【Q&A】流産の原因は染色体異常?~宇津宮先生【医師監修】

まろんさん(35歳)
35歳、二人目不妊治療中です。
ここ2~3年で胚移植を10回行い、14週死産1回、8週心拍確認後流産、9週心拍確認後の流産と、死産流産が続いている状況です。3回目の流産では絨毛染色体検査をお願いし、結果待ちです。
主治医には「毎回、染色体に異常があったのでしょう」と言われます。凍結胚が1つあるのですが、このまま移植に進んでいいのかと不安に思っています。今後何か検査は必要かと主治医に尋ねたところ「希望なら不育症の検査もできます」とのことでした。
一人目も体外受精での妊娠、出産でしたが、とくに問題もありませんでした。二人目でも不育症の検査を受けてから次は進んだほうがよろしいのでしょうか?

宇津宮先生に、お話しを聞いてきました。

【医師監修】セント・ルカ産婦人科 宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講師、1989 年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は 9,500 件を超える。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
流産が続き、ショックかと思います。しかし、一般に(不妊でない)流産の50%は胎児の染色体異常と言われています(ジョンソン&ジョンソン)。また、当院のような不妊クリニックの成績では流産の80%に染色体異常が確認されています。
よって、不妊症治療で妊娠、流産した場合は胎盤の染色体検査をすること、その結果は8割が児の染色体異常とわかれば腑に落ちます。むしろ、染色体正常の胚が着床すればうまくいくという保証が得られたようなもので、希望が持てます。
なかには胎盤染色体検査で不妊夫婦のどちらかに染色体異常の疑いが見つかることがあります(5%ほど)。それなら着床前検査をすれば解決します。

以前の妊娠は現在の保証にはなりません。その間に母体に何か変化があったとも考えられるからです。よって複数回流産すれば不育症の検査はしておいたほうが良いでしょう。凍結胚を戻す前にすべきです。採血だけでよく、検査後2週間で結果が出ます。
EMMA/ALICEにはエビデンスはありませんので当院では行っていません。
「まろんさん」について気になることはやせすぎです。BMIは18です。22くらいになりましょう。体重62Kgです。やせたまま妊娠・分娩すると子が将来、糖尿病や精神障害になる可能性がすでにヨーロッパの戦時中の環境研究で証明されています。また、「やせている
」とは基本的に栄養不足で、不妊、流・早産、貧血、胎児発育不全などの周産期リスクを高めます。しかも妊娠する前から理想体重に近づけておくべきで、葉酸摂取と同じです。

先進医療では着床前胚異数性検査(PGT-A)が一番です。

いまはPGT-Aは私費診療ですので大変ですが、PGT-Aを行った胚では妊娠率70%、流産率11%と、驚くほどいい成績です。副作用はほとんど見つかっていません。早く保険適用されることを祈ります。我々医療側も日本産科婦人科学会/厚労省に何度も要求していますが、患者さんの声のほうが数倍も効果があります。患者さんも保険適用を日産婦/厚労省にメールやはがき、手紙で要求してください。

しかし「まろんさん」はAMH1.8で35歳、以前健康な児が生まれているので、きっとうまくいくはずです。先行きは明るいと思います。

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