異所性妊娠だった場合、次の移植に影響はありますか?
卵管や腹膜など、本来着床すべき子宮内膜以外の場所に受精卵が着床した異所性妊娠。化学流産との違いは? また、起きてしまった場合、次の移植に影響があるのでしょうか。かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生に詳しいお話を伺いました。
ドクターアドバイス
●移植3週間後には確実に判定できます。
●子宮内膜掻爬や腹腔鏡で最終確認を。
●1周期空ければ移植も可能に。
異所性妊娠の割合は妊娠全体の1%程度。なぜ起こるのか原因はわかっていません
化学流産もしくは異所性妊娠、柏崎先生はどちらだと考えますか。
柏崎先生●胚移植から1週間後でhCGの値が6.4mIU/mlというのは確かに低いと思います。普通ならこの時点で二桁以上、100mIU/mlくらいまで上がっていないといけない。化学流産の疑いがあり、おそらくこのまま出血、生理がくると思われます。主治医がおっしゃっていることは間違っていないでしょう。
ただそれで終わらず、妊娠判定日から1週間経ってhCGの値が上昇してきているとのこと。そうなると悩ましく、今の時点では化学流産なのか異所性妊娠なのかはっきり判定することはできません。
では、いつそれがわかるのかということですが、時期的には移植してから3週間後くらいには異所性妊娠をしているかどうか判明すると思います。もし妊娠していればその頃には100%胎のうが確認できますから。また、hCGの値も併行してみていって、どんどん上がって胎囊が確認できなければ、異所性妊娠であるのは確実ということになってくるでしょう。
最終的には腹腔鏡や子宮内膜掻爬で確認。初期なら抗がん剤で萎縮させる方法も
「異所性妊娠は怖い」というイメージをもつ人もいますが、放っておくとどうなるのでしょうか? また、その対処法はどんなことでしょうか?
柏崎先生●異所性妊娠を起こす場所としては、9割が卵管といわれています。まれなケースとして、卵巣や腹膜に着床する場合もあります。
異所性妊娠をそのまま放っておくと破裂してしまうこともあります。ただし破裂したり、すごくお腹が痛くなるという症状は、妊娠9週くらいにならないと出てきません。不妊治療を受けている方なら、ホルモン値やエコーでまめに観察しているので危険な状態までそのままにしておくということはないと思います。
異所性妊娠の割合は妊娠全体の1%程度といわれています。なぜ子宮以外の場所で妊娠してしまうのか、その原因ははっきりとはわかっていません。「卵管に炎症を起こして狭くなっている人は卵管に受精卵が着きやすい」という説もありますが、確かなエビデンスはありません。年齢や体型、妊娠歴など、これという傾向もなく、誰でも起こりうる事象だと考えられています。
しばらくはhCGの値をみていって下がらなければ腹腔鏡下で肉眼的に確認します。ほかに子宮内膜掻爬といって、子宮の中をきれいにして、その後hCGの値が上がるかどうかをみます。掻爬後も上がってくるようであれば子宮外で妊娠していることになります。
また、hCGの値は上がってきているけれど胎のうは確認できないという初期の場合、メソトレキセートRという抗がん剤の一種を使って治療するケースもあります。この薬を点滴か筋肉注射すると異所性妊娠の部位を萎縮させることができます。自費診療にはなりますが、がん治療の数分の一しか使わないので副作用はほとんどなく、外来で実施できます。
早期の場合はいくつか対処法があるので、もし異所性妊娠となった場合は、主治医とよく相談して決められてはどうでしょうか。
次の移植に影響はありますか。
柏崎先生●異所性妊娠を起こしていたとしても今後の移植に大きな影響を与えることはありません。1周期空ければ通常通りに移植ができるので、高齢の方でも時間を無駄にしてしまうことはないでしょう。
今回の結果は残念ですが、前向きに考えれば良い兆しだと思います。子宮外でも受精卵が着床したことに間違いありませんから。
初めての胚盤胞移植で、もう1個凍結胚盤胞が残っているとのこと。妊娠の可能性はまだ十分あります。今回のことを一歩前進と考えて、自信をもって治療を続けていただきたいと思います。