長からは「一般的には妊娠しているはずの採卵回数だ_とデータで示されました。

胚盤胞まで育つにはどのような方法があるのか、また、転院を検討すべき時期について教えていただきたいです。

田中先生に、お話を聞いてきました

セントマザー産婦人科医院 田中 温 先生 順天堂大学医学部卒業。膨大な数の研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院を開院。現在も研究と実験に精力的に取り組んでいる。日本受精着床学会副理事長。順天堂大学医学部客員教授。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

胚盤胞まで育つためには、まず採れる卵の数が重要です。年齢が39歳でAMHが0.38とかなり低めですから、卵の数を少しでも多く確保することが大切になります。そのためには、排卵誘発を工夫して、質の良い卵を取れるようにすることです。FSHも良いですが、私はHMGを使うのも有効だと思います。刺激の量も今より少し増やした方が良いでしょう。

最近注目されている方法として「PPOS法」があります。これはプロゲスチン製剤を使い、アンタゴニストと同じようにLHの過剰上昇を抑える方法です。アンタゴニストのように毎日注射を打つ必要がなく、薬代も安いのが利点です。世界的にも注目されている手法なので、ぜひ主治医に相談してみてください。もし主治医が知らないようであれば、転院も考えた方が良いかもしれません。

年齢が上がると胚盤胞まで進む確率は下がります。これは卵の数と質が関係しているからです。ただし、極端に多く採るのも質が落ちるため、20個程度が理想的です。今回のAMHではそこまで採れないかもしれませんが、なるべく数を確保できる刺激法を選んでください。

これまでの治療歴を見ると、次のステップとしてはPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を強くお勧めします。流産が複数回あるケースでは特に有効です。費用はかかりますが、妊娠率や流産防止の効果が期待できます。

転院を検討する場合には、そのクリニックに「生殖専門医」や「臨床遺伝専門医」の資格を持った医師がいるかを確認してください。PGT-Aを行うには、日本人類遺伝学会の専門医資格が必要であり、知識や経験の差が治療結果に直結します。

結論としては、
●卵の数を増やす刺激法(HMGやPPOS法の活用)
●PGT-Aの導入
●専門医資格を持つ医師への転院
これらが、今後の治療を進める上での有効な対策になると考えます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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