患者さまの人生をお預かりしている責任をもって仕事をしています

体外受精や顕微授精をする際にお医者さんや看護師さんとともに、患者さんを支えてくれる存在の1人が培養士さんです。ただ、その存在やどういった経緯の方がやっている仕事なのか、よくわかっていない方もいるのではないでしょうか。
そこで、おおのたウィメンズクリニックで培養士として働く三輪さんに、不妊治療を支えるチームの一員としてどんな役割を担っているのか、培養士を目指した目的などをお話いただきました。

おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮 三輪操花 さん(胚培養士) 
あいウイメンズクリニック、永井マザーズホスピタルを経て、2022年おおのたウィメンズクリニック 埼玉大宮で活躍中。
日本卵子学会認定生殖補助医療胚培養士。
日本不妊カウンセリング学会認定体外受精コーディネーター。

不妊治療における培養士の役割を教えてください

患者さまの大切な精子と卵子をお預かりして、受精をさせます。その後、受精卵を培養したり、胚移植まで私たちがお預かりしてお世話をする役割を担っています。

培養士さんと患者さんが接する機会はどんな時でしょうか。

採卵後にいくつ卵子が取れたかを患者さまに説明します。
また、胚移植前に「今日はこういった卵を移植します」という説明をしたりします。
医療機関によっては先生がお話しするところもあるようですが、当院では培養士が行っています。

胚培養に関して注目してほしいことはありますか。

胚を子宮にお戻しする際、実際に胚の写真をお見せしています。胚の培養経過は培養士にしかわからないことなので、「こういう経過をたどって成長してきたんですよ」という説明を患者さまにさせていただいております。そういう話をきっかけに胚の時から赤ちゃんに対して愛着をもってもらえたらいいなと感じています。

本来なら胚の分割の様子や成長は、子宮の中で起きることなので見られません。不妊治療はつらくて大変なことが多いと思いますが、治療したことで、普通なら見ることができない胚の成長の様子を知ることができます。成長の仕方も胚によってさまざま。そう、個性があるんです!なので、ご自身の胚がどんな風に成長したかという話は、ぜひご興味をもって聞いていただければと思っています。

患者さまが、赤ちゃんを出産後、「この子、最初はこんな感じだったのよね」と、移植前にお見せした胚の写真を懐かしそうに見ているという話を伺うと、こちらもとても励みになりますね。

どのようなきっかけで培養士になったのでしょうか。

私はもともと臨床検査技師になろうと思い、医療系の大学に通っていたんです。国家試験を受けて、大学卒業後は検査会社か病院に勤務するんだろうなと漠然と考えていました。ある日、大学の求人票に「胚培養士」という職業の募集があり、もともと染色体や遺伝子などにも興味があったので、調べてみたら赤ちゃんを妊娠、出産するための根幹に携われる仕事だと知って、「これは!」と思い、大学を卒業後、培養士として働けるクリニックに就職しました。

その後、日本卵子学会の認定生殖補助医療胚培養士の資格を取得しました。
ちなみに培養士としていろいろな医療施設で働いている方々は、医療系の大学出身の方や農学部、獣医学部出身の方が多いようです。

精子や胚を見るときは、どのようなことをチェックしていますか。

かつては培養器をあけて、成長を確認していたので、1日1回しか受精卵の分割、成長の様子を見ることができませんでした。でも今は技術が進歩したおかげで分割の様子などを外からいつでも確認することができます。分割の早さなどを細かく確認し、元気度や状態、グレードなどをチェックしています。

胚のグレードは見た目によって決まりますが、グレードがあまりよくなかったとしても子宮に戻してみたところ、着床。妊娠とすすみ、元気な赤ちゃんを出産した方もいらっしゃったので、希望は捨てないでほしいなと感じています。

※この画像は、開院前に特別な許可の上、培養室にて取材しております。

仕事上で普段から気を付けていること、大切にしていることはどんなことでしょうか。

本当に患者さまが元気な赤ちゃんを妊娠、出産するという根っこの部分を担っているので、「妥協をしない」「自分の受精卵だったら、どうしていほしいと考えるか」ということを常に考えながら緊張感をもって仕事に励んでいます

また、患者さまがどんなにがんばって治療に取り組んでいても不本意な結果になってしまうことも少なくありません。そんな時は、次につながる、前向きになれるような言葉をかけることを大切にしています。

患者さまへのメッセージをお願いします。

培養士は、お医者さん、看護師さんとタッグを組んで患者さまを支えるチームの一員です。一緒に妊娠に向けて歩んでいるので、治療について不安なこと、愚痴、悩みなどは遠慮せずに話してくださいね。

 

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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