まえさん(47歳)
現在、生理2日目にHMGアスカ300を1回と生理2日目から5日間クロミッド1日2錠を飲んで、10日目位に採卵しています。
ホルモン値は上がっているのに、卵が2個程度しか見つけられず、採卵は1個か2個です。
ホルモン値は1200?以上あり、医師からはいつも「もっと卵があるはず」と言われますが、10日目には一番大きい卵が23mm程度になってしまい、ほかの卵を待てずに採卵します。
今周期は注射と薬を飲むタイミングを生理2日目から5日間クロミッド、6日目に注射に変更したのですが、今回も9日目には卵2個のみ見えていて、両方23mm程度になったので、11日目に採卵となりました。
もっと卵が取れる方法、また質をあげる方法はありませんでしょうか。
また採卵は1〜2個採れて、それを新鮮胚の初期胚で移植しているのですが、着床すらしません。胚盤胞まで育てた方が良いのでしょうか。
ホルモン値、内膜の厚み共に問題ないので新鮮胚移植が良いと聞き、毎回新鮮胚移植なのですが、凍結して移植の方が可能性は上がりますでしょうか。
【医師監修】さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
いくつか大事な話がありますが、はじめに、
卵がたくさん取れるか?取れないか?は年齢ではありません。
AMHにかかってきます。
AMHが高ければ多くの卵が育ってきますが、
AMHが低ければなかなか多くの卵が育ちません。
まえさんのAMH: 1.25 という数字ですが、これはいつ行ったものでしょうか?AMHの値は年齢と共にどんどん低下していきます。もしこの値が6か月以上前に測定したものであるなら、今の値はすでに1.25ではないとも考えられます。
また、どんな検査にも必ず誤差があります。本当のAMH(卵巣予備能力)はもっと低いのに、少し高めに出てしまう場合、もちろん逆の場合もあります。まえさんの年齢を考えるとAMH: 1.25は年齢に比して高い値と言えますが、前述のような場合には思った数が育ってこない場合があります。そこの誤差をきちんと評価することはとても難しいのですが、超音波でのAFC検査や、FSHのホルモン値などもふまえて総合的に判断することになります。
まえさんの年齢を踏まえれば、もし年齢平均的な卵巣予備能力であった場合には発育卵胞は1~2個になるものと考えられます。そして卵巣予備能(AMHの値)低下の自分でもわかる一番わかりやすい症状は、月経周期が短くなるというものです。月経周期が短くなる理由は、排卵までの時間が短くなることに起因します。卵巣予備能が低下してくると、FSHが高めになるため、卵胞の発育が以前より早くなります。そして排卵日が以前より早く訪れることで、妊娠しなかった場合に発来する月経も早くなります。月経周期が短くなるという現象は卵巣機能低下のサインの一つと言えます。
よく『卵子の質を上げる』という言葉を聞きますが、私自身は卵子の質を上げることはできないと考えています。卵子の質は年齢で決まるからです。一方で卵子の質を下げることはいくらでもできるわけです。そのため、私たちは卵子の質を上げるというよりも、いかにして『卵子の質を下げない』 ということのために色々と努力することになります。特に体外受精で育てて採卵した卵子の扱い方ひとつで、卵子の質は下がっていくので、いかに卵子の質を下げないようにするのか?を考えて様々な事をしていくことになります。 そして多くの卵胞が育ち、多くの卵子が取れるかどうかは、卵巣予備能力にかかってきます。
同じ注射を同じ回数打っても育ってくる卵胞数は卵巣予備能(AMHの値)で異なってきます。15個育つ人もいれば2個しか育たない人もいるわけです。できれば皆に多くの卵子が発育することを望んでいますが、それはかないません。卵子は薬で増やすこともできませんし、誰かからもらうこともできないからです。そのためAMHがとても重要になるということになります。
不妊治療においては、何か妊娠の妨げになる障害があった場合には、それを修正することで下がった妊娠の確率を改善できる項目もあります。一方で何か障害が分かったとしても修正できない要素/項目もあります。それが 『年齢』 と 『卵子の数(AMH)』 になります。私もよく話していますが、これに関しては出た結果のその数字で頑張るしかないと説明しています。年齢については若返りできる薬はないんだよね、、、とお話ししています。
全ての人に通用する治療法はありません。そして、この方法は皆に良い!という方法もありません。ある方法で挑戦してだめなら、他の方法で挑戦してみるというのが大事です。うまくいかない方法を、だらだらと続けていくことはよくありません。そのため、使用する薬や注射などは施設や先生によって異なりますが、うまくいかない場合にはいろいろな方法を試していくことが望ましいかと思います。このことは初期胚での新鮮胚移植が良いのか?胚盤胞移植が良いのか?も同様の話になります。ある程度新鮮胚移植でうまくいかなければ凍結融解胚移植をする。逆にある程度、凍結融解胚移植でうまくいかなければ新鮮胚移植をするなどアプローチを変えていくことになります。
また、
確かに
胚盤胞移植の方が1回あたりの妊娠率は高くなるものの、
胚盤胞に到達できる確率が低くなります。そのため、
数を多く採卵できる人であればいいですが、
あまり数が取れない方が胚盤胞目指すと基準を満たす胚を確保でき
ずに移植が出来なくなる率が高くなります。
胚盤胞を目指すことで得られるメリットと、
目指すことによるデメリットがあることになります。
そして年齢が高くなるほど、
初期胚と胚盤胞の妊娠率の差は縮まってしまうので、
年齢の高い人ほど胚盤胞を目指すことによって得られるメリットは
減少する一方で、
目指すことによるデメリットは変わらないということになります。
そのため、年齢の高い人ほど、無理に胚盤胞を目指さずに、
初期胚移植で少しでも多くの胚移植をしていくという選択肢が増え
ると考えます。
このあたりは主治医の先生とよく相談するといいと思います。
以上、お返事とさせていただきます。頑張ってくださいね。