まずは明るく笑いに変えて。いい雰囲気をつくりましょう! 田村秀子先生の心の玉手箱Vol.47

タイミングの日を伝えても「残業で忙しい」「飲み会だから無理」と断るのに、ステップアップには消極的。そんな夫に「私はこんなに頑張っているのに」とモヤモヤが募るばかり。
田村秀子先生にお聞きしました。

まろさんからの投稿
水曜日は「飲み会で無理」と言われ、木曜日は「残業で疲れているから無理」。私は仕事の合間に病院に通って注射したり、周期に合わせて運動や食事を調整したりしているのに、年に何回かしかない大切なタイミングを夫の都合で失って悔しくて悲しくて、気持ちを伝えながら泣いてしまいました。なるべく早く授かりたいとお互い認識していたはずなのに、どこか夫は他人事。指示された日にタイミングをとるのがプレッシャー、でもステップアップの話には「早くない?」。クリニックで排卵を確認する予定でしたが、タイミングとれなかったのに行く必要ある?と思ってしまいます。最近は妊娠・出産している友人が多く、SNS を見るのが怖いし、友人や親にも話せず孤独を感じます。
田村秀子婦人科医院 田村 秀子 先生
京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991 年、自ら不妊治療をして双子を出産したことを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995 年に不妊治療部門の現クリニックを開設。

「私は頑張ってる」のは確かでも実は、男の人も大変です

病院に通って痛い注射を我慢して、薬も忘れずに飲み、生理と排卵のタイミングをちゃんとチェックして。妊活において女性が頑張らなきゃいけない場面、とても多いですよね。病院で「この日」と言われれば絶対その日しかない!と思うだろうし、実際1回逃したら、次の周期まで1カ月チャンスを待たないといけない。その大変さはもちろんわかります。でも実は、男の人もそれに応えるのは大変なんです。
五感を駆使して勃起させて射精しなきゃ、というのは、おそらく女性が思う以上に相当なプレッシャー。しかも「この日」と限定された日にセックスに至ったとして、うまく射精できなかったら自信なんてなくなってしまいます。排卵日が近くなると気が重くなって飲み会や残業に逃げる人、意外と多いんですよ。私は「この日だけ」とピンポイントにならないように、「だいたいこのあたりの何日かで頑張ってみて」と幅をもたせるようにしています。

男性のプライドを尊重したうえでつらい日には話を聞いてもらいましょう

人工授精を渋るのも、きっと男性のプライドで「自分が妊娠させた感じじゃない」「俺ってそんなに役に立たないの?」と感じるからかも。「ステップアップ」という言葉自体に抵抗があるのかもしれません。「そんなことで⁉」と思うかもしれないけれど、それはいったん尊重してあげて。「人工授精はあくまでも人工的子宮内精子注入法で、自然な妊娠なんだよ。タイミングを合わせにいく方法で、注射器が代わりにやってくれるだけだよ。精子を各駅列車じゃなくて特急で運ぶ方法、って先生が言ってたよ」くらいな感じで、軽くとらえてもらえたらと思います。
もしタイミングがとれなくても、受診してくれるとうれしいですね。水曜日って言ってたけど、排卵しているかどうか確認したらまだだった、今週中もう1回行けるよ!ということもよくあります。SNSで見たくない情報が目に入っちゃうし、親にも友だちにも相談できなくてモヤモヤして落ち込んでしまうなら、病院で注射してもらいながら看護師さんに聞いてもらってもいいんです。そういう雰囲気をつくるのは病院の役目。私の病院でもスタッフに泣きながら心の内を打ち明ける人がいます。言いやすいところで吐き出してスッキリしましょう。

その気にさせるのは女の仕事明るくさっぱり笑いに変えてみて

どうしても「私ばっかり努力してる」という気持ちになったら、そのまま伝えるのは悪いことではありません。ただし、できるだけ明るくさっぱりと。二人の子どもだから責任も苦労もフィフティフィフティ、そう思いがちですが、妊娠・出産はやはり女性の体で起こること。そこは開き直るしかないです。男の努力は一発だけ。でもその一発が大変。だからそのうえで「私も頑張ってるからちゃんと支えてね」と笑って伝えてみて。
正論をぶつけて追いつめるんじゃなくて、「もー! 今度無理って言ったら豪華なランチ食べに行くからね!」「洋服1枚買うからね!」くらい、笑顔で切り替えるようにしていくと、だんだん家の中の雰囲気も良くなっていくと思うんです。それでたまにボディタッチして「おっ、なんか今日は雰囲気違うな」とその気になってもらう。「裸になるまでは女の仕事、裸になってからは男の仕事」。明るくさっぱり、笑いに変えていきましょう。

秀子の格言

正論をぶつけて追いつめるよりもまずは明るく笑いに変えて。いい雰囲気をつくりましょう!

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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