繰り返す稽留流産。移植に進むより原因究明が優先?

相談者 :しいさん(38歳)
▶︎稽留流産後の移植と貧血治療のタイミング
バイアスピリン®を内服し、4 回目の移植を行いましたが稽留流産となりました。あと2 回、保険での移植を行うか、それとも着床前診断などの検査を検討したほうがよいでしょうか。また現在、貧血の治療中で、値は上昇していますがHb7.7g/dl です。今後採卵も必要となりますが、正常値に戻ってから行うべきか、年齢を考えるとすぐに採卵に進むべきか悩んでいます。ネットの情報で「貧血は卵子の質を悪くする」とあったので心配です。
【医師監修】蔵本ウイメンズクリニック 蔵本 武志 先生
久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990年オーストラリア・PIVET メディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。

稽留流産を3回されています。

蔵本先生● 流産の原因の約7割は受精卵の染色体異常といわれています。繰り返し流産をされているので、何が原因なのか一度調べてみられるのがいいと思います。ご夫婦の染色体検査を保険で行えます。どちらかに染色体の構造異常が認められたら、自費になりますがPGT -SR(着床前胚染色体構造異常検査)を行います。また、先進医療となりますが、子宮環境を調べる子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)をおすすめします。子宮内膜の細菌叢に異常や慢性子宮内膜症の病原菌があると、着床不全や流産の原因となるからです。もし異常が検出された場合は、抗菌薬による治療を行ってください。善玉菌が90%未満と少なければ、ラクトバチルス製剤を投与して、子宮内細菌環境の改善をされるといいでしょう。子宮鏡検査(保険適用)もされるとよいと思います。
TSHが高い「潜在性甲状腺機能低下症」も流産の原因となるため、甲状腺機能検査をまだされていないようであればご検討ください。さらに、自費診療になりますが、細胞性免疫を司るヘルパーT細胞のTh1が高いことも着床不全や流産の原因になるといわれているので、Th1/Th2の測定を行い、数値が高ければ免疫抑制剤であるタクロリムスを投与してもらってください。なお、バイアスピリンRの服用は継続されたほうがいいでしょう。

今後、移植と着床前診断(PGT ‒A)のどちらを優先するべき?

蔵本先生●先ほどの検査で異常が見られなかった場合は保険診療をいったん中断し、自費診療になりますがPGT ‒Aを行い、染色体数の正常な胚盤胞を移植するとよいと思います。異常が見られた場合は、その治療を済ませてから、あと2回保険でARTを行い、出産できなかった場合に再度PGT ‒Aを行うのもよいと思います。

貧血は今後の治療に影響しますか?

蔵本先生● Hb 値が低いと卵巣や子宮への血流も低下し、酸素を末端の細胞まで十分に運ぶことができなくなり、卵子の成熟にも悪影響が出ると考えられます。多くは月経での出血による貧血ですので、鉄剤を投与すれば貧血は改善していきます。医師の指導の下で鉄剤を服用し、バランスの良い食事を摂るなど治療に取り組み、Hb 値が11g /dl以上まで改善してから次の採卵に進むことをおすすめします。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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