【Q&A】男性不妊が原因で流産を繰り返す?~加藤 徹 先生【医師監修】

Mさん (31歳)

2回目の流産になりました。
昨年は自然妊娠しましたが、8週目で稽留流産になりました。
その後、何か問題があるかもと不妊クリニックを受診して不妊検査をしたところ、男性不妊が見つかりました。人工授精を2回して妊娠できなかったので顕微授精にステップアップし、1回目の移植はホルモン周期で妊娠。
順調に育ち、不妊クリニックを卒業した後に産院で妊婦健診を受け、その時は元気でしたがその次の妊婦健診で成長しておらず「心拍が見えない」と言われ、流産になりました。
2度目なので不育症なのかなと思うと同時に、メンタル面がキツイです。
男性不妊が原因で流産を繰り返すという可能性もあるのですか?
Kobaレディースクリニック 加藤 徹 先生にお聞きしました
【医師監修】Kobaレディースクリニック 加藤 徹 先生
兵庫医科大学大学院卒業後、兵庫医科大学病院周産期センター長や医局長を歴任し、令和4年よりkobaレディースクリニック副院長として従事。令和6年6月同院長就任予定。日本生殖医学会認定生殖医療専門医、指導医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

2回の流産の既往に関して

不育症の可能性は十分あります。不育症の原因としてまず考えられるのは、胎児の染色体異常です。流産手術の際に絨毛成分を使った染色体検査を行えばはっきりします。
また、母体側に原因がある事もあり、抗リン脂質症候群や子宮奇形等が挙げられます。これらに関しては不育症診療を行なっているクリニックで詳しく調べる必要があります。また、特殊な場合でご夫婦のどちらかに染色体異常が認められる場合もあります。不育症につながる有名な染色体異常として均衡型転座という異常があります。ご夫婦のどちらかに認められる場合は流産率が通常より高くなります。採血で染色体の検査をすることが可能です。

男性不妊が流産を引き起こす可能性について

男性不妊自体は、精液所見にもよりますが自然妊娠率や受精率の低下を招く事はあります。もともと自然妊娠が出来ている時点で精液初見はそこまで悪くないと考えます。
今回顕微授精で受精は成立していますし、結果妊娠しています。男性不妊だから流産したのではなく、流産の原因の多くは胎児側の染色体の異常です。胎児の染色体異常は卵子側に原因がある事も多いです。染色体の異常がある精子や卵子でも問題なく受精卵になるので、結果として移植をして途中で流産とります。肉眼的な受精卵のgrade分類だけでは完全に染色体異常のある受精卵を見つけることは困難です。

以上を踏まえると、当院では以下のように考えます。

まず、これ以上流産を繰り返さないように次回の妊娠前に不育症の検査を一通り行い、原因がわかればそれに対して対処します。流産に伴う心理的ストレスに関しては、原因が分かれば軽減できると考えます。
精子側へのアプローチとしては、授精の際に先進医療であるZyMot等を併用してみる事を提案します。
染色体異常の無い受精卵を選択して流産率を下げる目的で、着床前胚異数性検査(PGT-A)を行なってみる事も選択枝として挙げられます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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