受精卵の最適な移植時期を、より正確に把握できるのがERA検査です。これは自然周期法でも受けられるの
でしょうか。あいだ希望クリニック院長の会田拓也先生にお話を伺いました。
ERA検査は自然周期でも受けられます
移植時期と着床のタイミングが合っているかをみるために開発されたのが、ERA検査です。当院では、通常、自然周期法で治療を行っていますが、患者さんから「自然周期でも検査を受けられますか」と質問されることがあります。
そこで、ホルモン補充周期と自然周期それぞれの特徴、当院で自然周期を行う理由などを解説していきます。
ホルモン補充周期は、薬でホルモンをコントロールしながら採卵、胚盤胞の移植を行う方法です。一方で自然周期は、薬を使わずご自身のホルモンの力で卵を育て、ホルモン値と超音波を細かく確認しながらベストなタイミングで採卵。そして受精させた後、自身のホルモンの力でととのえた子宮に胚盤胞を移植するという方法です。本来、卵子は、排卵する直前が最良質なので、そのタイミングに採卵するのが望ましいのですが、その時期を見極めるのがとても難しいとされています。そこで多くの場合、薬の力を借りて採卵時期をコントロールしてきました。ただ、薬を使うことで卵子の在庫が早く減り、閉経を早めてしまう可能性や、一度に複数を育てることで、個々の卵子の質が低下する傾向にあるといわれています。
当院では、「自然に育つ卵子が、本来、赤ちゃんになる力を持った卵子」と考え、通常は自然周期法で治療を行っています。たとえば採卵ですが、超音波で卵胞の大きさを確認しながら、E2、F S H、LH、P4 などのホルモン値を検査。そのデータを細かく精査することで、薬を使わず、通院回数を大幅に増やすことなく最適なタイミングで採卵しています。良質な卵子は移植しても流産する可能性が低く、妊娠継続率も高くなるため、無事に出産できる可能性が高くなります。ERA検査をする際に大切なのは、移植する時と体のホルモン状態が同じであることなので、自然周期でも問題なく検査できます。
ちなみに自然周期法は日本で生まれた治療で、海外では薬を使った刺激法の治療が主流でしたが、近年は海外でも自然周期法の特長が認められつつあります。ただ、自力で排卵ができない方や、採卵したあとに閉経してしまった方など、患者さんの体の状態によってホルモン補充周期での治療が必要な場合があるので、患者さんに合わせて最良の治療法を選択しています。
自然周期の場合は、排卵から5日目に検査
自然周期では排卵から5日後(初期胚移植の場合は採卵から5日後)に移植を行います。検査も排卵から5日後に行い、着床期にズレがないかを確認します。検査でズレがあると分かった場合は、ERA の推奨時刻に従って移植のタイミングを調整します。
検査方法は極細の管を膣から挿入し、子宮内膜を吸い取ります。検査の所要時間は1分以内です。子宮内膜を吸い取るため、多少出血する方もいますが、しばらくすると止まります。麻酔せずに採取しますが、痛みについては「ほとんどない」という方が多いようです。ただし個人差はあります。ちなみに検査をする周期は、移植することはできません。
10回移植してNG だった方が検査後すぐに妊娠した例も
当院で自然周期の患者さんの最適着床日を調べたところ、排卵から5日後が最適だった方が約85%でした。ただ、6日後が最適だった方が12%、4日後が3%と、計15%の方が最適な移植日が排卵から5日後ではないことが判明しました。実際にあった例ですと、47歳の方で10回体外受精をしたもののうまくいかず、ERA検査を実施。最適な移植日が4日後とわかり、ズラしたところ妊娠しました。
限られた時間を有効に使うために当院では、良質な胚を2回移植して2回ともダメだった方にERA検査をおすすめしています。
一緒にEMMA・ALICE検査を推奨
ERA検査と一緒に検査できるものに、E M M A・A L I C E 検査というものがあります。EMMA・ALICE は、子宮内の細菌叢が胚移植にベストな環境かを確認する検査です。着床を助ける菌を増やしたり、悪玉菌や慢性子宮内膜炎の原因菌を適切に治療することができます。たとえばERA検査で着床のタイミングにズレがない場合、一緒に調べておくことで、妊娠にいたらない原因をより早くみつけることができます。採取は1回で済むので、一度も受検したことがない方は3つ一緒に受けることをおすすめします。
ERA検査を行ってベストな着床期を確認することで、自然周期で採卵した良質な胚を、着実に妊娠成立させられる可能性が高くなります。ぜひこういった検査を活用し、1日でも早く妊娠、出産していただけるようにしたいと考えています。
ERA(子宮内膜着床能検査)
受精卵を移植する場合、人によって着床に適した期間(着床の窓)が異なります。その時期を12 時間単位で細かく判定してくれる検査がERA検査になります。検査方法は、子宮内膜の組織の一部を採取。その組織から遺伝情報のRNAと呼ばれる物質を取り出し、着床能とかかわりがある236の遺伝子に注目してそれらがどのくらい発現しているかを解析します。その発現パターンから子宮内膜が着床期にあるのか、または着床期前か後かを判定します。