勇気を出して踏み出した一歩から急展開 若くても、身体的な原因が見つからなくても 妊娠できない…。
「ホルモンチェック」が きっかけで予想外の治療の道へ 。
偶然目にしたホルモン検査の広告から、加速度的に 進んだ不妊治療。
「自分で調べて悶々としているだけでは 何も始まらない。とにかくクリニックへ行って良かった」 妊娠に至った今、E・Sさんはそう振り返ります。
「早く赤ちゃんが欲しい」 想いとは裏腹に妊娠できない
某企業の人事課に勤務して いるというE・Sさん。取材 に応じてくれたのはようやく 産休に入ったばかりの日。大 きくなったお腹を抱えながら 対応してくれました。
仕事柄、社員が結婚して苗 字が変わり、妊娠して休職し て…そんな人生のドラマの一 部を目の当たりにしてきたと いいます。だから何となく自 分も結婚したら 1 年くらいで 妊娠するのかな…そんなふう に考えていました。
E・Sさんのご主人は 2 歳 年下。自分の家族を大切にする、子どもが大好きな方なの だそうです。お二人は 28 歳、26 歳という適齢期で結婚し、 ご主人も「体に負担がかか らない若いうちに赤ちゃんを …」と望んでいたそうですが、 妊娠には至らず、入籍からい つしか約 2 年の月日が経過し ていました。
ネットでみつけた記事を きっかけにホルモン検査へ
一度不妊治療について考え たほうがいいのかな…そんな ことを考えながら、パソコン でクリニックの検索をしてい たある日、E・Sさんはたま たま東京・銀座の「はるねク
リニック」で女性のホルモン チェックのプログラムがある ことを知ります。
「銀座なら会社からでも通える 距離。とりあえず私だけでも 行ってみようと思って…」と 検査を受けることにしました。 検査の結果は特に問題な し。その後、ご主人も精液検 査を受けますが、こちらにも 問題はありませんでした。
「年齢も若いから大丈夫、と 言われてそのままタイミング 法へと移行しました。クリニッ クに行くと次の予約を入れる 形になり、あれよあれよとい う間に展開した感じです」
タイミング法では 6 周期チャ レンジしたものの、なかなか結果には至りません。そのまま流 れるように次は人工授精へ。
「このころからいよいよ医療 行為が始まったという感覚。 主人もいろいろ調べてくれた ようで、“必要な時は仕事休 むから”と前向きでした」
ところが、回を重ねても妊 娠の兆候はありません。「私 の体に問題があるわけでもな く、先生の指導の下、タイミ ングもベストなはずだからさすがに妊娠できると思ってい たのに…。私って母親になる 資格もないの?」
体には問題がない、でも全 力を尽くしていても妊娠でき ない、これから治療が長引い て会社に迷惑をかけるのかも …。いろいろな思いが交錯し、 だんだん気が滅入っていった E・Sさん。人工授精を 6 回 繰り返した結果、先生からス テップアップを勧められます。
今できることをやろう、 体外受精へチャレンジ
走り出した不妊治療。ご主人 とは「ここまできてやめてしま うのはもったいない。お金のこ とは考えず、できることを最優 先しよう」と話し合ったそうで す。この時、初めて会社の上司 にも報告。お子さんがいて子育 てにも積極的な上司は「仕事の ことは気にしなくていいよ」と 理解してくれたそうです。
初めての採卵では 3 個採卵 できましたが、そのうち 1 個 は分割が止まってしまいまし た。チャンスは 2 回。 1 回目 の移植、「今度こそは…」と期 待が募りました。しかしなが ら判定日の先生の答えは「こ のまま生理がくると思います よ」という言葉。残る1個が ダメならまた怖い採卵かと思 うとE・Sさんの気持ちは落 ち込んでいく一方でした。こ のころご主人にも変化が。
「同じ時期くらいに結婚して すでに赤ちゃんがいるファミ リーのホームパーティに呼ば れても、理由をつけて断ってい たようなんです。きっと私が家 で注射をしている姿を見たり して、彼自身も気が滅入ってい たのでしょうね」
次の周期を待って再び移植。 判定日を待てずにE・Sさん は自分で妊娠検査をしてみたところ陽性反応が。「今度こそは 妊娠できたかも!」淡い期待を 抱いて臨んだ判定日でしたが、 またもや結果は陰性。
「先生も万全の態勢で臨んでく れているのにどうして? と思 うと申し訳なくなって…。先生 の前では泣けませんでした。で も、この日初めて主人の前で耐 えきれず泣いてしまいました」
仕事はフルタイム、休日は吹 奏楽の団体でクラリネットを演 奏しているE・Sさん。気の 重い不妊治療も仕事や趣味で気 持ちを紛らわしてきた一方、ふ と現実に戻り悲しみが襲うこと も増えてきました。
また、自分がたまたま行った ホルモン検査がきっかけにな り、体外受精にまで進んだ体験 を包み隠さず友人に話していた E・Sさん。時には友人に「私 は不妊治療のフルコースやって るわよ!」と冗談混じりにアド バイスもしていたそう。ところ がその友人は 1 、 2 回の通院で あっという間に妊娠。「普通、 少し通えば妊娠できるんだ…」 アドバイスをしていたのに置い て行かれてしまったような焦燥 感も重なってきました。
想定外の不妊治療が夫婦の 絆を深めてくれたのかも
2回目の採卵では 10 個の卵 子を採卵、そして移植。判定を待っていた待合室で、何の 偶然か珍しくお母さまから「元 気?」とメッセージが。突然 の電話に気持ちが高まった直 後に担当の先生から「良かっ たわね!」と待ちに待った一 言が!
「混乱して、主人より も母に一番に報告したかもし れません(笑)」とE・Sさん。
判定直後から早々につわりが 始まり、「会社でもドアから廊 下に出たとたんに吐きそうに なっていました。でも、妊娠は “自己都合”ですから。もっと つらい人もいるはずと思って乗 り切りました」となんともプロ フェッショナル。家へ帰ると倒 れこむように寝込んでいたE・ Sさんに、食事を作ってくれた り、買い物に行ってくれたりと ご主人は全力でサポートしてく れたそうです。
その後、切迫流産にも見舞わ れ心配は尽きませんでしたが、 戌の日を機にご主人のご両親に も報告ができました。
「不妊治療をせずに妊娠、出産 した人にはできない体験や想い があったことは決して無駄には ならなかったと思います。諦め ずに、いつか自分たちを選んで くれる赤ちゃんが来ると信じて きてよかった。私たち夫婦に とって気持ちを確かめ合える良 い機会だったと思います」
E・Sさん夫婦に赤ちゃんが 誕生するのはもう間もなくです。