妊娠しなかった原因は「受精卵の異常」だといわれました

「妊娠しなかったのは受精卵の異常」と言われたそうですが。
田中先生●先生は本当にそうおっしゃられたのでしょうか。「かもしれない」ということで、確定された答えではないのでは? もし異常ということであれば、移植をすること自体考えられません。一般的には卵子と精子を受精させて、ある程度グレードの良いものでないと移植をしないことが多いと思います。
また、もし1回目の胚移植ということであれば、そこで妊娠に至らなかった原因がすべて判明するということは少ないでしょう。受精卵側の問題かもしれないですし、着床がうまくいかなかった可能性もあります。いろいろな原因が考えられるので、受精卵の異常と決めつけるのはまだ早いかもしれません。
良い条件が揃っていたとして、1回あたりの胚移植の妊娠率はせいぜい35~40%程度です。年齢が上がると確かに受精卵の染色体異常率は増えますが、38歳ならまだ良い受精卵ができる可能性は十分あると思います。今回の結果については、あまり気にされないほうがいいでしょう。
次回以降の移植でも結果が出なかった場合、治療をどのように進めていったらいいのでしょうか。
田中先生●良好胚を2回以上移植しても結果が出なければ着床に問題があると考え、着床不全の検査をご提案するのが一般的だと思います。
着床の窓がずれていないかどうか、その方にとって最適な着床のタイミングを調べるERA検査や、悪い菌が着床を妨げていないか、子宮内の細菌バランスを調べる子宮内フローラ検査(EMMA/ ALICE)など。これらの検査は保険診療で不妊治療をされていても、先進医療として受けることができます。
受精卵の異常を詳しく調べるPGTーAという検査もありますが、この検査は自費診療での不妊治療という選択になってしまうので経済的負担が大きくなります。現在38歳ということであれば、まだしばらくは保険診療で頑張ってみてもいいのではないでしょうか。
抗精子抗体検査の結果が強陽性だったそうです。これが妊娠できない原因になっていることは考えられますか。
田中先生●今、顕微授精をされているとのこと。抗精子抗体が陽性だったから顕微授精に進まれたと思うので、それで受精しているのなら問題はありません。抗体をもっているのは体質的なもの。改善する方法はないので、治療の技術でカバーすることになります。