【Q&A】誘発法で卵の質は変わる?~藤本先生【医師監修】

ぽむさん(33歳)

ショート法で11個採卵できましたが、2つは未熟卵、1つは変性卵、1つは異常受精のため破棄しました。
残り7つのうち2つをグレード2初期胚で凍結しました。
残り5つのうち3つが胚盤胞になり、5日目4AB、6日目4BB、6日目4ACを凍結しました。
4AB胚盤胞を移植後に流産、4BB胚盤胞を移植するも妊娠しませんでした。

初期胚の移植も考えていこうと思いますが、なかなか思うような結果が出ず、主人が46歳、自身のAMHが0.9と低く、このまま妊娠できないのではないかと不安で落ち込んでいます。

現在のクリニックで治療をもう少し続けようとは思いますが、次の採卵に向けて転院も視野に入れています。
地方に住んでいるため、近隣にPGT-AやPICSIを実施できる施設がなく、次の採卵から都心のクリニックに変更を考えています。
東京、大阪、名古屋には新幹線で2-3時間ほどで通うことになりますが、現状の通院でも負担に感じており、できるか不安です。

遠方からでも通院はできるのでしょうか?また、初診はどのタイミングで行くべきか教えてほしいです。
また、次に採卵を行う場合、卵巣刺激法を変更することで卵の質の改善は期待できますか?

【医師監修】さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

はじめに、現在採卵を1回、胚移植を2回行っている段階ですが、この段階で卵子の質が良くない等の判断はできるものではありません。
また、流産を予防する方法や薬はありません。一定頻度で起こるもので、年齢とともにその確率は上昇します。そして、残っている凍結胚があることを踏まえると、現在通院している病院に対して何か納得のいかないことや不満な点がないのであれば、無理に遠方の病院に転院せずに今の病院での治療で問題ないのかなと考えました。

そう考えた理由の一つ目は、転院した場合には凍結胚が残っている状況では保険下での体外受精のための排卵誘発・採卵はできなくなります(自費診療では可能ですが、、)。

二つ目は、もし凍結胚を移管(今の病院から新しく通院する病院へ輸送すること)する場合には移管に伴う高額な費用が発生することになります。

三つ目の理由は先にも記載しましたが、2回の胚移植だけで初回の採卵における卵子の質が良くないという判断はできないという理由からです。そもそも『胚の質』という言葉はネットや様々な媒体でよくでてきます。そして、『胚の質を上げる』という言葉もでてきますが、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、胚の質は上げられないと考えています。胚(卵子)の質は胚ができた時がMAX(最大)で体外受精の様々な操作の中で下がっていきます。そして病院では胚の質を少しでも下げないように様々な対策を行って胚を管理していきます。そして基準を満たす胚を得ることが出来たのちに移植をしていくわけです。あとから、この薬を飲めば胚の質を上げることが出来るというものではありません。

そして、2回の胚移植を行っていますが、まだ2回でもあること、そして一度は妊娠していること(残念ながら流産に至ってはいますが)を考えれば、残っている凍結胚でも十分に妊娠できる可能性があると考えます。ここまでが私の見解です。それでも、遠方のクリニックへの転院を考えるということもあると思いますので、その場合の話を書いてみたいと思います。

遠方のクリニックに通院するのはとても大変です。現時点で近隣の通院でも負担に感じているとのことなので、ぽむさんのコメントにも書いているように通院は通うだけでとても労力というか負担を強いられることになります。既に不妊治療をされているのでお分かりかと思いますが、複数回の通院は必須で、次回受診日も正確には受診してみないとわかりません。その中でよく通院回数を減らせないかという提案を受けることもありますが、それは結局は自分にとってマイナスになることとなります。特に体外受精治療の場合には複数個の卵胞発育を目指すために繊細な発育管理が必要となるからです。
遠方の病院への通院はもちろんできると思いますが、それなりの覚悟が必要であると言えるでしょう。

そして初診のタイミングですが、私はいつでもよいと思います。やはり転院に伴い必要な検査もでてくると思います。病院によっても必要な検査は異なりますので、初回受診日はどのタイミングでかかっても構わないかと思います。初診でかかってすぐには治療を開始できないからです。
また、前述していますが誘発方法に限らずですが誘発方法を変えることで卵の質を上げることはできないと思います。考え方が少し違いますが、卵の質を上げるというよりは、ゴール(妊娠)を目指すためのアプローチを変えるという意味では誘発方法を変えるというのは選択肢には出てきます。ある方法でゴールを目指してうまくいかない場合に、次回は違うアプローチを考えるというものです。それがより良いからという意味ではありません。この方法でゴールを目指したがうまくいかなかった場合には、次には別の方法でゴールを目指すということです。変えるものは誘発方法に限らず、使用する注射剤を変える、排卵トリガーから採卵までの時間を変える、ご主人の禁欲期間を変える、等々色んなことを変えてみる場合があります。そうすることでよい結果が得られる場合もあります。

最後になりますが、確かにAMH:0.9という値は、ぽむさんの年齢から考えて低い数字と言えますが、あくまでも【卵子の数】を示す数値であって、【卵子の質】を示す数値ではありません。卵子の質はAMHの高低によらず、年齢で決まります。そして初回の採卵ではAMHからすると多めの卵子をとることができているようです。
不安になるのもわかりますが、ポムさんの年齢はまだまだ十分にチャンスのある年齢ですので、前向きに頑張ってほしいと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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