【Q&A】PGT-A受けるべき?~浅田先生【医師監修】

ほわたまさん (30歳)
不妊治療に専念するため、9月~3月まで仕事を休職しています。
7回目の胚移植が陰性で終わり、現在生理待ちです。これまでグレードのいい卵を移植しても、着床しません。
ただ、7回目の移植は下腹部痛があり、手応えを感じていましたが、裏起毛のスウェットを着て寝た翌日から妊娠初期症状が全く無くなり、腹部を高温にさせてしまったからだと、卵ではなく私自身に原因があったように思います。
残り4つの4ABの卵があり、今後のことについて悩んでいます。①1個ずつ移植する。
②2個ずつ移植する。
③凍結済みだがPGT-Aに出して、正常胚を移植する。

現在通院している病院の救済プランを適用していただき、自費の移植も10万円以下で行うことができるので、移植は金銭面で負担は少ない現状です。ただ、転院を一度もしたことがないので、全部だめだったら転院予定です。

今後、どんな検査(再検査)をやるべきか、どんな移植をするべきか、悩んでいます。よろしくお願いします。

浅田先生に聞いてきました

【医師監修】浅田レディースクリニック 浅田義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

質問者さんがPCOSなのは間違いないと考えます。そもそも着床しないのではなく、胚盤胞は移植した翌日か翌々日には着床します。妊娠反応陰性は、妊娠判定までに胚の発育が止まったということを意味します。稽留流産は、妊娠判定陽性後に胚の発育が止まったということです。他の動物と異なり、ヒトの場合多くの受精胚は、途中で発育が止まるのは普通のことです。その中で発育が上手くいった少数の受精胚が赤ちゃんまで育つ、という発想に切り替えてください。多くの胚は育たないのが当たり前と捉えた方がよいでしょう。
下腹痛があったにも関わらず妊娠反応がなかったということですが、症状だけで妊娠を判断することは難しいため、妊娠判定が必要です。症状は当てにならないものです。今後の選択として何個移植がよいかとのご質問ですが、それよりも、結果の出ない移植を避けるためにPGT-Aをぜひ実施するべきだと考えます。

転院先を選ぶポイントですが、PCOSの場合、以下のポイントを満たしている施設を選ぶとよいでしょう。

①PCOSの方でも成熟卵をきちんと採れること
副作用がない調節卵巣刺激ができること
培養室の受精操作の技術が確かであり、胚盤胞まで育てられること
④生検などのPGT-Aの技術を持っていること。

これらの条件をすべてクリアしている施設を選んで受診していただきたいと思います。

検査について、例えば慢性子宮内膜炎や子宮内フローラは、腟の健康には役に立つかもしれませんが、妊娠率を上げるというエビデンスはありません。子宮内膜スクラッチ法や、SEET法、子宮鏡で見て抗菌剤を使う方法についても、妊娠率を向上させるというエビデンスはありません。これらは、世界的なガイドラインですべて推奨しない、とされています。そのような検査に費用を使うのではなく、PGT-Aに使ってください。
適切にPGT-Aができる施設で正しい不妊治療を受けていただきたいと思います
病院の救済プランと書かれていますが、必要のない検査で多くの費用を費やす必要があったのに救済プランというのが私は納得しかねます。

今のところ先進医療に分類されているものは十分なエビデンスがないものです。そのため保険診療として適用できず、やめてもよいけれど今やめると反対の声を上げる先生が多くいらっしゃるので、とりあえず先進医療に一時的に置いただけのことです。これらはやがて消えていく検査であり、治療法だと考えてください。先進医療で有効なのはタイムラプスだけですが、タイムラプスは培養器の進化系であり、新しい治療法ではありません。それで治療の成績がよくなるのなら今までの培養の技術が低かったことを証明することになります。
検査や治療の捉え方は千差万別ですが、上記をご参考になさってください。

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