自然周期とホルモン補充周期で着床の窓に差はありますか?
着床の窓について教えてください。
蔵本先生●胚盤胞移植を行う際に、子宮内膜が胚を受け入れるための準備ができているタイミングを「着床の窓が開いている」といいます。それを調べるのが子宮内膜着床能検査(ERA)で、着床にかかわる遺伝子を解析し、通常より前倒しまたは後ろへ時期をずらして移植を行ったほうがいいかどうかを調べます。反復着床不全の約3割に着床の窓のズレがあると報告されており、その場合は良好胚を移植しても妊娠が成立しません。
着床の窓は、自然周期とホルモン補充周期で変わってくるのでしょうか?
蔵本先生●データなどで立証されていないためはっきりとはわかりません。ただ、ホルモン補充周期でも、投与する黄体ホルモン腟剤の種類により、含有されるプロゲステロン量や血中および内膜局所のプロゲステロン濃度が異なるため、ERA の結果は若干異なる可能性があります。そのため、ホルモン補充周期でERA を行った場合、実際の胚移植周期でERA を行った時と同じ黄体ホルモン腟剤を使用しなければなりません。にむさんは、ホルモン補充周期のERAで2日以上のズレがあったようですが、指摘された時期に、通常時期より2日ずらして同じ黄体ホルモン腟剤を使用して再検査されてみるとよいと思います。
また、今後自然周期をお考えのようですが、そもそもにむさんは多囊胞性卵巣症候群や排卵障害、遅延排卵があるため、自然周期は適さないと思います。子宮内膜細菌叢検査(EMMA)の異常も見つかったとのことなので、抗菌薬による治療を行い乳酸菌腟剤も使用しながらホルモン補充周期でERA の再検査を行い、着床の窓のズレに合わせて胚盤胞移植を行うことをおすすめします。
その他、アドバイスはありますか?
蔵本先生●多囊胞性卵巣症候群の方は多数の卵胞が卵巣内にありますが、排卵誘発剤での反応が不良のことがあります。フェマーラRで卵胞が育つようなので、月経開始3日前よりフェマーラR1錠5日間服用、ゴナールエフR150 単位またはレコベルRを連日投与しながら卵胞発育を促し、さらにLH の上昇を抑えるために、途中から合成黄体ホルモン内服薬を連日内服するPPOS 法を行います。卵胞が十分に育ったら、卵胞最終成熟のためにGnRH アゴニストのスプレーを鼻腔内に噴霧して内因性LHサージを起こして採卵し全胚凍結します。また卵巣過剰刺激症候群の重症化予防として採卵日よりカベルゴリンやフェマーラRを内服することをご提案します。