女性の不妊検査と一緒にチェックしておくと安心! 男性不妊の早期発見が妊娠への近道

妊娠を望む夫婦にとって妊活は女性だけの問題ではありません。
男性も自分のこととしてとらえ、協力して取り組むことが重要です。
そこで、男性が受けるべき検査や不妊治療へのかかわり方について福井ウィメンズクリニックの福井敬介先生に詳しく教えていただきました。

福井ウィメンズクリニック 福井 敬介 先生 日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局。愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000 年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001 年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と福井ウィメンズクリニックを開設する。

不妊の約半数は男性が関与原因と種類について

不妊は、女性だけの問題と考えられがちですが、不妊症の48%は男性側にも原因があります。2017年に実施された世界保健機関(WHO)の調査では、不妊症のうち、男性・女性ともに原因がある割合が24%、男性のみに原因がある割合が24%との結果でした。

男性不妊の主な原因は精子の数が少ない、運動率が低いなど、精子をつくる機能に問題がある造精機能障害です。男性不妊のおよそ80%がこれに当てはまります。

造精機能障害には次のような種類があります。

無精子症は造精機能障害のなかでも重く、精液中に精子がまったくいない状態です。乏精子症は精液の中に精子はいるけれど、その数が少ないという状態。精子無力症は活発に前進する精子が少なく運動率が低い状態です。無精子症でも精巣や精巣上体に精子が存在していれば、手術で精子を採取し、顕微授精などの不妊治療で受精・妊娠することができます。

造精機能障害の原因ははっきりとはわかりません。しかし、約30%は精巣のまわりに静脈のこぶ(静脈瘤)ができる精索静脈瘤を原因としています。これによって陰囊内の温度が上がり精巣の造精機能の低下などを発症して、精子形成に悪影響を与えます。

精液検査は不妊治療における男性側の重要な第一歩!

精子に問題があっても、自覚症状はなく、自分で気づくことはほぼありません。まずは精液検査で精液量や精液中の精子の濃度、運動率、正常形態率などを調べています。男性不妊症において最も重要な検査で、基準値よりも低い場合は、自然妊娠が難しいことがわかっています。精子はクリニックあるいは自宅で採取しますが、採取後2~3時間以内に検査しなければなりません。ですから、遠くから通院されている方は、クリニックで精子を採取することになります。また、当院では仕事等の理由で早朝しか精子を提出できない方のために、鍵付きの「精子ポスト」を活用しています。

クリニックではできるだけ静かでリラックスできる環境で採取してもらいます。採取で最も重要なのは禁欲期間。以前は5日~1週間と言われていましたが、禁欲することで数や運動率のいい精子が増えたとしても、精子のDNA の損傷が大きくなる可能性があるため、2日くらいで十分です。

また最近増えている男性不妊の原因として性機能障害があります。これは性行為に対する関心・意欲が薄れたり、能力が低下したりして、性交渉がうまくできなくなることをいい、勃起障害(ED)、射精障害などが挙げられます。若い方の場合は心理的な要因がほとんどを占めるのですが、身体的要因によって引き起こされることもあります。けっして仲が悪いわけではないのですが、夫婦生活、性交に至らないケースが増えているようです。

生活習慣を見直し、より早く検査と治療を始めましょう

精巣は体温より2~3度低い状態で機能するため、精巣を温めると機能が低下します。喫煙・長風呂・サウナ・ぴったりとした下着などはやめたほうがいいでしょう。肥満も精巣を温める原因になります。また、喫煙やストレス、体調不良なども精液所見を悪化させます。このように生活習慣の改善は、男性不妊を考えるうえでとても重要です。

不妊の約半数に関与していると考えられる男性不妊では、自覚症状を伴わないことが多いのですが、精索静脈瘤では陰囊に血管のこぶが浮き出ていることがあり、ご自身でわかることもあります。

男性不妊の原因によっては、薬物治療や手術治療などで治療可能な場合もあります。たとえば精索静脈瘤は、手術で精液所見の改善を期待できる場合があります。このように要因を特定・解消して精液所見が改善することにより、不妊治療の精神的・経済的な負担が減ることがあります。なるべく早い時点で精子の精密検査を試みることをおすすめします。

男性不妊外来でできること

当院では男性のブライダルチェックで精液検査を行います。また精液所見が正常でもDNA 断片化率が高いと培養成績や治療成績に悪影響を及ぼす可能性があります。DNA 損傷のある精子と未熟な精子の割合を測定し、「精子の質」を調べる、精子DNA 断片化検査(DFI 検査)も行っています。無精子症の治療では精巣( 睾丸) から組織を採取するTESE( 精巣内精子回収法) を用いて精子を採取します。精索静脈瘤は日帰り手術が可能です。不妊治療は多くの方が不安や悩みを抱えています。性行為自体が難しいといった相談にも応じています。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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