【Q&A】ダイエットからの無月経、治療方針は?~髙木先生【医師監修】

ハルさん(34歳)

ダイエットをしてから無月経になってしまい数年経ちます。
無月経になってからは低容量ピルを処方してもらい生理が来るようにしていましたが、今年から妊活を考えピルを辞めました。

通っているレディースクリニックの先生からは温経湯という漢方を処方され、「それでも生理がこない場合は年齢的にも不妊治療を行うのも良いと思う」と言われました。

生理はやはり来ず、不妊治療を考えていますが、費用も不安ですし、手術のような時間や負担がかかる大変なイメージがあり、どこから始めればよいか悩んでいます。

漢方でだめだった場合の次のステップとしてできることがあれば教えていただきたいです。
よろしくお願いします。

津田沼IVFクリニックの高木先生に伺いました。

津田沼IVFクリニック 院長 髙木 亜由美 先生
千葉大学医学部附属病院、千葉メディカルセンターなどで不妊治療に従事。特に千葉大学医学部附属病院時代に、専門の生殖医療や内分泌医療のほか、不妊の患者様の腹腔鏡手術や子宮鏡手術等も数多く経験する。その後、2024年9月より津田沼IVFクリニックの院長に就任。それぞれの女性にあったきめ細かい医療を目指す。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●ハルさんが無月経になった原因について、可能性が高いと思われるものは何でしょうか?

①体重減少性無月経の継続、または、②もとからの月経不順(多嚢胞性卵巣症候群などの存在)を考えます。
ダイエット前までは月経が順調であったと想定すると①を考えます。

●漢方薬の温経湯が生理を誘発するメカニズムと、ハルさんの状況との関連性について教えてください

温経湯は視床下部-下垂体系に働きかけ、排卵誘発作用や月経周期の回復がみられる作用があるようです。
①体重減少性無月経の場合、視床下部から下垂体へのホルモン分泌の命令が出にくい状態ですので、その命令系統に働きかけて卵胞発育および排卵作用が改善する可能性を期待しての処方と考えます。
下垂体から出るホルモンのバランスを整えるという意味では②多嚢胞性卵巣卵巣症候群の場合でも排卵の改善がみられる作用もあることから、①②の病態どちらでも効くことが期待されます。

●ハルさんが漢方で生理がこなかった場合、次に推奨される治療方法は何でしょうか?

体重減少性無月経であるとすると、まずは、貧血や低栄養状態の悪化を防ぐために、まずは適切な食事により標準体重の90%までの体重回復を優先させます。
体重が改善してからの治療法としては、「カウフマン療法」が広く行われています。カウフマン療法とは、正常の月経周期や女性ホルモン環境を人工的に作り出すホルモン療法です。具体的には、エストロゲン製剤を数日間投与した後、さらに数日間エストロゲン製剤およびプロゲスチン製剤を併用投与し、休薬時に月経様の出血を起こさせます。この一連の流れを数か月間行うことで、治療後の「視床下部-下垂体-卵巣のホルモン動態」の正常化を目的としています。
しかしながら、体重が戻ってもなかなか自力の排卵が確立するのは難しい、または時間がかかることがあります。その場合は、不妊治療として排卵誘発を行う必要があります。内服での排卵誘発が難しい場合は、注射(hMG-hCG療法など)での治療となり、体外受精も考慮されます。

●不妊治療の一般的な流れと、それにかかる費用の目安について教えてください。

ホルモン値、甲状腺機能などを含めた採血、卵管造影、精液検査といった検査をして現状を把握することが必要です。
特に問題がなければ一般治療(タイミング、人工授精)、状況によっては体外受精に進みます。どちらも保険治療となりますのでクリニック間での差はさほどないと思いますが、お問い合わせ、受診していただくのがよいと思います。

●ハルさんの年齢や無月経の状況を考慮に入れた上で、最も適切な不妊治療の方法について、先生の見解をお聞かせください。

どの病態の無月経であっても、早く受診することが望ましいです。もし体重減少性無月経が遷延している場合は自力の排卵に時間がかかることが多く、はやめの介入が必要です。1年1年が大事な年齢になりつつありますので、すみやかに治療を開始することをお勧めしたいです。

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