おにおんさん(29歳)
23歳頃、ピルを処方してもらおうとしたところ「プロテインS活性が低く、血栓が出来やすい」と言われ、服用中止。2022年7月に自然妊娠するも推定7週で流産(コロナ感染により受診出来ておらず推定)しました。流産がプロテインS活性との関連はあるのか不安があり、地元の産婦人科で不育症検査を受けたところ、抗核抗体抗体価が640倍。自己免疫疾患の数値に異常値がなく、先天性プロテインS活性欠乏症と診断されました。
以降、半年間、自己流タイミングで妊活を開始しましたが妊娠せず。産婦人科で検査、タイミング法5回、人工授精2回。柴苓湯を服用していたがいずれも妊娠せず。体外受精もできるクリニックへ転院し、今月から体外受精に移行(現在は柴苓湯の服薬をやめています)。現在、体外受精の移植に向けて身体作りを頑張っています。
転院したての時に医師から「もし着床が確認できたら、バイアスピリンを飲んで血栓を予防してもいいでしょう」と言われました。私自身も血栓の出来やすさが流産と関係していたのでは…と気になっていたところがあるので先生の言うとおり服用したいなと思っていたのですが、市販のアスピリン(バファリンとノーシンピュア)で3回くらいアレルギー症状が出たことがあります。症状は唇の腫れと口腔内のただれでした。
バイアスピリンは、量の少ないアスピリンという認識だったので、もし着床できてバイアスピリンを服用するとなると、アレルギー症状が起きないか、またそれが胎児へ影響するのではないかと心配しています。アスピリンでアレルギーがある人はバイアスピリンでも症状は出るものでしょうか?
また、バイアスピリンの替わりに服用できる薬はあるものでしょうか?
藤本先生に聞いてきました。
【医師監修】さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
先天性プロテインS活性欠乏症は、人によっては血液が人より固まりやすくなることで様々な弊害を起こします。重篤になると血栓症を誘発することもあります。そこまでいかなくても、普通の人より血液が固まりやすくなることで、流産の原因になることがあります。血液は血管の中を流れているときには固まってしまうと困るので固まらないように働き、けがをした際などには血液が固まることで出血を止めるために、血液は凝固(固まりやすくなる)することで止血することができます。血液はこの「固まる」と「固まらない」の絶妙なバランスをとっているのですが、このバランスが「固まる」方向に傾いてしまう状況を引き起こす原因の一つが先天性プロテインS活性欠乏症といえます。そうなってしまったらどうするのか?「固まる」ほうに傾いてしまったバランスを、血液をサラサラにする薬などを使用することで、「固まらない」方向によりもどすことができます。
次の質問ですが、市販のアスピリンでアレルギー症状が出た人は、アスピリンアレルギーを持つ可能性があるので、バファリンやバイアスピリンでもアレルギーが出る可能性はあると言えます。ちょっとややこしいのですが、【アスピリン】というのは成分名です。薬剤中に入っている有効成分の名称です。そして「バファリン」や「バイアスピリン」などは売られている薬品名になります。ややこしいのが薬品名に「アスピリン」が入っているような薬もあり、ここがごちゃ混ぜになってしまいがちです。
そのため、最初の文章を違う言い方でいうとアスピリンアレルギーの人は【アスピリン】を成分として含む「バファリン」や「バイアスピリン」などでもアスピリンアレルギーを起こしてしまう可能性があるという意味になります。
アレルギー自体が胎児に影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。ただし、母体の命に影響を与えるほどのアレルギー症状を起こすと、つまりアナフィラキシーのような重篤なアレルギー症状を起こした場合にはその限りではありません。
先天性プロテインS活性欠乏症でバファリンが使用できない場合には、胎児に影響のない血液をサラサラにする薬として使用が可能なのはヘパリンになります。これは注射剤なので毎日の注射が必要になり、とても大変です。ただし、これでなければ抑えることのできない血栓性素因を持つ方については使用する場合もありますので、今回のご質問の方のようにバファリンが使用できないような場合には使用を検討することになります。
上記の症状を日常生活や、サプリなどで改善する方法は残念ながらありません