【Q&A】デュオスティムになるも採卵できず……~藤本先生【医師監修】

ピノさん(46歳)

これまで人工授精4回(陰性、2回排卵済み)の後、初めての採卵を行いました。AMHは半年前の検査で1.4、夫の精子は特に問題なしです。採卵周期での卵胞チェックでは卵が3〜4つ見え、不揃いな成長で、デュオスティムとなりました。最終的に1回目に1つ採れた卵は「やや成熟しすぎ」との事で受精せず、2回目狙っていた1つは当日排卵済みで採卵できずでした。やはり高齢のためか、排卵済みや過熟、未成熟となかなか難しいものなのだと感じますが、採卵ではせめて1つでも卵を採りたいのです。何か対策はありますでしょうか。
また、高年齢の場合、AMHの下り方は早いでしょうか。再度検査して刺激法など変えた方が良いでしょうか?

藤本先生に聞いてきました

【医師監修】さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
デュオスティムは昔中学校でならったところでいうと稲作の“二期作”のようなものです。
稲作の基本は1年の中で春に苗を植えて秋に育った稲を収穫します一方で温かい地域では秋に収穫した後に再度苗を植えて冬を超えて春に収穫することが出来ます。体外受精の際も、基本は月経が来たら排卵誘発剤で卵子を育てるわけですが、一度採卵した周期の採卵後から改めて排卵誘発を開始して発育した卵子を取ってくるというものです。1周期の生理周期の中で2回採卵をすることになります。

どのような人がデュオスティムをするのか?というと、少し卵巣機能が低下してきている人(多くの卵子が育ってこない人)に行います。1周期に2回採卵をすることで時間の節約をすることが出来ます。デュオスティムをするかどうかは患者さんの個々の状況により異なります。時間の節約はできますが1周期に2回排卵誘発⇒採卵をするということはかかる費用も2倍かかることになります。そういうことも含めて卵巣機能が低下している人に選択肢の一つとして提案する場合があります。

排卵済や過熟、未熟の原因については必ずしも年齢によるものとは限りません。ただし卵巣機能が低下してくると、一部の人は排卵済になってしまう場合が出てきます。過熟や未熟については卵子を取ってくるタイミングで決まりますので、一概に年齢に起因するものではないと考えています。
排卵誘発を含めた不妊治療は画一的なものではありません。すべての人にうまくいく方法はないですし、その人その人で状況が異なります。ある人にとって有効な方法も、ある人には効果がなかったりします。例えば富士山を登るためにも上るルートはいくつかあります。山梨県側から登るルートや静岡県側から登るルート、初診者に比較的優しいルートもあれば上級者向けのルートもあるでしょう。でも目標である富士山頂上は一緒です。あるルートからゴールを目指してダメならば、次回は違うルートでゴールを目指します。不妊治療も似たような感じといえます。目標であるゴールは同じでもゴールを目指すルートはいくつもあります。ルートAがダメならルートBを試したり、それもダメならルートCを試したりもします。大事なのは同じ失敗を繰り返さないように、うまくいかなかった場合には考察して次回にいかにして生かすかになります。

採卵数は例えば毎回同じ方法で排卵誘発を行ったとしても異なります。一番影響を受けるのはAMHになります。AMHがわかればある程度育ってくる卵の数は予想できます。魔法の方法で育つ卵の数を増やすような方法は実際にはありません。そして、厳しい言い方になりますが、卵巣機能は年齢とともに低下していくもので、増やしたりすることはできません。そこに関しては自分の持っている今のAMH(卵巣機能)で頑張るということになります。

ここからは「ピノ」さんからのコメントを読んでの具体的な話になります。2回の採卵でそれぞれ1個しか育たないというと半年前のAMHが1.4というのが今は思っているより低下しているのかもしれません。再検査の上でAMHを改めて見た上で再度誘発方法の検討も視野に入れることを考えてもいいと思います。一方で卵胞が3~4つ見えるというのはいいことです。それらが不揃いでないことが理想ですが、人間の体は機械ではないので必ず不揃いになります。ただし、不揃い具合が少しでも少ないほうが多くの卵子を採取することができる可能性が上がります。そのために排卵誘発の前周期にホルモン剤を内服してみたりの対策をとることもできます。これに関してはすでにやっていることかもしれないので何とも言えないところですが、、、。
採卵で数が取れない方は多くいます。1個発育したからといって、1回胚移植できるわけではありません。胚移植にたどり着くためには、採卵で卵子が取れて⇒取れた卵子が成熟卵で⇒成熟卵がうまく受精して⇒受精した卵が分割して⇒分割した卵が移植基準を満たすレベルになって⇒胚移植が可能になります。数が少なかったり1個しか発育しない方はこれらのハードルをすべて超えてこないと胚移植にまでたどり着けません。なかなか厳しい勝負です。実際に僕の患者さんでも1個しか育たないという勝負をしている患者は多くいますし、そのような方はピノさんと同じように採卵したからと言って胚移植にたどり着けない方もたくさんいるのが事実です。ただし、ここに関してはこれを受け入れるというしかないという部分もあります。やはり採卵しても移植までたどり着けないと凹みますが、また頑張ろうという気持ちを奮い立たせて皆さん頑張っている感じですね。
年齢についても同様です。AMH(卵巣機能:卵子の残数)と年齢については、自分の持っているその土俵で勝負するしかありません。僕はよくこの話をするんですが、子宮筋腫があって妊娠の邪魔をしているなら手術で取り除くことはできるけど、AMHについては卵を増やす薬はないし、人からもらったりすることはできない。年齢についても若返りの薬だけは売ってないんです、とお話します。厳しいようですが事実です。このことを踏まえた上で他に何かできることを考えよう!ということになります。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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