【Q&A】保険適用あと2回。どんな治療がベスト?~稲垣先生【医師監修】

しまさん(36歳)
4回移植しましたが、すべてかすりもせず陰性。
TRIO検査は「エビデンスが確立されていないので特にお勧めはしない、移植を繰り返していくしかない」と言われています。保険適用内の移植は、あと2回となってしまいました。
5回目は2個移植の提案をされましたが、もう、どうすれば良いのかわかりません。
妻27歳、夫29歳のため年齢的な問題はあまりないと考えていたのですが、10個受精したものの全て分割停止し胚盤胞0との結果でした。一般的に行われている不妊治療に関する採血検査で異常を指摘されたことがないこともあり、卵子の質が悪かったのでは?と思うようになりましたが、20代で卵子の質が低下していることはありますか?
また、卵子の質が低下している場合、次回採卵までにできることはありますか?

次回の採卵に関してまだ何も方針が決まっていないのですが、前回の採卵時に全ての受精卵が分割停止した症例で、刺激方法の変更や微調整したことにより良好胚盤胞に到達することはよくありますか?

夫の仕事の関係であと数年は年度ごとに全国範囲で異動があります。もし次回の採卵で上手くいかなかったとしたら、採卵が1回できるかどうかのために今の地域内で転院するのと、転勤まで現在のクリニックで治療継続するのはどちらがおすすめですか?

【医師監修】いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生 
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

2014年から治療を開始し不妊原因は不明。治療歴からどんな原因が考えられますか?

治療開始から10年ほど経過して現在相談者さまは36歳です。決して高齢というわけではありませんが、若くもありません。年齢的な要素は無視できないと思います。
身長と体重からBMIを計算したところ29.2となりました。これについても適正化を目指すべきだと思います。(第三者として、敢えて厳しく指摘させていただきました)
AMHはそれほど高値ではないので可能性は低いかもしれませんが耐糖能に問題がある可能性があるのではないでしょうか。既往歴から骨盤内癒着が疑われています。子宮卵管造影検査は一年以内に実施されてますでしょうか。現時点での卵管通過性や子宮内腔の形状が評価できると同時に造影剤による通水効果も期待できるため、当院ではルーチン検査としております。

子宮筋腫が陰性という結果につながっている可能性は考えられますか?

上述の通り、子宮卵管造影検査である程度内腔の形状が評価できるので、筋腫の影響も推測しやすくなるのではないでしょうか。超音波画像でもかなりの精度で評価できると思いますが。

TRIO検査について先生の考えをお聞かせください。

当院ではERA検査、子宮内フローラ検査として近いものを実施しています。エビデンスをお示しできるようなデータは持ち合わせておりませんが、不成功が続いた後の治療方針の検討の際に参考にはなると思います。TRIO検査、ERA検査、子宮内フローラ検査はいずれも先進医療とされていますので、実施できる医療機関と実施していない(できない)医療機関があります。
自費となりますので相談者さまの基本方針には合致しないかもしれません。ただ、自治体によっては不妊治療の自費の部分(先進医療)に補助が出る場合もありますので、お住いの自治体に問い合わせていただいてもいいのではないでしょうか。

2個移植は1個ずつ移植するよりも妊娠率が上がる可能性はありますか?

当院でも2個移植は積極的にはおすすめしていません。妊娠率が2倍になるわけではありませんので。ただし、余り良好胚が残っていない場合など、条件によっては移植胚を使い切ってしまって、次回の採卵を目指すという戦略もありかとご提案する場合があります。
相談者さんの場合は凍結胚が5個既にあるので、この考え方は当てはまりませんが。2個移植をする場合は多胎妊娠を避けるために良好胚から順にという組み合わせではなく、良好胚とやや不利な胚の組み合わせで胚移植することにしています

今後の治療の進め方や向き合い方についてアドバイスをお願いします。

上述した内容のまとめになりますが、基本的な検査や治療で見直すべき点が何点かありますので、原点に立ち返ってみたうえで、残りの胚移植に臨まれたらと思います。個人的にはその際、TRIO検査を含む先進医療を組み込んでもいいのではないでしょうか。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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