採卵しても変性卵であり、最近は採卵周期には入れません

胚盤胞が着床せず変性して凍結できない。
今後どうすればいい?

相談者 : よりさん(42歳)顕微授精を行っています。AMH 値0.3ng/ml と低いため毎日ゴナールエフ®皮下注ペン(300 または450)をしても反応が悪く、今はフェマーラ®を飲んで採卵しています。4 回の採卵で毎回1 〜2 個しか採れず、一度、凍結した胚盤胞はグレードが2CC と低く、移植しましたが着床しませんでした。その後も採卵できても変性して凍結できません。今は生理2日目の採血の結果がFSH 値40ml/ml など悪く、採卵周期に入れないでいます。これからどうすればいいでしょう?
神谷レディースクリニック岩見 菜々子 先生 札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。
AMH 値が低い方の排卵誘発法は?
岩見先生●AMH値が低い方は、卵胞を育てる卵胞刺激ホルモン(F S H値が高くなっていることもあり、まずはホルモンバランスをコントロールし、そのうえでフェマーラR やクロミフェンの服用で、低刺激の排卵誘発を行うのが一般的です。AMH値が低い方は、一度に採卵できる数は少ない傾向がありますから、できた卵子を大切に採っていくのがいいでしょう。
よりさんの治療方法の印象は?
岩見先生●当院でもよりさんのクリニックと同様にAMHが低い場合でも小卵胞が複数見える場合には連日注射を行い、採卵数が増えるように試みること行います。連日注射を数周期行っても1・2個しか採卵できない方の場合には低刺激法をご提案します。また誘発開始時のFSHが高いままでの排卵誘発開始は、変性卵や空胞率が高まりますので中容量ピルやエストロゲン製剤を用いてFSHを低下させてから誘発を開始するようにするようにしています。現在の保険医療では移植回数の上限が定められているため、良好胚盤胞ができるまで採卵を続けることも選択肢となるのではないでしょうか。移植を行うことは治療のモチベーションにもつながりますが、ある一定以上の妊娠率が期待できる胚を移植することが着床のためには大切です。
ほかにどのような治療法が?
岩見先生●よりさんの場合は、AMH値が低くても採卵はできています。42歳の間に毎周期でもいいですから積極的な採卵を行うことがいいでしょう。月経周期は順調とのことですから、低刺激の排卵誘発法で、注射や早発LHサージを抑えるためのアンタゴニストなどでコントロールしながら、より良いタイミングで採卵することが大切。受精卵のグレードが少し低かったようなので、採卵時のオプションとして、保険適用で可能な卵子活性化処理や、先進医療についても検討してみるといいかもしれません。
今後はどのように治療に取り組んでいけばいいですか?
岩見先生●42歳ですが採卵はできていますから、妊娠の可能性もあると思います。たとえば、「保険適用が受けられる間」、などご夫婦で治療の期間を決めて、採卵できる間は積極的に治療を継続されるのがいいのではないかと思います。また、2〜3年治療をしていて変化がないのであればクリニックの変更を視野に入れることも選択肢の一つでしょう。
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