現在35歳のレトロプリンさんは、不妊治療歴5〜6年。先日、14回目の移植が陰性に終わったそうです。今後、どのような治療を選択していけばよいのか、受けるべき検査はあるのか、徐クリニックARTセンターの徐東舜先生に教えていただきました。
1 流産胎盤の染色体検査を行うべき
なぜ、良好胚を移植しても流産を繰り返すのでしょうか?
通常、流産処置の際に流産胎盤の染色体検査を行い、原因が胎児側だったのか母体側だったのかを鑑定します。母体側であれば原因の一つに慢性子宮内膜炎がありますが、レトロプリンさんはALICE検査で陰性なので、医師が提案するCD138検査を改めて行う必要はないでしょう。胎児側であれば、解決策としてPGT-A検査で染色体異常がない胚を移植する、という方法があります。
主治医からは夫婦の染色体検査を提案されているようですが、順番としてはPGT-Aが先。4BAや4ABの良好胚を移植しても、35歳という年齢では見た目では良好でも半分以上に染色体異常があります。PGT-Aは現段階では先進医療になっていないので、取り扱いや考え方は施設によって異なるかもしれませんが、2回以上移植して結果が出なければ、原因を突き止める手段として胚を調べるべきでしょう。レトロプリンさんに至っては、14回も移植して陰性がつづいていますから、すでにPGT-Aを考える段階だと認識していただきたいですね。
2 自然周期で妊娠継続を目指す方法も
先生なら、どのような治療法を提案されますか?
たとえば、これまでずっとホルモン補充周期なら、自然周期を提案します。
ホルモン補充周期はエストロゲンとプロゲステロンという2剤で子宮内膜を育てますが、内膜を調整するには他にも因子が必要で、卵巣から出てくるさまざまな物質の影響によって着床しやすい環境をつくっていると考えられます。実際に、ホルモン補充周期は癒着胎盤が多くなる、流産率や妊娠率が自然周期に比べて低い、などの報告もあり、当院でも徐々に自然周期に変えていったという経緯もあります。排卵こそ人工的に行ったとしても、卵巣に黄体をつくったあとは、黄体から出現するホルモンで妊娠維持させるほうが、結果的にはその後の経過は良好とも言えるので、よほど生理不順などがなければ自然周期を試してみてはいかがでしょう。
ほかに、子宮鏡検査はエコーでは確認できないポリープや癒着などが見つかる可能性があるので必須。レトロプリンさんに有効かはわかりませんが、着床不全の患者さんにはPRP療法を提案する場合もあります。
3 原因を突き止め、時には違う方法も試してみる
最後に、アドバイスをお願いします
レトロプリンさんの治療歴や検査歴を見ると、原因がわからないまま長い期間をかけてやみくもに治療している、という印象を受けます。不妊治療は精神的なものにも左右されがちですし、何回も同じ方法で良好胚を移植していつも失敗する、というのは辛いことです。1つでも2つでも、何か少し変えるだけでリフレッシュできることもあるので、あまり気負わずに治療に向き合いましょう。